サンクトペテルブルグからヘルシンキ~さらばロシアよ、また来る日まで
旅行中って、やたらと健康的な生活になりませんか?
普段は夜型であまり動かず、下手したら一日一食なのに、旅に出ると早寝早起き&よく歩く&ご飯が美味しいからちゃんと3食食べるという生活になるため、もりもり元気になります。
身体も引き締まるし、もうずっと旅していたい。
アラームもなしで目を覚ますと時刻は6時半。カーテンの隙間からのぞいた外は暗く、窓下の路地をグレーのコートを着た男性が足早に歩いていました。
今日は列車でヘルシンキに戻る日だけど、出発は11時25分だから急いで起きる必要はありません。
体調を崩した連れはまだ寝ているし、二度寝することにしました。
次に目覚めた時には8時少し前でした。のんびり準備して10時にはホテルを出ます。
チェックアウトにあたっては、カギと連絡用にもらっていた携帯を部屋の中に置いていくだけでいいと初日に言われていました。
宿泊料は前払いしているので、結局ホテルオーナーのドミトリーさんと話をしたのはチェックインの時だけでした。昼間に私たちが出かけている時にお風呂やトイレの掃除をしているのだろうけど、従業員らしき人は一度も見かけなかったです。かなり人件費を節約できているんだろうなと思いました。
とはいえ、困った時にはいつでも電話してと言ってくれたし、ホテルの中はどこも清潔で、気持ちよく滞在できました。
部屋を出る時に、日本から持って行った和紙の折り紙で鶴を折って、お礼の手紙を添えて机に置いてきました。
後日、ドミトリーさんから来たメールに「君のくれた素敵な鶴を大事に飾ってるよ!」と書かれていて、トゥンク・・・とトキメキました。クマさんみたいなロシア男だけど乙女なのよね。ホテルのインテリアも可愛かったしな。
ホテルが見つけづらいのと、お風呂&トイレが共同というのが人によっては気になるかもというのがデメリットかなと思います。
でもツイン一泊が3000円くらいで、一人頭1500円と考えると、設備もおもてなしも良すぎて申し訳ないくらいでした。
サンクトペテルブルグにお泊まりの際は、 El Rooms Apartments Hotel へ!
El rooms - An affordable cosy hotel in the very heart of Saint-Petersburg
ホテルの公式サイト(英語)です。ここからも予約できますが、日本の海外ホテル予約サイトからももちろん予約可能です。私はBooking.comを利用しました。
El Rooms Apartments (ロシア サンクトペテルブルク) - Booking.com
Booking.comのEl Rooms Apartments Hotelのページです。1件だけある日本語の口コミが私です。他の口コミを見ると、ロシア人の利用客が多いみたい。10点満点評価の9.6という、かなりの高評価が付いています。
しかし一つだけ、このホテルというか建物に関して「これはアカン」と思ったことがありました。
それがこれ。
コンクリの壁に直で穴をあけて、コンセントはブラーンとぶら下がってるし、コードは絡まりまくり。ぐっちゃぐちゃのタコ足配線とか、もうそういう次元の話じゃない。
なんかあってどうにかなったら、いっぺんに電気関係おじゃんでしょ・・・
ただまあ、ほんの数日とはいえロシア人気質に触れてみると、何かトラブルが起きたとしても、それはそれで気にしないORどうにかするんだろうなーと思いました。
とりあえず、滞在中に問題が起きなくてよかった。多分こうやって「今日大丈夫だったから明日も大丈夫」的に先送りにされてきたんだろうな・・・
さて、カギを置いて外に出たら忘れ物をしても取りに戻れないので、自分の荷物と相手の荷物を確認しあってダブルチェックしてからホテルを出ました。
地下鉄1号線の駅Площадь Восстания(プローシャチ・ヴァスターニャ)までは歩いて5分。すっかり慣れてもう目をつぶったって行けるぜなどと、調子に乗った罰が当たったのでしょう・・・
フィンランド行きの列車が出る鉄道駅の最寄り地下鉄Площадь Ленина(プローシャチ・レーニナ)まで2駅のところ、おしゃべりしてて車内アナウンスを聞き間違え(これもまた中途半端に言葉が聞き取れるがゆえの油断。緊張していた初日のように駅の数を確認していたら間違えなかったはず)、1駅で降りてしまったのです。
地上に出てから気がつきました。もう一度地下鉄に乗っても良かったんですけど、早めにホテルを出たので、列車の時間まで1時間以上あるし、今いる場所からまっすぐ歩けば駅があるのも分かっているし、ロシア最後の日だから散歩がてら歩いて行くかということになりました。
これ、結果的に間に合ったからよかったのですが、1駅の区間が思ってたより長くて、けっこうギリギリになってしまいました・・・日本の地下鉄と同じ感覚じゃいけませんね。さすが広大な国土を誇るロシア。
そのぶん珍しいものが見られて得したと言えなくもないけど、連れはかなりハラハラしてましたね。正直すまんかった。
道路には雪が残っていましたが幸い天気に恵まれ、歩いていて気持ちいい。
ネヴァ川に突き当たったところで左折、リチェイニィ橋で対岸へ渡ります。
橋までがけっこう距離があって、この辺りから焦りはじめます。
街並みは可愛いが、
なかなか橋までたどり着かない。
対岸にはフィンランド駅の尖塔が見えているのに・・・列車の時間が迫る。
右手奥に橋が見えてきました!
橋を渡っていると前に軍人さんらしき集団がいたので、こっそり撮ってしまった。
サンクトペテルブルグに滞在中、とにかく街中に軍人と警察官がウロウロしてるのを見かけました。他の国ではあまりそういうことがなかったから、当初は少しビビってたけど、すぐ慣れてしまいました。こうやっていろんなことに慣れていくのは良し悪しだなと思いつつ。
もし彼らが振り返って写真を撮ってるのがばれたら銃殺か即連行される恐れがあるため、実はかなり遠くからズームで撮ってます。個人を特定できる写真ではないけど、無断で撮るのはよくなかったですね、反省。
橋の途中にある、橋げたの中のメンテナンス施設に出入りできる階段。は、入りてぇ!
リチェイニィ橋は跳ね橋なので、そのための設備を収納しているようです。
ネヴァ川は広い。夏にはクルーズができるから、今度は船に乗ってみたいです。
橋を渡りきったところに、戦車が飾られている明らかに警備が厳重そうな建物がありましたが、ずっと軍人さん(銃を持ってる)が巡回していたので、さすがにこっそりでも写真を撮る勇気はなかったです。
すぐにフィンランド駅前の広場が見えてきます。
クリスマスツリーの奥にある時計塔が駅舎の目印です。
この時点で11時。列車の発車時刻は11時25分です。
なんとか間に合いそうだと息をついたのは束の間、駅舎の中に入ってもフィンランド行きアレグロのホームが見当たりません。
ピンチ?
とりあえず、その辺にいた駅員に尋ねます。
「Где Allegro(グジェ アレグロ)?」(アレグロはどこですか?)
当然ロシア語でベラベラと説明してくれます。なんとなくこの建物から出なければならないと言ってるっぽい。
この人からは、これ以上の情報は得られなさそうと判断し、「Спасибо(スパシーバ)」(ありがとう)と告げて、今度は窓口の人へ。
もしかしたら駅の窓口の人だし、英語が通じるかもと考えて「Excuse me?」と声をかけましたが、チャールズ・ブロンソン似の係員の女性は苦み走った顔で首を振ります。
すぐさまロシア語に切替え、
「Скажите, пожалуйста, Где Allegro(スカジーチェ パジャールスタ、グジェ アレグロ)?」(すみません、お尋ねしたいのですが、アレグロはどこですか?)
と尋ねました。
チャールズ子さんは眉をしかめたまま、指で四角を描き、この建物を出ることを示した後、「направо, и направо(ナプラーバ イ ナプラーバ)」(右に行って、また右)と教えてくれました。
ここで、来る時に見た建物の構造を思い出しました。そういえば、駅のホームは時計塔を背にした場所にあったよ!つまり今は裏側にいるんだ、だから一度ここを出て回り込めばいいんだ。
私が、あーわかった!という顔で「Понятно!направо, и направо(パニャートナ!ナプラーバ イ ナプラーバ)」(わかりました!右へ行って右ですね)とうんうん頷くと、ふっと笑顔を見せて「Да(ダー)」(そうだ)と頷き返すチャールズ子さん。
気持ちよく「Спасибо」とお礼を言って、さて行くべと駅を出かけたところ、制服を着た女性に声をかけられました。
「私は英語が少し話せる、何か困っていますか?」
と聞いてきてくれました。もう大体のことは分かってるけど「アレグロのホームを探しているのです」と答えると、先ほどのチャールズ子さんと同じことを教えてくれます。
確信も持てたし、さくさくアレグロのホームへ向かいます。時間は11時10分になっていました。
すぐに見覚えのある建物が見つかりました。
そういえば、余ったルーブルの両替をしたい。待合室のすぐ横には両替所があり、フィンランドでルーブルを替えられる場所を見かけなかったから、できればしていきたい。
出発まであと10分少々。連れは「いや後でいいでしょ」と焦っていますが、「まだ大丈夫、すぐ隣だから」と説得して両替所へ。なんと窓口に人がいて、待たなければいけない。やばいか?
連れの顔が引きつる。私は時間をチェックし、あと2分待って順番が来なければ行こうとなだめます。
するとすぐ前の方が済んで、少し残ったルーブルを両替するだけの我々は、あっという間に終わりました。
足早にホームへ向かい改札を抜けると、簡単なX線の荷物チェックを受けます。
そこそこお土産を買って重くなったバックパックを「うげぇー!!」と下ろす私に係員の方はクスクス笑い、チェックはゆるゆるでした。ほんとに見てた?
アレグロはもう到着していました。時間は出発3分前。ギリギリでいつも生きていたいんだぜ!
ここで思い出していただきたい。フィンランドから来る時には座席指定ができましたが、サンクトペテルブルグ発の列車は指定ができず自動的に割り当てられるため、自分がどこに乗ればいいのか分からないのです。(下記リンク参照)
すかさず乗務員ぽいお姉さんをつかまえて「自分の座席が分からないんだけど」と尋ねて・・・うん?あなたは3日前にアレグロに乗って来た時に、私の入国申請書をミスして破ったお姉さんではないですか?
先方は記憶に残っていない様子で、淡々と列車番号と座席番号を指し示し、「あっちだよ」と乗るべき列車を教えてくれました。
無事に列車に乗り込み割り当てられた座席へ行くと、えっと上品なマダムが座っていらっしゃいますが?
「あの、すみません。そこは私の座席なのです」とお伝えしたところ、キュートな笑顔で「まあ、ごめんなさい!どうぞ」と横にずれてくれました。
いや、違うんだ。そうじゃないんだ。その2席は我々のなんだ・・・
しかたなくチケットを見せて「ここは1番と2番の席で、私たちが予約しているんです」と説明します。するとマダムは「1番?あらやだ私は8番なの。席が違うのね」と理解して下さり、席を移ってくれました。
我々の席は4人掛けだったので、向かいに座って推移を見守っていた女性と男性もホッとしています。
やれやれ、と村上春樹ばりにため息をつき、さっそく備え付けのウォータークーラーの水を飲みました。一気飲みしてぷはーとする私を、向かいのお2人が微笑ましげに見ています。
その間、連れは心を失ったゾンビのごとき表情で押し黙っていましたが、ようやく腰を下ろして「最後までロシアは・・・」とボソボソ呟いたのが聞こえました。
そうだね、君にとっては受難続きだよね。
自分が思い描いている通りに進まないのは旅の醍醐味だけど、それを苦痛に感じる人はある程度いて、そういう人は無理して旅をしない方がいいのかもしれません。特に海外は、日本の常識がその国の非常識だったり、その逆だったりが起きがちだから。頭では理解してても、実際に体験すると辛いってのは往々にしてあるものね・・・
しかも出国審査で連れだけがカバンの中身を見せろと命令されてしまいました。
2メートルくらいあるゴツい審査官に「カバンの中身はなんだ」と聞かれ、もちろん自分では答えられない連れの代わりに「服とか本とか」と答える私をジロリと見て、「中を見せろ」と言い放ちます。
手持ちのリュックを開いて見せる連れに、上の棚に置いたバックパックを示して「それもだ」と命じる審査官殿。連れは完全に表情を消して指示に従っています。
「やめたげて!連れのライフはもうゼロよ!!!」と喉まで出かかった、マジで。
私には「ロシアを出てどこへ行くんだ?」と聞いてきました。
「ヘルシンキへ戻って、それから日本へ帰るんだ」と説明しましたが「Go back to Japan」と言いながら手で飛行機の形を作ってブーンと飛ばして見せたせいか、フッと笑って「OK」と言い、荷物もチェックせずに終わりました。
その優しさの10分の1でも、連れに示してやってくれないか・・・
それからは何事もなく定刻通りヘルシンキ中央駅に到着。
3日前まで泊まっていたホステル・エロッタヤンプイストに再度チェックイン。休憩してから、街に繰り出します。
「ロシアから戻ると、フィンランドの過ごしやすさが分かるよね・・・」と連れが心の叫びをしみじみと漏らしています。
あー、まーね。君の気持ちは分かるよ。そうとうお見舞いされまくってたからね。
旅程はあと2泊。明日はムーミン博物館のあるタンペレへ行くため、おそらくゆっくりフィンランド土産を物色できるのは今日が最後です。
各所デパートを回り、ベタに「かもめ食堂」でご飯を食べたレポートはまた次回!7月中にお届けする予定です。
サンクトペテルブルグ3日目 後編~狂気に触れる昼、ロシアに馴染む夜
(前回のおさらい)
動物学博物館で膨大な量の剥製に圧倒されてぐったりした我々は、サンクトぺテルブルグ総合大学の学食に潜入して、久しぶりの学生気分を味わうとともにお腹を満たし、午後からの活動に向け英気を養うのであった・・・
のんびり休憩&キャッキャした若者に囲まれたおかげでHPが回復した我々は、一路クンストカメラへと向かいました。
正式名称は「ピョートル大帝記念 人類学・民族博物館」ですが、珍スポット好きの好事家には「クンストカメラ」(珍品コレクション、珍品好きの変人)という別名の方がお馴染みです。
確かに世界の民族文化についての豊富な展示もあるのですが、もちろんそっちも面白いんですが、やっぱりピョートル大帝のエグいコレクションー奇形動物の剥製や奇形児のホルマリン漬け&骨格標本が自分的にはメインでした。
というのも、都築響一さんが世界の珍スポットを巡った記録を収めた「珍世界紀行」という本が大好きで、その中で紹介されていた「世にも美しい頭部のホルマリン漬け」をこの目で見たかったのです。
(こちら、文庫本も出ていますが、写真を見るには大判の単行本の方がお勧めです)
悪趣味なのは承知しています。ただ方向性は違えど、美しいものや可愛らしいものと同じように好きなんです。
なぜだか、あまりに美しいものに触れると圧倒されて恐ろしくなるように、グロテスクなものを見ると逆に安心するんです・・・たたみかけるような奇形動物&人の展示を見ても、午前中に見た動物学博物館みたいに怖いとは思わないんですよね。
この辺の心の動きは、今後掘り下げてみたいところです。
さて、サンクトペテルブルグ総合大学からクンストカメラは歩いて5分くらい、あっという間に着きます。
公式サイトです。(ロシア語と英語のみ)
またしても窓口で、私たちの前にいたロシア人家族連れが、出したお札の額がデカいからと断られて揉めてました。
同胞にも容赦なく手厳しい対応をする。それがロシア。私おぼえた。
チケットは200ルーブル、だいたい300円弱(2015年12月当時)ですね。安い!
美術館とか博物館とかの入場料が総じて日本よりリーズナブルです。あと交通機関の運賃もそうですね。物価の違いの要素もあるのでしょうが、公衆に供するものは安価でという思想的背景がある気がします。
ありがたやーとお釣りなしでチケットを購入し、コートを預けて中へ。
前述の通り、世界各国の文化を紹介する展示がたくさんあって、じっくり見てると半日はかかりそうです。日本文化を紹介したコーナーは微妙に首をひねる部分はあるものの、だいたい合ってるって感じでした。
きっと他の国も、その国の人が見たらビミョーってのがあるんだろうな。
民族衣装とか日用品とか本当にびっしりと並べられているので、すごく楽しかったです。写真撮影OKだったのですが、こういうのはナマで見た方がいいべさ、と思って写真は1枚も撮りませんでした。多分また来るしな・・・という思いもありました。
それに肝心のピョートル大帝グロテスク・コレクションは撮影禁止だと本で読んで知っていたので、写真を撮るモチベーションが低かったというのもあります。
それも寂しいから1枚だけ。クンストカメラの建物を出口側から見たところです。
小さい中庭があって、夏とかに軽くお茶するのに良さそうな場所でした。
しかしながらピョートル大帝のコレクションはすごかった!
これでもか!と言わんばかりのホルマリン漬けだらけで、連れは「夢に出そう」とブルーになってました。
申し訳ないが私はうっとり&興奮で、親切にも英語も併記されていた説明書きを一個一個丁寧に読んでました。ピョートル大帝がさまざまな標本を集めながら、ウキウキしてたのが伝わってくる良い展示でした・・・
ドロドロした情念がないとは言わないけど、むしろ少年のような無邪気な喜びが伝わってきて、ほっこりしたよ。楽しかったんだろうな、分かる、分かるよツァーリ(ロシア語で君主の称号)!
駄目な人はマジで駄目だと思うので、ここまで読んで心ひかれた方は是非どうぞ。
物足りない、なんてことは決してないと思います。
ちなみにお勧めのお土産は、双頭の胎児の骨格標本がプリントされた斜め掛けバッグです。たしか350ルーブルくらいだったはず。お値段のわりに作りがしっかりしてるし、黒地にシルバーのプリントがクールです。
売り場のお姉さん(美女)が、「斜め掛けする用だから持ち手が長いのよ」と一生懸命説明してくれて可愛かった。
イキイキ&ぐったりと明暗分かれた我々は、今度は連れの希望で「血の上の救世主教会」こと、スパース・ナ・クラヴィー大聖堂へ向かいます。
12月のロシアの日は短く、4時半くらいでそろそろ夜の気配。
宮殿橋を渡ってエルミタージュ美術館の横を通る頃には、空の色が濃くなっていき、
ゆっくり歩いてスパース・ナ・クラヴィー大聖堂に着いた時には夜でした。
夜が来るの早いよロシア!
連れが「外側から写真を撮るだけでいい」と言うので、私も中が見たいというほどでもなし、さくっと外観を撮って終わりました。
正直、「テトリスだな・・・」というショボイ感想しかない。
お好きな方からしたら、なんてもったいないことを!とお叱りを受けるでしょう。日本人らしいモッタイナイ精神に反するわ。
まあちょっと疲れていたんですね。私も連れも美術に熱心な方ではないですし。
そこから地下鉄の駅Гостиный Двор(ガスチーニィ・ドヴォール)まで歩き、私の希望でお土産屋さんへ向かいます。
途中で見たДом Книги(ドム・クニーギ)のライトアップが綺麗でした。
緑色のメトロ3号線に乗って、Площадь Александра Невского(プローシャチ アレクサンドーラ ネフスカヴァ)で下車。
駅から徒歩4分だとるるぶには書いてあったけど、実際は不安になるほど遠い場所にあった、亜麻製品を中心に取り扱っているナチュラルテイストのお店「Славянскнй Стиль(スラヴャンスキー・スチーリ)」にどうにか到着。お目当てのマトリョーシカ柄エプロンをゲットしました。
もう地図と実際の場所がずれていることぐらいでは動揺しないよ!
すっごく可愛くて、汚すのが嫌で使えない・・・時々取り出してうっとり見てます。
この先、万が一裸エプロンをする機会が訪れたら、満を持して身に着ける所存です。
お買い物を無事に済ませ、いい時間になってきたことだし、そろそろ晩御飯でもとなりました。
実はお土産屋さんからホテルまでは歩いても戻れる距離です。今まで散策していたエリアとは違う場所だし、食事ができる店を探しがてら、ぶらぶら戻ることにしました。
私は胸に一つ、野望を秘めていました。ロシアの寿司を試してみたい・・・!
幸い、これまでもあちこちでСуши Бар(スシバー)を見かけています。
案の定、ネフスキー大通り沿いにチェーン店ぽい寿司バー「ЕВРАЗИЯ(エブラジヤ、だと思う)」を発見。
連れが了解してくれたので、英語のメニューがあるのか、ていうか英語が通じる店員さんがいるのかも確認しないまま入ってみました。
この頃になると、だいぶ腹が据わって来てましたね。なるようになるわ、と思ってました。
そしてやっぱり、英語は一切通じませんでした。かろうじて伝わるのはイエス、ノー、オーケーくらいです。
階段を下りて店に足を踏み入れた途端、けっこうなアウェー感に包まれます。
ホールのお姉さんも、カウンター形式の厨房の人たち(寿司バーなので握るところが見えるようになってました)も、「観光客っぽいけど・・・コミュニケーションとれるのか?」という表情を浮かべ、そろって不安そうにこっちを見ていました。
とりあえず「Здравствуйте(ズドラーストヴィチェ)!」とご挨拶したら、ちょっぴり安心した雰囲気に。
メニューを手渡されて「Спасибо(スパシーバ)」とお礼を言うと、ニッコリとほほ笑んでくれました。おお、ロシアでは珍しい・・・
メニューには英語が併記されていたため、選ぶのに苦労はしませんでした。
海苔巻きセットに、ロシアならこれだろう!のイクラ、サーモン大好きなのでスパイシーサーモンマヨみたいなのを注文しました。緑茶もあったので、それも頼みました。
お姉さんを呼んで注文を伝えると、なにやらメニューを指差しながらいろいろ話しかけてきます。
速い、知らない単語だらけ、ゆえにまったく分からない。
首をひねりながら会話を続けているうちに、だんだん理解できてきました。メニューの中でもお手ごろな値段のネタと、ちょっとお高いネタがあって、私たちがそれを混ぜて注文したので、勘違いしてないかを確認したかったようです。
「話が通じたぞ!」という瞬間の私とお姉さんは、ハイタッチしそうな勢いでしたね。
それにしても、よく粘り強く説明してくれたものだわ。私が彼女の立場だったら、あそこまではやらないかも。
テンションが上がってたから「オーケー、オーケー、ノープロブレム」って永ちゃんみたいに答えたけど、なんか通じてたみたいで良かったです。やはりロックンロールは世界共通の言語だな。ヨロシク!
また机の上にもおススメメニュー的なものが貼られていて、デザートっぽい果物とクリームチーズをライスペーパーで巻いたやつが美味しそうだけど、こちらは値段が書かれていない。
これも聞いてみないと不安だな、変に高かったらいやだしと思い、まずは指差して「How much is it?」と尋ねたところ、予想していた通り困った顔をしています。
うーん、これは通じないみたいだと分かったので、今度はロシア語で「Сколько это стоит(スコリカ エタ ストーイット)?」(いくらですか?)と尋ねると「Двести Восемьдесят☆%*△#・・・」と答えます。
おお、数字は難しいな!最初の「Двести(ドヴェスチ)」(200)は聞き取れたので、「Двести?」と問い直したら、もう一度「Двести Восемьдесят(280)☆%*△#・・・」と言ってくれました。
これは多分280~289までの間だな、と推測できたので、「Да, Понятно. Oдин, пожалуйста(ダー パニャートナ、アジン パジャールスタ)」(はい、分かりました。ひとつ下さい)と注文しました。
お姉さんは「Пожалуйста」と去って行きます。
やれやれ、ロシア語のみでレストランで注文するタスクをクリアしたぞ。
しばらく後、まずはお茶が運ばれてきました。
よく紅茶をサーブする時に使うようなガラスの容器に日本茶が入っているのは多少の違和感がありますが、それよりもサイズに驚きです。高さ25センチはあるのでは?
一人に一つずつ頼まなくてよかったねー、とホッとする我々。最終的には2人で分け合っても多かったです。
しかしもっと重要な問題があったのは湯飲みです。湯飲みの底の部分、いわゆる「糸尻」と呼ばれる部分がありませんでした。
やっぱり微妙に正確には伝わっていないんだねなどと、のん気に笑っていられたのはお茶を注ぐまででした・・・
「熱っっっっ!!!」
そう、熱くて湯飲みが持てない!お茶の温度がハンパなく熱いため、湯飲み部分を素手で持つことなどできません。そういえば、湯飲みに熱いお茶が入っている時は糸尻と縁の両方を指で支えて持っていたのだった。糸尻は一種の絶縁体的な役割も果たしていたのだな。
「これは持てないな」
「お茶が飲みたいね・・・」
陶器部分に熱を奪われて中身のお茶が少し冷めても、その分だけ熱を吸収した湯飲みはひたすら熱い。
打開策としておしぼりを巻いてチビチビ飲んでいたら、なぜか店員さんがおしぼりを持って行ってしまった。なにゆえそんな酷い仕打ちを・・・
そうこうしているうちに寿司がきました。
けっこうちゃんとしてて、ガリも付いてます。
カウンターの奥にいる板前さんが心配そうにこっちを見ていました。
確かに、彼らから見れば我々は寿司の本場から来たわけで、リアクションが気になるのは仕方ない。背中を向けている連れが、ロシア人板前のレーザービームみたいな視線に気づいてないのが恨めしい。
なるべく大きく表情を変えず「まあ、いいんじゃないでしょうか」みたいな、そこそこ満足してる空気を醸し出しておきました。
味の感想は「思ったより普通」です。イクラは本場なのにさほど美味しくなく、海苔巻きはコンセプトを勘違いしているのでは?という仕上がりでしたが、マヨネーズ和えのサーモンとイカは美味しかったです。
そして何より大ヒットだったのはデザートロール!
クリームチーズと果物の相性バッチリで、上からかけてあるジャムも甘すぎず、ちょうどいい塩梅です。6個入りで400円くらいだと思うと、値段的にも満足。もう1セット頼んでもよかった。またロシアに来る時に、これだけ食べにこの店を利用してもいいくらいです。
さて無事にお腹を満たし、店内で利用できる無料wifiで連れが「ワンピース」を読むほどリラックスしたので、そろそろ引き上げることにします。
お会計お願いしますと伝えたいけど、残念ながらロシア語での言い方を知りません。ここは英語が通じないのはすでに経験済み。そこでジャジャーン!と取り出したのが、フィンランドのホステルから借りてきた「旅の指さし会話帳 ロシア」です。
ところが、いくら探しても「お会計お願いします」が見つけられません。私の探し方が悪かったのか?そもそも書かれていないのか?こんなよく使いそうな言葉がないなんて不思議なので、事情に詳しい方は教えて下さい。
その時は幸いネットが使えたので、調べて事なきを得ました。
「Счет пожалуйста(スチョート パジャールスタ)」でした、ご参考までに。
帰り際に、ウェイトレスのお姉さんたちが皆して手を振って「До свидания(ダスヴィダーニャ)」と見送ってくれたのが嬉しかったです。
お互いにやりとげた感でテンションが上がってたんでしょうね、私も一人ひとりに「Спасибо」とお礼を言って店を出ました。
お散歩気分でホテルまでのんびり戻ります。辺りはすっかり夜ですが、危なげな雰囲気もなく、クリスマスが近かったせいかなんとなく浮かれたムードです。
モスクワ鉄道駅の壁を使ったプロジェクションマッピングを見物し、途中にあった初めて入るスーパーで買い物をしました。今まで通ってた店よりもコンビニエンストアに近く、品ぞろえが豊富で面白かった。
明日は昼の列車でフィンランドに戻るので、車内で食べるものを買いました。
エビ好きとしては外せなかったエビスナック。
お店的に一押しっぽかったベーコンスナック。
パッケージの可愛さにジャケ買いしたパン。
飲み物は、車内に無料のウォーターサーバーがあるのを知っていたので、
荷物になるし、仮にも国境を超えるから液体を持ち込むのはやめようという判断で無しにしました。
3日目にして聞き取り能力が上がったのか、お釣りのない小銭をきっちり払えた私に、強面のレジのご婦人が満足そうにうなずいてくれました。
連れは「買い物するのもう嫌だ・・・上司の前でプレゼンするみたいな気分だ・・・」と完全に鬱モードです。なんかもう、ただただ気の毒だ。
明日はもう帰るからさ、と慰めていたら、暗い顔をしたまま「これあげる、多分二度と来ないから・・・」ロシアのガイドブックを手渡してきます。
「あ、ありがとう」
本格的に心をボッキボキに折られたんだね。これで海外旅行自体が嫌にならないといいけど。
体を休めつつツイッターをチェックしていると、以前ロシアを訪れたことのあるフォロワーさんから、大変有力な情報が寄せられていました。
曰く「ロシアのチョコレートは高級なものより、スーパーで売ってるものの方が美味しいですよ」とのこと。
ぬなー!?
家族へのお土産用としてチョコは購入済でしたが、そうと聞いてはこうしちゃいられない!お財布をひっつかんで、ホテル最寄りのいつものスーパーへダッシュです。
ばら売りされてるチョコレートを5個ずつくらい7~8種類買いました。レジのお姉さんが迷惑そうにしてましたが、そんなの知るかい、わしゃチョコホリックなんじゃい!
エコバックをパンパンに膨らませてホテルに戻り、荷物を整理して準備万端。
私は名残を惜しみつつ、連れは早く去りたいと願いつつ、ロシア最後の夜が更けるのでした。
次回はフィンランドへ戻ったおかげで連れの元気が回復し、かもめ食堂でご飯を食べたレポートです。
※更新が滞っておりますが、今年の8月に行くイギリス旅行のためターボをかけて働いており、あまりブログを書く余裕がないのです・・・
とはいえ旅行の日程はあと3日なので、イギリスに行く前に最後まで書ききるつもりです。その後はイギリス旅行編を書く予定です、そちらもよろしくお願いします。
サンクトペテルブルグ3日目 前編~絶景とグロテスクと学食潜入のジェットコースター
3日目にして空は晴れ。
気候が良いせいか、昨日までより連れが元気です。
気温はマイナス1℃、どうりで暖かいと思ったよーなんて言い合う私たちは、すでに感覚がおかしくなり始めています。
地平線近くの雲にかすかに残る朝焼けが綺麗。
『白い雲の縁にはまだ朝の薔薇色がほのかに残つているやうだつた』
すっかり使い慣れた地下鉄を乗り換えて、5号線のАдмиралтейская(アドミラルチェイスカヤ)で降ります。
まずは歩いてすぐの場所にあるイサーク大聖堂へ向かいました。
イサーク大聖堂の情報が掲載されているサイトです。ロシア語ですが、ご参考までに。
大聖堂と展望台(Colonnade)は別料金になっていますから、窓口や自動券売機でチケットを買う時はお気をつけください。
入り口も別々で、向かって左側は大聖堂へ、右側は展望台へのものです。チケットのバーコードを読み込ませるとバーが動いて中に入れます。
多くの教会が天を突く尖塔を有し、高い天井をステンドグラスや絵画で装飾しているのは、天国を視覚的に体感するための装置なのだそう。
イサーク大聖堂もその例にもれず、内部に足を踏み入れると外界とは隔絶されたバーチャルな極楽空間に包まれます。
上へ上へと吸い込まれそう・・・
360度、どこを見ても荘厳です。
信仰心の無い私でも拝みたくなります。
ポカンと口を開けて天井を見上げ、クルクル回る私を、係員の人が珍しそうに見ていました。
まさに別世界・・・思わず些少ながら寄付をするほどに神聖な雰囲気でした。
ひと回りしてから、聖堂内にあるお土産物屋さんで「観光地によくある名所写真ポストカード」が好きな母のためにサンクトペテルブルグポストカードを購入。
70ルーブルのところ、間違えて1000ルーブルを渡してしまい、売店のお姉さんに舌打ちされてから気づいて慌てて100ルーブルを差し出して、お互いテヘヘと照れ笑いするという一幕はあったものの、問題なく買い物を済ませました。
いったん外へ出て、展望台へ。
扉の奥にある急勾配の螺旋階段は薄暗く、なんか出そう・・・幽閉とか監禁という言葉が頭に浮かびました。長い歴史の間に、1人や2人は亡くなっていそうです。
途中でこんなところもあるし・・・格子の奥には何があるの?隠し部屋?それとも拷問部屋?本で読んだ暗黒の中世の歴史が脳内を駆け巡る。
けっこうな数の階段を息切れしながら上っていくと、
やっと出口です。
これまで上ってきた螺旋階段があるのが中央の建物で、左下隅に写った外階段を上ると展望台に行くことができます。
絶景だー!
イサーク広場に積もった雪で落書きしてるぞ、と角度を変えてみたら星でした。おしゃれなことをしよる・・・
左側に尖塔がちょこんと覗いているのは旧海軍省です。
冷たい風がビュービュー吹いて顔が痛いくらいだったけど、円形の展望台をグルグル周りながら写真を撮りまくりました。
でもなぜか狭い展望台で一度も連れとすれ違わなかったのが不思議。
そして恒例の働くおじさんです。屋根の上に小さくいるの分かりますか?
掃除や修理などを担当する方たちみたいです。
私も屋根の上を歩いてみたかった!
イサーク大聖堂の後は、私が行きたくてたまらなかったクンストカメラ(ドイツ語が語源で珍品コレクション・珍品好きの変人)という別名を持つ、ピョートル大帝記念人類学・民族博物館です。
日露交流を始めとする多種多様な国との交易で得た貴重な資料が収蔵されているのですが、目玉はなんといっても、医学や解剖学に強い関心を持っていたとされるピョートル大帝のコレクション。奇形動物の剥製や、大帝自身が抜いた歯といったグロテスクな収蔵品をこの目で見たかったのです。
連れはグロ耐性に自信がないと申告してきたので、辛くなったらリタイヤしてねと告げて、足取り軽く向かいます。
道すがら、旧海軍省の前を通りました。
内部は見学できないらしいので、外観を眺めただけです。
建物の前は遊歩道を備えた公園になっていました。
お散歩気分で歩いていたら、公園の中をランニングしている男性(またしてもプーチン似)と出くわしました。
こんな雪が残るすべりやすい道だというのに、足取りは乱れることなく、なかなかのスピードで周回しているようでした。
すごいなーと見送ってから、わりとすぐに折り返してきたので、速いわ!と驚く私に、彼はバチコーン☆とウィンクを投げかけ、また風のように去って行きました。
やっぱりロシア人には勝てない・・・肉体と精神の強靭さをまざまざと見せつけられましたわ。
ネヴァ川にかかる宮殿橋でワシーリエフスキー島へ渡れば、クンストカメラはもうすぐです。
ネヴァ川、広い。
川べりにいたカモとカラス。北の国のカラスはグレー混じりのツートンカラー。フィンランドのカラスもそうでした。
ところがここで、持参した地図がざっくりしていたせいで、間違えて手前にある動物学博物館に入ってしまいました。
記念日か何かだったのか入場が無料だったのはラッキーでしたが、通常なら空いているチケット売り場の窓口が閉まっており、入り口も分からずウロウロしていたら、露店でプーチンのTシャツを売ってたお姉さんに「あっちだよ」と教えてもらいました。
それにしてもお土産物屋さんでのプーチン大統領のフューチャーぶりはすごい。顔をドアップにしたプリントに始まり、軍服を着てキメるプーチン、クマに乗るプーチン、などなどハンパないグッズ展開。もちろん小物も各種取り揃えております。プーチンマグカップちょっと欲しかったかも。
日本に置き換えると安倍総理プリントのTシャツか・・・ないわー。
橋を渡ってすぐの所にあるのは動物博物館で、クンストカメラは橋を渡りきったら左折して、さらにワンブロック先を右折した所にあります。ご参考までに。
ここはマンモスのミイラの展示が目玉ではあるのですが、動物たちの生態を剥製を使ってリアルに再現した展示も見ごたえがあります。
見ごたえは、あるのですが・・・あまりに膨大な数の剥製が、何万体というレベルで収蔵されているため、だんだん妄執的というか、収集への執念が恐ろしくなってきます。
こんな海の生き物の展示もあったりして凝ってます。この辺はわりと平和な気持ちで見られる。
亀もいたり。
ハブVSマングースの戦いとか。
メルヘン感のあるコウノトリ親子など、穏当なものもありますが、かなりグロなものもあります。社会見学に来てた子供たちがどよめいてた。
銃弾が撃ち込まれる以外に、どうやったらこんな跡が残るのか分からないガラスの破損を雑にテープで補修してたりして(しかも複数個所あった)、しだいに恐怖感がつのってきます。
これらはごく一部です。とてつもない量で、とてつもない密度の剥製たちに圧倒されてしまい、「みんな全部生きてたのを殺して飾ってるんだよね・・・」と当たり前のことに思いをはせてぐったりしてしまいました。
これだけの数の「死」に囲まれる経験は、そうはないです。
ただすごいもんだというのは確かですから、一見の価値はあると思います。
ここと似た戦慄を味わったのは、地元愛知県は蒲郡市にある竹島ファンタジー館です。
【竹島ファンタジー館】 鉱物・化石・貝のテーマパーク(愛知県蒲郡市竹島)
5500万個の貝で作り上げた展示は、綺麗とかの次元を通り越して異世界感がすごくて、その名も「時空のトンネル」という全面に貝をびっしり敷き詰めたトンネルは、初見の時はマジ悲鳴を上げましたよ・・・気持ち悪くて。巨大な生き物の内臓に飲みこまれる気分を体験できます!
とはいえ、こちらも人生で一度は見ておいた方がいいところだと思います。併設の海鮮お食事処は間違いなく美味しいですし。
何度も各メディアで紹介されている、愛知が誇る珍スポットでございます。
ふらふらと動物学博物館を出た後は、クンストカメラを発見したものの、ここもグロ展示だと知っていたため、ちょっとお昼がてら休憩したいねという話に。食欲を失ってないのは、我ながらさすがです。
ちょうどすぐ近くにサンクトペテルブルグ総合大学があるはずです。「可能なら学食にもぐり込んでご飯を食べてみたい」という連れの希望を叶えるべく、先にそっちへ行くことにしました。
クンストカメラより、もうワンブロック先に大学らしき建物がありました。
しかし大学だけに敷地は広く、ためしに入ってみた建物は入り口にセキュリティがあって警備員さんもおり、学校関係者以外は入れないようになっていました。
やや諦めモードの連れを励まし、学生さんっぽい人の流れに沿っていくと、「Студеит Столовая(ストゥジェント スタローバヤ)」(学生食堂)の文字が!
入り口の辺りでは、工事のおじさんらしき人たちが、たむろして煙草を吸っています。なんだか、部外者でも入れそうです。
注意されたら引き返せばいいべさーとドアを開けると、中は少し広くなっていて隅っこに椅子に座ったおじさんがいました。奥に見える食堂にサクサク歩いて行く私たちに特に視線を向けるわけでもなく、簡単に突破できました。
お昼時を少しずれていたせいか、6割くらいの席が埋まっている感じで、私たちをチラリと見る人がいたけど、そんなに注目はされていませんでした。連れの調べによると、サンクトペテルブルグ総合大学にはアジア系の留学生が多くいるそうなので、見慣れているのかもしれません。
欲しいものをトレイに乗せ、最後に会計するビュッフェスタイル?というのでしょうか、学食だなって雰囲気が懐かしいです。
おかずやスープ、ピラフを選ぶことができて、ケースの向こう側で待機しているお姉さんに頼む必要があります。
これは食いしん坊の面目躍如といいましょうか、食べ物の名前のロシア語はそこそこ頭に入っております。
Салат(サラート)/サラダとМясо(ミャーサ)/お肉、Плов(プローブ)/ピラフとСуп(スープ)/スープを選んで滞りなく注文できました。
連れの分も代わりに注文し、無造作に置かれていた謎のСок(ソーク)/ジュース(レモネードみたいだった)もトレイに乗せて、お会計をしました。
お金を出す時にまごついてしまったのですが、レジのお姉さんが「貸してみ」と手を出してくれて、必要なだけ取ってお釣りを返してくれました。その間ニコリともしないけど、あれはロシアン・ツンデレだと思う。なにげに親切なんだよなー。
大学内では、さすがに写真を撮るのははばかられたので画像はありませんが、いかにも学食っぽい、大量に作ったんだろうなという大雑把で素朴な味わいでした。学生時代を思い出して、ほっこりしたのもあったからか、そこそこ美味しく食べられました。
予想通り、先ほどの工事のおじさんも食事をしていて、一般に開放されているようでした。連れが言うには、けっこうチラ見されてたらしいけど、ご飯に夢中で全然気づかなかったわー(にぶい)。
食堂ではフリーWifiが使えて、潜入成功のツイートをしたり、のんびり休憩ができました。
やたらと密度の濃い3日目は、これでようやく半日。
次回は待望のクンストカメラと、寿司バーの報告です。
サンクトペテルブルグ2日目 後編~人生ベストのポテフラと出会う
タイトルが前回の引きのネタバレですが、まずはその運命のレストランに行くまでの道のりから。
エルミタージュを出た時にはとっぷり日も暮れて、お腹もいい感じに空いていました。
当初の予定では、るるぶに載っていた「シュトーレ」というロシア風パイが食べられるレストランに行くつもりでした。
エルミタージュを背にしながら宮殿前広場を抜けて、モイカ運河を渡ります。
橋を渡ってすぐを左折し、川沿いを進んでいきます。
車がすれ違えなさそうな細い道で、あまり人通りもありません。さすがに観光客は見かけず、地元民しか歩いていませんでした。
道なりにしばらく行って、最初の角を右折するとすぐ見えてくるはずなのですが・・・なぜかそれらしい店がありません。地図にはしっかり書かれているのに、探しても見当たりませんでした。
日本に帰って来てからお店のサイトをチェックしてみたところ、まったく違うページが表示されました。たぶん、もう営業していないのでしょう。
困った我々は、その近くをウロウロしていた時に見つけた、ウィンドウに英語メニューが貼られている店に入ってみることにしました。
入口は短い階段を下りる、ロシアによくあるスタイル。ドアを開けるとショートカットのきれいなお姉さんが迎えてくれました。
まだほかのお客さんはいません。
お姉さんは「Engish or French?」と尋ねてきます。手にメニューを持っていたので、どっちの言語のメニューが欲しいか聞いてるんだなと思い「English please」と答えます。
やはり英語のメニューを置いて、お姉さんは「後で来るね」と去って行きました。
久しぶりに英語の通じる人に会って、ちょっとホッとしました。
私はコテコテのロシア料理、ボルシチとビーフストロガノフ、付け合わせが選べるそうなのでフレンチフライを頼みました。飲み物はベリージュース。連れはクリームコロッケっぽいもの?あまりよく覚えていないけど、そんな感じのものを頼んでいました。
で、これがすっっっっごく美味しかった!!!
残念ながら、これも空腹&興奮のあまり写真を撮り忘れました・・・さすがに連れが「写真はいいの?」とツッコミましたが、食べ始めてからでは遅いんだなー。「いいよいいよ、もう」とモリモリ食べる私。
野菜の甘みがほのかに感じられるボルシチと、たっぷりサワークリームのハーモニー。具はホクホクと口の中でほぐれ、味わいをまろやかにしてくれます。
ビーフストロガノフは、よく煮込まれた柔らかなビーフがとろけるよう。あっさりめの味付けでくどくなく、いくらでも食べられそう。ベリーソースがアクセントになっていて飽きさせません。
極めつけは付け合せのフレンチフライ!太さも長さもちょうどよく、表面はサクッと、中身はホロッとほどける食感が最高。また塩加減が絶妙で、自分史上ベストの味でした。近所にあったら週3で通います!
ベリージュースは普通に美味しかったです。
うまい!うまいぞー!!シェフを呼べ!!!
テンションガン上がりの私に対し、連れは落ち着いたようすで「けっこう美味しいね」と言っています。
注文したものが違うから?それとも私のハードルが低いだけ?
まあなんにしろ、ご飯が美味しいのは幸せです。
嬉しくなってしまったので、会計の時お姉さんに「Очень Вкусно(オーチン フクースナ)!」(とても美味しいです!)と伝えました。
お姉さんはニコッと微笑み「Спасибо(スパシーバ)」(ありがとう)と答えてくれました。ほんわかした空気が流れます。「До свидания(ダスビダーニャ)!」(さようなら!)と互いに手を振ってお別れです。
次にサンクトペテルブルグに来る機会があったら、絶対にまた来よう。固く心に誓い、いい気分で店を出ました。
よかったら、行ってみて下さい。ぱっと見た感じは少し入りにくい店構えですが、美味しくて、かつリーズナブルなレストランです。私の食べた分で千円ちょいくらい。しかも連れが「いろいろ助けてくれるお礼に」とおごってくれました!ありがたや。
お店の名前は「Bagatelle」、下の地図でペンの先っぽが示している辺りにあります。
暗くて申し訳ないですが、入り口です。
ただ、お店の入れ替わりが激しいみたいで、もしかして無くなってしまっていたら申し訳ありません。
でも後から地元のお客さんが入ってきたから、それなりに流行っていそう。次回行ける時まで営業していてほしいです。
夕ご飯を済ませても、まだ6時半くらいでした。
連れに体調を聞くと「大丈夫」と言ってくれたので、徒歩でネフスキー大通りへ戻り、220年の歴史を持つショッピングセンター「Гостиный Двор(ガスチーニィ・ドゥヴォール)」でお土産を買うことにしました。
会社付き合いのバラマキ土産には縁がない私ですが、姪っ子にお願いされたマトリョーシカを買わねばなりません。
Гостиный Дворの目の前には、同じ名前の地下鉄の駅がありますから、疲れてもそれに乗ってスッと帰れて安心です。
レストランの前の道を南下すると、ネフスキー大通りに突き当たります。左折してすぐ、通りの向かいにカザン大聖堂が見えてきました。
道路のこちら側では、ブックフェア的な催しが行われていて、ブースが並んでいました。
もっと言葉が分かったら、ブックフェアが楽しめるんだろうな。語学習得へのモチベーションが上がります!
書店ドム・クニーギ。2階にあるカフェ・ジンジャーがガイドブックで紹介されていました。ここも次回は行きたい。
Гостиный Дворの通りを挟んで向かいにある建物です。これぐらいのライトアップが好き。看板を見ると、どうも銀行みたい。
ショッピングセンターの中に入ると、すぐ左手にマトリョーシカのショップがありました。
民芸品という趣のある、細やかな彩色で手の込んだ品が陳列されています。
すごく可愛くて素敵なんだけど、もっと素朴な感じのが欲しいんだよね。と思いつつ眺めていたら、商魂たくましいお姉さんにガッチリつかまりました。
次から次へと品物を出してきて、来歴や作者について説明してくれます。見事に流暢な英語です。観光客がたくさん来るんだろうな・・・
グイグイ勧めてくるお姉さんと攻防を繰り返し、やっとのことで振り切りました。
「買う」って一言もいってないのに、袋を取り出してラッピングしようとする荒業には手こずりました。あれ、気弱な人なら押し切られるぞ。作戦なんだろうなー。
去り際に見せた、ガッカリ100%の表情が忘れられません。
店の奥へ進んでいったら、だんだん庶民的なお土産屋さんが増えてきました。
棚いっぱいにマトリョーシカを並べた店に入ってみると、まさに求めていた素朴な可愛い子ちゃんたちが!
顔は一つひとつ手描きだと以前にテレビで見たことがあります。どうりでみんなそれぞれに個性のある顔立ちです。
吟味のすえ、目のクリクリした子に決めました。中を見たかったので店員さんを探しましたが、周りにいる人たちは関心なさそうにボーっと立っています。
とりあえずその辺にいた人に声をかけたら、お店の人を呼んできてくれました。
びっくりするくらい愛想のない、NOスマイルのご婦人が現れました。
「Can I open it?」(開けてみてもいい?)と聞いたら、無言で開けてくれます。親切な人、なのか?すべて取り出すと、人形は全部で6個。最後の一番小さい子は、作りが雑なとこが逆に可愛い。「Cute!」と言っても、ご婦人はNOリアクション。一本筋が通っているぜ。
気に入ったので「I'll take it」(これください)と伝えると、重々しくうなずき無言でレジに持って行ってくれました。ていうか、一度も声を聞いてないんだが。
一応包んでくれたけど、うっすい紙をくるっと巻いただけ。そしてうっすいビニール袋(100円ショップで1パック100枚入りで売ってそう)に入れて渡されました。
斬新!ラッピングの概念をくつがえす簡易包装!
やばい、面白くなってきた。
笑顔で受け取る私に、のっぺりした無表情だったレジの女性の頬が緩みました。
Love&Peaceだね!イエーイ!
横で見ていた連れは「本当に愛想がないよね・・・」と黄昏ていました。
目的のブツはゲットしたから、建物の中を探検してみることにしました。
さっきから、ライブみたいな音が聞こえていて気になっていたのです。
音源をたどっていくと、階段の上から聞こえてきます。何やら人も集まっていました。
のぞいたところ、ドレスアップした美女がステージで歌っているではないですか。
「ライブ?」
「かな?」
派手めのスーツを着用した司会者が、テンション高く彼女を褒めたたえ(推測)、拍手を求めます。この人が、私がロシアで会った最もハイテンションな人だったわ。
美女がステージから降り、今度はカウガール風のコスプレ?をしたキュートな女性が登場し、またも歌い始めました。
「ライブなのかな?」
「うーん」
疑問に思いつつ、飽きてきたので2階のフロアを一回りして戻ってくると、また人が変わって男性が歌っています。ここでピンときました。
おそらくこれはカラオケです。ロシアではカラオケが大人気だと、やはりテレビで見ました。その根拠は、あんまり男性の歌が上手くない(婉曲な表現)ことだ!
周囲はわりと微笑ましく見守っている雰囲気です。ロシア人優しい。
そしてまたも新しい人がステージに登ります。軍服っぽい服装の女性です。緊張しているのか、声がちょっと震えてました。
「カラオケ大会じゃないの?」
「あー、なるほど」
連れも納得しています。
知らない人のカラオケを眺めてもな、と意見が一致し、下へ降りて1階フロアも見て回りました。
とりたてて目新しいものはなく、各種土産物屋と、地元の人も利用するのか、やや高級そうな洋服屋があるくらいでした。
ガイドブックには、ショッピングセンターにはスーパーがあり、珍しいお菓子や雑貨が買えると書いてあったのに、それっぽい店が見当たりません。
また潰れてるパターン?と思いましたが、ちょうどフロアマップの冊子が置かれていたので手に取りました。
そこにはスーパーらしき場所が記載されています。どうやら一度外に出なければいけないらしい。マップを広げて相談する私たちを、屈強なガードマンが見つめています。不審そうというより、ようすをうかがっている感じ。
そう、ガードマンがやたらいるんです。そう広くはないワンフロアに5人はいました。みなさん恐ろしくガタイがいい。日本のスーパーにいるような、おじいちゃん警備員とは訳が違います。腰には、殴られたら頭蓋骨くらいたやすく粉砕されそうな、ぶっとい警棒を下げています。
顔は怖いけど、こいつら迷ってるのか?声をかけるべきか?しかし言葉は通じるのか?という葛藤が透けて見えるようで分かりやすい。
私たちがオッケー分かったぞ的に話をまとめ、マップをたたんで戻すのを見て、ホッとしていたみたいです。
いったん外に出てから、ぐるりと側面へ回り込むと、案の定入り口を見つけました。
スーパーよりも、むしろデパートに近かったかもしれません。おもちゃ屋あり、文房具屋あり、DVD屋あり。奥に進むと食料品売り場がありました。
うわー、見てるだけで楽しいねー、デザインが独特だねー、などと盛り上がっていた我々は、ある事に気づいてしまいました・・・
さっきのカラオケが館内放送で流れてる!
驚きに、顔を見合わせる私たち。
そんなことってあるの?
デパートの催事場でカラオケ大会は日本でもあるかもしれないけど、それをわざわざ放送で流すかね?
プロ並みに上手な人もいれば、ハラハラするほど音程が不安定な人もいて、元気があればなんでもできる!な人もいる。買い物のBGMにしてはクセが強すぎるよー。
周囲の人々は慣れたようすで、特に気にもしていません。
あるんだ・・・珍しくないんだ・・・
ロシア、面白すぎ。
時に笑いの発作に襲われつつ、これを受け入れるしかないんだと悟った我々は、とにかく買い物を続けます。
いろんなお菓子がいっぱいある!ワゴンにどさーっとチョコレートが積まれてる!カカオのパラダイスやー!
次々手に取って、ひとしきり興奮した後、ふと冷静になりました。
ホテルの近くにあるスーパーにも同じのあったぞ。あっちの方はバラ売りしてたから、たくさん違う種類が買えていいんじゃない?
天啓のごときひらめきが下りたきたので、両手の品物をそっと棚に戻し、スーパーでは買えなさそうな、ちょっといいチョコレートを探す方向に切替えました。
一つひとつに猫の写真がプリントされた、薄型チョコレートの詰め合わせを発見。チョコレートで間違いないとは思うけど、実はキャンディーでした!というフェイクもありうるため油断できません。念のため、その辺でくっちゃべってた店員さんに聞いてみます。
「Извинйте, Скажите, пожалуйста(イズビニーチェ スカジーチェ パージャールスタ)」(すみません、おうかがいしたいのですが)
おお、なんだなんだ?と3人のご婦人がわらわら寄ってきました。くわっと目を見開いていて、ちょっと怖い。
「Это шоколад(エータ ショコラート)?」(これはチョコレートですか?)
「До, До, шоколад」(そうよ、チョコレートよ)
「Понятно, Спасибо(パニャートナ、スパシーバ)!」(わかりました、ありがとう!)
よしよし、確認できたぞーと浮かれていたのでしょう。
一つのフロアにさまざまなお店が集まっているため、お店ごとにレジを済ませなければいけないルールがあるのを知らず、外に出てしまったのです。
背後から低い声で「Девушка(ジェーブシュカ)」(お嬢さん)と呼びとめられました。
これ、私だな。声だけでも伝わるロックオン感がハンパない。
すばやく振り返ると、身の丈190センチ以上あるムキムキマッチョガイ(プーチン似)の警備員が腕組みして立っていました。
でっか!体厚い!うっすら笑ってる!
エクスペンダブルズのメンバーに混じってても違和感がないよ!
少しでもおかしな振る舞いをしたら瞬殺される・・・そうでなくても映画でよく見る逃亡犯みたいに、床になぎ倒されて後ろ手で拘束される。あれは痛いぞー。笑顔が倍増させる威圧感に、産まれたての仔馬のように震え上がりました。
怯える東洋人女性を安心させようとしたのでしょう、あくまで優しくレジへと導いてくれました。粛々とレジを済ませる私を、静かに見守っています。よけい怖いんですけど。
別の店をぶらついていた連れをつかまえて報告したら、めっちゃウケてた。あんただったら呼び止められたのも気づかずに射殺されてた可能性もあるからな!と、同じ目に連れがあった場合に起きる、最悪の状況をシュミレーションして溜飲を下げました。
それぞれの戦利品を手に、地下鉄に向かうとまたもアクシデントが。
地下鉄入り口の前に人だかりができていて、ざわついています。
なんだろねーと思いつつ、ずんずん進んでドアを開けようとしましたが、ロックされていました。
疑問に答えるように、近くにいたご婦人がものすごい勢いで話しかけてきました。
話すスピードが速すぎるのと、知らない単語だらけで何を言ってるのか分からない。とはいえ状況から地下鉄を使えないことの説明をしてくれてるんだろうなと推測できます。
「Закрыт(ザクルイート)?」(閉まってるの?)と聞くと、ご婦人は我が意を得たりとばかりの表情で「До, закрыт!」と答えてくれました。
「Понятно, Спасибо」とお礼を言ったら、ご婦人も満足そうにうなずいています。
理由は分からないが、この入り口は使えないらしいよと連れに伝え、別の入り口を探して無事に地下鉄で帰りました。ホテルの最寄駅まで一駅の距離でしたが、連れはもう歩いて帰る元気はなさそう。これも、31ルーブル(約45円)という低価格だからこそ気兼ねなくできる贅沢です。
いつも通り近所のスーパーで朝食を買い、ホテルに戻りました。
一日歩き回って疲れたのか、連れの体調がまた思わしくありません。
明日はロシアを観光できる最後の日だから頑張りたいと言って、薬を飲んで早めに休んでいます。
寝転んだまま、それぞれの行きたい場所を提案しあい、私の希望でクンストカメラ(ドイツ語が語源の珍品コレクション・珍品好きの変人という意味)ことピョートル大帝記念人類学・民族博物館、連れの希望でサンクトペテルブルグ総合大学の学食にもぐり込んでご飯を食べる、が確定。
その道中で、イサーク大聖堂とスパース・ナ・クラヴィ大聖堂にも行けたら行こうねという流れになりました。
話しかけても、連れからは蚊の鳴くような声で答えが返ってる始末。大丈夫なのかな・・・体調に不安は残るものの、祈るしかできない。
大学への潜入方法をどうにか考えるから、連れの免疫系よ力を発揮してくれ!
2日目も私だけは元気なまま、サンクトペテルブルグの夜は更けるのでした。
次回は、結果的にすごく内容が濃くなった街歩きです。
サンクトペテルブルグ2日目 前編~エルミタージュ美術館の内装とおじさんに興奮する
よく寝た。
前日の夜、スイッチを切ったように眠りに落ちた私は、スイッチを入れたように目を覚ましました。
サンクトペテルブルグ2日目の朝、窓の外はまだ暗いです。
時間は6時を回ったばかりで、まだ連れは静かに寝ているようでした。
しばらくツイッターを見た後、お手洗いへ行って戻ったら、連れは体を起こして携帯を見ています。
「おはよー」
「おはよう」
「私はもう起きるけど、寝ててもいいよ」
「んー、起きようかな」
「体調は?」
「ましになった。喉の薬がすごい効いたみたい」
「おー、そりゃよかった」
ドミトリーよりも落ち着いて寝られたのか、薬のおかげか、見た感じ辛そうではありません。
もそもそと朝ごはんを食べ、ひと休み。
ホテルのオーナーであるDmitryさんは常駐しておらず、他に宿泊客もいないようで、自分たちが立てる物音以外に人の気配はなく、ただ静かです。
ホテルはマンションのワンフロアを改装した造りで、私たちはロビーに近い部屋を使用しています。奥にもまだ部屋がありそうですが、泊まり客が少ない時は閉鎖しているみたい。
せっかくだから、やっぱりエルミタージュ美術館に行ってみたいそうで、体調に気を付けながら一緒に出かけることにしました。
歩いても行けますが、今日は疲れているから地下鉄を使いたいという訴えにより、なるべく省エネ移動です。
とはいえ昨日と同じ路線を使うのは面白くないから、違う路線で乗り換えを試してみようという提案をしてみたら、オッケーをもらえました。
モスクワ鉄道駅とは反対方向へリゴーフスキー通りを南下して、4号線の「Площадь Александра Невского(プローシャチ アレクサーンドラ ネフスカヴァ)」から乗り、「Сласская(スパースカヤ)」で5号線に乗り換え、「Адмиралтейская(アドミラルチェイスカヤ)」まで行きます。
どんよりした曇り空をバックに、看板の人のテンションは高い。こんなアッパーなロシア人は旅行中一回も会わなかったぞ。
時々ぽこっと取り壊し中のビルがあって街並みが凸凹してます。テトリス・・・
かとおもえば金ぴか&ピンクの建物がふいに現れます。
メリハリが効いてるというか、落差があるというか、この抜け具合が好きだわー。
それにしても、少々冷え込みます。路傍には雪の塊がちらほらと。川べりの道にはしっかりと雪が残っています。
この情景を思い起こさせる詩の一節が頭に浮かびました。
わたくしはでこぼこ凍ったみちをふみ
このでこぼこの雪をふみ
向ふの縮れた亜鉛の雲へ
陰気な郵便脚夫のやうに
(またアラッディン 洋燈とり)
急がなければならないのか
宮沢賢治の「屈折率」です。詩集「春と修羅」に収められています。
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この詩が描き出すような、鈍色の雲が垂れ込める、くすんだ風景に心惹かれます。色で言うとグレー。
華やかでも鮮やかでもない色彩の街路を、ピリリと頬をさす冷たい空気に包まれて、あてもなくさすらいたい。そこに私を知る人は誰もおらず、私は誰でもない。一種の逃避なのかな・・・
そんな願望を持つ私は、もちろん能町みね子さんの「逃北 つかれたときは北へ逃げます」を愛読しています。
国内および国外の「北」への逃避行をつづったエッセイで、読むとすぐさま北へ旅立ちたくなります。危険。
まだロシアに来て2日目だというのに、妙にしっくりきているのは、日照時間が少なく、彩度が低くなる季節のせいなのかもしれません。
右手のビルに地下鉄を示すマーク「M」が見えてきました。
しかしその手前に、もっと馴染みのある「M」マクドナルドの看板があるのがお分かりでしょうか?
ちょっと興味はあったけど、朝ごはんを食べたばっかりだし、ロシアまで来てマクド(連れは関西出身、私も大阪に住んでいたことがあるので我々は「マクド」と言う)に入るのもなーと通り過ぎました。
相変わらず、深く長く速いエスカレーター。
乗り換えもスムーズに行えました。ロシアでも地下鉄は路線ごとに案内板もホームも色分けされているため、とても分かりやすいです。
初日に乗った1号線は赤、今日最初に乗った4号線はオレンジ、乗り換えた5号線は紫です。
Адмиралтейскаяに到着して外へ出ると、めっちゃ雪降ってる!!!
横殴りに降る雪が顔面にバシバシ当たって痛い。傘?そんなもん役に立たん!
うっすら白く煙っているのは雪です。背中を丸めて歩く連れの後ろ姿がわびしい。
そんな悪天候の中でも、ものすごい話しかけてくる謎の勧誘おばさんとか、観光客向けの一緒に写真を撮って小金をせしめる貴族のコスプレした人たちは精力的に活動しています。
根性と基礎体力の違いを思い知らされるなあ・・・
美術館前の宮殿広場には、大きなクリスマスツリーが立っていました。
アレクサンドル円柱の上の天使も寒そう。
除雪車がグルグル回って活躍してました。
雪にも映えるエルミタージュ。
建物を入ると中庭があって、その奥が美術館の入り口です。
チケットは館内でも購入できますが、かなり並びます。実はこの中庭に入ってすぐ右手に自動販売機があり、そこでも購入が可能です。でも皆さんわりとスルーしてました、あることに気づいてなかったのかも。私たちが使っていると、後ろに人がポツポツ並び始めてました。
入館したら、まずクロークに上着と荷物を預け、貴重品とカメラ(フラッシュをたかなければ撮影可能なエリアが多いです)、チケットを持ってゲートをくぐります。
日本語の音声ガイドを有料で借りることができますので、しっかり解説を聞きたい方はご利用下さい。
ここからは長丁場です。駆け足で見ても2~3時間はかかると聞きますから、軽く腹ごしらえをしておこうとカフェに向かいました。
入口ゲートの正面にある、有名な「大使の階段」の手前で右折して、そのまま奥へ進んでいくと、右手にオシャレ感のあるカフェ、左手にはこじんまりとしたインターネットカフェがあります。
私たちが行った時間が早かったのか、まだオシャレカフェは営業していなかったため、インターネットカフェに入りました。
そこで頼んだベリータルトが超当たりだったのです!
簡素な紙皿でサーブされているのから察せられるように、お値段は安いです。横の紅茶とセットで300円くらい。
でもタルトには中までフレッシュで濃厚なベリーがぎっしり詰まっていて、タルト生地もサクサク軽い口当たり。果物そのものの風味を存分に活かした絶品でございました。
北欧もそうだけど、北の方の国はベリーが採れるから、概してベリー系スイーツが美味しいんですよね。
「うまっ、うまっ」とうわ言のようにつぶやく私を、連れが羨ましそうに見ています。
連れの頼んだチョコレートケーキは普通だったそうです・・・つくづく外す男。
まあ、こっちは素材の味をそのままぶっこみました!ていう感じだからね。
エルミタージュを訪れる機会があったら、ぜひお試し下さい。私もまた食べに行きたいです。
お腹を満たして腰を上げましたが、ここで連れが提案をしてきました。
それぞれ興味があるものは違うし、ペースも異なるだろうから、別々に周って後で集合しないかというのです。
それはいいアイディアだと同意して、集合時間と場所を決めて解散しました。
自分がゆっくり見てるのに相手が退屈してると気を使うから、1人の方が気楽なんですよね。
さて、素直に打ち明けますと、絵画の良しあしがよく分からないです。というより美術に関して知識が浅いため、背景まで理解した鑑賞ができないんですよ・・・勉強不足が悪いのですが、これまであまり関心を持ってこなかったもので。
じゃあなんでエルミタージュに来たんだよ!と責められてもいたしかたない。なんとなく記念だし、NHK「テレビでロシア語」でも2週にわたって紹介していたから、行ってみたかったんです。「大使の階段」の実物も見たくて。
しかしご安心ください。そんな芸術オンチの私にも、レンブラントの絵がすごいのは伝わりました。
ほへー、絵がいっぱいあるなーとアホっぽく見て回っていた時に、そうだと知らず1枚の絵の前で足が止まりました。
なんだか、この絵は他と違う引力がある気がする、としばし眺めてから作者名を確かめると、レンブラントでした。なにぶん知識がないので、見ただけで作者は分からなかったんですな。それでもすごさの一片は分かるんだから、とてつもない作品なんだなと思います。
ラファエロ作品もありましたが、それらもぱっと見ると「なんかすごいのがある」と感じましたし、歴史に残る名作ってそれだけの力があるんですね。
写真はあえて撮っていません。素晴らしさを写真に収められるとは思えなかったし、記憶の中だけにとどめておきたくもあったのです。
その代わりというか、実際絵画よりも印象に残ったのは内装の豪華さです。もともと王族の宮殿だったんだから当たり前なんですけど、贅の凝らし方とお金のかけ方が桁外れで、ぽかんとするしかなかったです。
率直な感想は「これ、なんぼかかっとんのや・・・」という下世話な驚きなんですけどねー。
そちらは写真を撮りまくったので、ご紹介します。
色のトーンが、全体的に淡くて優しい感じです。
特にここの天井がお気に入り。こういう柄のスカートが欲しい。
人が写っているとスケール感が伝わりますね。天井が嘘みたいに高い。掃除はどうしていたんでしょう・・・
有名な音楽時計「孔雀」がある間です。そっちは人だかりがすごくて写真は撮れず。
だんだん麻痺してきて、これくらいだと「地味だな」と思うようになってきます。
ここは「うわっ、可愛い!」と声が出ました。ペールブルーとホワイトの組み合わせがさわやか&スイート。
ここ「〇〇の間」とかではなく、廊下なんです。どこもかしこも豪華で笑えてきます。
ここも廊下。
天井装飾のタイル?が好き。一つくらいくれないかなー。
金ぴかすぎて爆笑する私を、係員の方がけげんそうに見ていました。
ここはガイドブックで紹介されることが多いですね。エカテリーナ2世のコレクションが元となった黄金の間です。
あまりの輝きっぷりに言葉を失った礼拝堂。厳か、とはまた違った極楽感があります。
ニコライ1世が壁を白い大理石貼りに造り替えたという玉座の間。人がいない状態で写真に収めるの大変でした・・・
順番待ちの人が山ほどいて、遠慮してたらいつまでもシャッターチャンスは訪れません。
ちょっと引くとこんな感じですもの。
見ていて一番面白かったのはここです。窓側の廊下なんですが、端から端までかけて、聖書の創世記から出エジプト記やキリストの誕生を順を追って描いてあり、少しずつ後ずさりしながら見ました。
ちょうど社会見学の子供たちが来ていて、説明を一緒に聞けたのがラッキーでした。
ここをじっくり見て廊下の突き当りまで来た時、いきなりそこにいたご婦人に話しかけられました。もちろんロシア語、こっちが理解してるかどうかに一切頓着しない勢いでした。
突き当りにあるドアをさして、なにかを訴えている・・・身振り手振り&わずかに聞き取れた単語から「この向こうには行けないのか?」的なことを聞いている、ような?
私はドアの取っ手を引いてガチャガチャさせてから「Закрыт(ザクルイート)」(閉まってるよ)と簡潔に答えました。ご婦人は、ふんふんとうなずいて納得してくれたみたい。やれやれ。
ていうか、そういうのは係の人に聞いてくれよ。通りすがりの東洋人に質問しても正確なところは分からないよー。
しかしこの「Закрыт」この後何回か使ったんですよね。地下鉄の出入り口が今日だけ閉鎖されてるとか、お店が潰れてて開いてないとか。覚えておくと便利な言葉かもしれません。
ちなみに反対の「開いている」は「Oткрыт(アトクルイート)」です。
そうそう忘れちゃならないのが大使の階段です。
わりといい感じに写っていると思うのですが、実物は思ったよりこじんまりしてました。もっとこうバーン!と、映画「市民ケーン」のザナドゥ宮殿みたいなのを想像してた・・・
そしてこのカップル。いなくなってから撮ろうと思っていたら、自撮りしててなかなかどかない。
「とっても素敵ね!」
「君の方が綺麗さ・・・」
みたいにペチャクチャイチャイチャしてる。
しまいにはチュッチュしだしたので、あきらめました。
ここからは、気になった展示物です。
これ何?同じく引っかかっていた連れから「悪魔か何からしい」という情報を得ました。でもまだ謎。
獅子婦人、口に出してみると真珠婦人に響きが似ている。声に出して読みたい日本語です。
この方、あの超有名な「サモトラケのニケ」のお顔だそうです。肩から下と頭部がない、羽根の生えた女性像ですね。どんなのだったっけ?という方は下記サイトをご参照下さい。
けっこう普通の人っぽい、と思ってしまった。
こんなでっかい器で運んでるのがパイナップル1個なの?
甲冑を装着した馬がかっこよすぎた。
単純にあまりの巨大さにテンションが上がったポセイドン。立ち上がったらエルミタージュの天井に頭がつっかえるんじゃないかしら。
厚切りジェイソンの「ホワーイジャパニーズピーポー」にしか見えない。
ロシアまで行ったのにショボイ感想だなーと我ながら思わなくはないですが、自分なりに楽しみました!
付け加えて、展示以外をいくつか。
2階にある空中庭園です。ここにもクリスマスツリーがありました。
エルミタージュで働くおじさんたち。真ん中の人、袖まくってますけど・・・零下で雪降ってるよ?
一服を終え、仕事に戻っていくらしいおじさんたち。愛らしい。
待ち合わせを16時半に設定したため、5時間ほど見学したはずですが、時間は足りなかったです。最後の方は駆け足になるわ、待ち合わせ場所にたどり着けずに迷うわで、汗だくになりました。
行き止まりとか、こっちの階段は2階にしか降りれないよとか、罠が多すぎ。もしかして防犯上、迷路チックにしているのかな・・・涙目で同じ場所をグルグル回る私を、監視員の方たちが静かに見守っていました。一声かけて助けてくれるのは、期待しちゃいけないよね、うん。
ようやく待ち合わせ場所に着いた時には連れはすでに来ていて、時間をつぶしていたそうです。少し休憩してから、ミュージアムショップでエジプト神話に登場する猫の女神様バステトの缶バッチを2つ購入(2個で100ルーブルでした。お値打ち!)、外へ出ました。
すっかり夜になっています。
歩き回ったことだし、お腹もすきました。
ふらっと入ったレストランで、私は運命の出会いをするのでした・・・詳しくは次回!とジャンプ的引きをしてみる。
サンクトペテルブルグ1日目 後編~連れがロシアの攻撃に膝を折る
(前回のおさらい)
ロシアによる、アイスバケツチャレンジもびっくりの頭から氷水をぶっかけられるような手荒い洗礼を受けて、ほうほうのていでホテルにたどり着いた我々。
Liston(誤字ではない)の紅茶で一服し、午後からの散策に向けて英気を養うのであった・・・
連れの持ってきた「るるぶロシア」をめくりながら、お昼ご飯をどうするか、あーでもないこーでもないと相談するのも旅の楽しみです。
伝統的ロシア料理も食べたいけど、まだそれほど2人ともお腹が空いていません。
何か軽いものがあるかなと探していて、ピザとパスタの店「ママ・ローマ」を見つけました。
Restaurants - MAMA ROMA (МАМА РОМА) - настоящий итальянский ресторан!
上記はお店のサイトです。ページの最下部で、イタリア語と英語とロシア語が選択できます。
ロシアでイタリアン?とあなどるなかれ、他ではあまり見かけないサーモンのピザとかめっちゃ食べたい。魚の中で、サーモンが一番好きなんです!
Pizza - MAMA ROMA (МАМА РОМА) - настоящий итальянский ресторан!
メニュー写真、右側の下から3番目です。
英語メニューがあると「るるぶ」に書いてあるし、ここに決めました。
ママ・ローマは、サンクトペテルブルグのメインストリートである、ネフスキー大通りから横道へ入ったところにあるらしく、行きしなに散歩がてら街の様子を見られます。
食後に時間の余裕があれば、私のたっての希望で北極南極博物館に行こうという流れになりました。
北極南極博物館とは、ロシアの極地開拓の歴史について展示してある施設です。いつか極地に行ってみたい私としては、見学せずにおれない場所なのです。
Российский государственный музей Арктики и Антарктики
サイトがロシア語のみであることからお分かりのように、館内の解説もほぼロシア語のみです。大半は意味が分かりませんが、ジオラマの見せ方が面白いですし、実際に極地に滞在した設備を見ると、その心もとなさに「やっぱりロシア人は頑丈だなー」と感心しきりです。
動物の剥製は切ない気持ちになるんですけど、ガラスケースなしのむき出しで間近で見られるのは、ちょっと興奮する・・・ああ我ながら罪深い。
行く先は決まった!さあ出かけよう。
道さえ分かっていれば、あっという間に着くモスクワ鉄道駅。
3日目の夜に、ここの壁を使ってプロジェクション・マッピングやってるのを見ました。
道のちょっと奥まったところに「エロティック・ミュージアム」を発見。
ロシア語が少し分かるがゆえに、いらんことに気がつきました。18歳以上でないと入場できないみたいです。
写真に後ろ姿が写っている金髪美女が中に入っていき、私と連れ&通行人のおじさんが色めきたって、ざわ・・・ざわ・・・しました。
ネフスキー大通りの交差点で信号を渡ります。20メートルは幅がありそうな広い道路です。
ビラを配るクマに出会いました。手元からかいま見える、そこはかとないヒト感。
カメラを構えて「Moжнa(モージナ)?」(いいですか?)と聞くと、快く応じてくれました。
「Спасибо(スパシーバ)!」(ありがとう!)と手を振ったら、振りかえしてくれた。気さくなクマさんです。お嬢さん、お待ちなさいと追いかけては来なかった。
サンクトペテルブルグにも、フィンランド発お洒落デパート「ストックマン」がありました。
お隣の国だから、進出してきたんでしょうか。これも自由化のなせる業ですねー。
フォンタンカ運河に架かるアニチコフ橋です。欄干には人馬の像が置かれています。
近くで見るとこんな感じ。
道路の向こう側の欄干にも、同じ像があります。夕日の逆光でかっこよく撮れました。
フォンタンカ運河。ネヴァ川から水を引いています。
運河沿いにあるストロガノフ宮殿。NHK「テレビでロシア語」で映っていたような気がします。マカロンとかのお菓子みたいな色合いです。ホテルの内装も似たトーンのピンクだったので、ロシア人はこのピンクが好きなのかもしれない。
お察しの通り、ビーフ・ストロガノフを考案した一族の邸宅です。
橋を渡ってから2本目の道を右折し、ワンブロック進むと目指すレストランがあるはずです。
ところが旅の魔力と申しましょうか、実際に歩いた体感と、地図上の縮尺の差異と申しましょうか、そこそこ歩いても目的地が見つからず、間違えて別の店に入ってしまいました。
お姉さんが「Двое(ドゥバヨー)?」と聞いてきて、これは確か「2人」という意味だったぞと覚えていたため「Дa, двое(ダー ドゥバヨー)」(はい、2人です)と答えます。
席に通され、当たり前のようにロシア語のメニューを渡されました。
ですよねー。普通に受け答えたし、ロシアにはアジア系民族もいるから、その辺り出身の人だと思われたんだね。でも申し訳ないがメニューを読み取れるボキャブラリーはないんだ・・・
「Do you have an english menu?」と頼んだら、ちょっと驚いてました。
おやおや?メニューにピザもパスタもない。ここで、店が違うのに気づきました。とはいえ出て行くのもねーとコソコソ相談し、せっかくだからロシア料理を食べようということになりました。
ボルシチと、Уха(ウハー)という白身魚と野菜ベースのあっさりスープ、クリームチーズのパンケーキとチャイを注文しました。
2種類のスープは分け合いました。どっちも素朴な感じで美味しい。パンケーキは、チーズ好きの私にはアリだったけど、連れには受けがいまいち。チャイは日本で飲むのと変わらないかなー。
あ、食べるのに夢中で写真は忘れてます。
店内には私たちの他に客はおらず、店員さんたちはおしゃべりに興じています。厨房からも人が出て来たよ。暇なんだね・・・
この放っておいてくれるラフな感じが心地いい。人によるだろうけど、無言でじっと待機されてるのって見張られてるみたいで落ち着かないんです。適当に力抜いててくれる方が気楽なんですよね。
連れはややお気に召さないようす。呼べばちゃんと来てくれるし、問題ないと思うんだけど「気持ちよく食事する時間を提供するのが仕事だから、接客態度が良いとは言えない」のだそう。
筋違いな意見ではないと思う。ただ、ここは庶民的な食堂という雰囲気&価格帯の店で、高級レストランではないから、人として感じが良ければ充分なんじゃなかろうか。
そう考えてみると、日本の庶民的飲食店で提供されている接客サービスって、異常にハイレベルなんですね。
しかし感じ方はそれこそ人によって全然違うからな、とその時はなんとなく流しましたが、今にして思い返せば、ロシア語でかろうじてコミュニケートできる私と、意思疎通のほとんどできない連れでは、すでに相手側の対応が異なっていたのでしょう。
それに、店員のお姉さんが料理を持ってきてくれたり、取り皿を追加してくれた時に、私はお礼を言っていたけど、連れは特に反応してなかったから、お姉さんのちょっと照れたような可愛らしい微笑みを見てないんですよ。もったいないことしてるわー。
うん、言葉は大事。だけどもっと大事なことはある。
わりとのんびり食事をしていたら、いつのまにか15時半近くになっていました。
腰を上げて、北極南極博物館に向かいます。
外は早くも暗くなり始めていました。
連れがオフラインでも使えるGoogleマップ公式アプリで、サンクトぺテルブルグを含むエリアをダウンロードしておいてくれたので、スムーズにたどり着くことができました。これ、かなり便利です。旅行中にものすごく助けられました。
エリアをダウンロードしてオフラインでナビゲートする - モバイル Google マップ ヘルプ
ネフスキー大通りをモスクワ鉄道駅に向かって戻る途中で、右折してMaрaта通りに入り、400メートルほど進むと、Kузнeчный通りとぶつかる曲がり角に博物館があります。
入館料は大人が280ルーブル、日本円で450円くらいです。窓口で支払う時に、ささやかな揉め事が起きました。
連れの出した5000ルーブル札を受け付けてもらえなかったのです。額が大きすぎると断られるケースは、まれにあります。閉館時間が近かったから、お釣りがなかったのかもしれません。
もっと細かいのないの?と聞くと、さっきの店で使ってしまったとのこと。なんとクレジットカードも使えないと言われました。
窓口のご婦人は、もちろん申し訳なさそうな態度も、この状況を何とかしようという姿勢も見せません。
連れは困りきって、強張った表情を浮かべています。
幸い私が500ルーブル札を持っており、立て替えて入館できました。
さらに、見学する前に上着をクロークにあずけるように指示されました。これはヨーロッパではスタンダードだと思うのですが、海外旅行初心者の連れは初耳だったようです。
厳しい口調で(ロシア語は、そういうふうに聞こえがち)階段を指差して下りるように言われ、よう分からんかったがなんだべな?と思いながら階下に行くと、クロークがありました。コートと荷物をあずけて番号札を受け取り、身軽になって見学です。
まず飛行機がドーン!
何に使われたものか?それは分からない・・・
極地に暮らす動物たちのジオラマは、とても精巧に出来ています。
陸地のペンギンと、水中のペンギンを、真ん中を仕切って見せています。一体一体は小さいんですよー。
立体のセイウチと、背景の絵が、すごくうまく混ざり合っています。
極地調査のジオラマなんて、超寒そう・・・私なら2秒で死ぬわ。
テント?マイナス40℃とかになる土地でテントなの?
ホッキョクグマに襲われたらイチコロだぞ!
時代がもう少し下った、ドーム状居住施設の実物も展示されていましたが、それだって布製なんです。心細いくらい頼りない。
あくまで開拓の歴史の展示ですから、最新のものは置かれていないのでしょう。そもそもそれって軍事機密だろうし。
2階には歴代の極地探検用防護服が並べてあって、展示室中央にはペンギンの剥製が飾られています。
いやすげー可愛いんだよ?近くで見ても羽毛のホワホワ感とか、テラ萌えスと思わないでもない。でもごめん、「一家大虐殺」ていうのが真っ先に思い浮かんだ・・・
どんよりした気持ちで残りの展示を見て回り、だいたい1時間くらいで見終えました。説明をしっかり読めたら、もっと時間がかかりそうです。
出る前に、お手洗いに行くことにしました。せっぱつまってから探しても、日本みたいに手軽に利用できるトイレを見つけるのは難しいですからね。
1階から2階に上がる途中にあるお手洗いに入りました。
そしたら便座がない。これはまあ、予想の範囲内です。でも便座のフタが取り外されて、壁に立てかけられているのはなぜ?理由が分からなくて不気味です。
付け加えて、設置されたゴミ箱にいっぱいトイレットペーパーが入っているのは・・・あれだね、使用後の紙を流しちゃいけないという例のやつだね。空調がしっかりしてるから、アンモニア臭はしないけど。
中腰で用を済ませ、事なきを得た私が報告すると、連れは震えあがっていました。そうか、男性は気がつきにくいかもね。
表に出ると、やっと17時になったくらいだというのに、もう完全に夜でした。
ホテルまで徒歩10分もかからないような距離だったので、のんびり帰ります。
すると、やたらデカい黒い犬が単独で歩いていました。首輪をしているものの、鎖はなく、飼い主らしき人も見当たりません。野良犬にしては栄養状態がよさそうだし、周囲も警戒していません。
触れられそうなほど近くを通り過ぎていきましたが、すごく大人しく、人に馴れている感じがします。
どうやら30メートルばかり前を歩いていた男性が飼い主だったようです。黒犬さんが寄り添って尻尾を振っています。その人の手にも鎖はなく、振り返って黒犬さんが付いてくるのを確かめるようすもなかったから、気がつきませんでした。
その後何回も、こういう場面を見かけたのですが、ロシアでは放し飼い散歩は「あるある」なんでしょうか?情報を求む。
薬局の前を通りがかった時、連れが「薬を買いたい」と言い出しました。風邪を引いたみたいで具合が悪く、喉が痛いそうです。
寄るのは別に構わないけど、昼間の感じで英語が通じない場合は、症状に合わせた薬を買うのは至難の業だぞ・・・
かといって、自力で治せというのも無理な話です。とりあえず入ってみるかと薬局に足を踏み入れましたが、まったく駄目でした。英語はもちろん通じず、面倒くさそうに手を振って追い払われてしまいました。
がっくり肩を落とす私たち。しかしここで諦めては連れが可哀そうです。
「あきらめたらそこで試合終了だよ」って安西先生も言ってたもん。
方策を考えながらホテルに向かっていて、ふと昼間に道を聞いた薬局が目に入りました。
あの店にいた人たちは、一生懸命話を聞いてくれて親切だった。それに一度ホテルに戻って、ネットで単語を調べてメモして伝えれば、どうにかできるかもしれない。
ひらめいたのと同時に、ロシア語で「熱がある」「頭が痛い」と伝える言い方を勉強していたのも思い出しました。そしてそれは持ってきた手帳に書いてある!
さっそくホテルに帰って単語を調べ、発音が悪くても伝わるように、ロシア語で手帳に書きました。
「Я хочу купить лекарство от простуды.(ヤー ハチュー クーピチ リカールストヴァ アト プラストゥーヂ)」
Я хочу=~したい、купить=買う、лекарство от простуды=風邪薬、で「私は風邪薬が買いたいです」になります。
「У меня температура.(ウ ミニャー チンピラトゥーラ)」(熱があります)
「У меня болит голова.(ウ ミニャー バリート ガラヴァー)」(頭が痛いです)
У меня~=私は持っている、という意味で、「熱」を意味する単語「температура」を続ければ「私は熱があります」になります。
У меня болит ~=私は~が痛いです、という意味で、~に体の部位をあらわす単語を入れれば、どこが痛いのか伝えることができます。
痛いのは私ではなく連れなので、「彼」を意味する「У нго」にすればよかった・・・やっぱりちょっとテンパってたんですな。
準備を整え、薬局に出陣です。
昼間のお姉さん、まだいました。「あら?あなたはさっきの」みたいな表情をしています。
薬が欲しい旨を伝え、症状を説明して・・・、喉が痛いって調べるの忘れてた!
そこで「У меня болит~」まで言って、喉をかきむしるような仕草&苦しそうな顔をしてみました。
「Что вы рекомендуете(シトー ヴィー リコメンドゥーイチェ)?」(お勧めは何ですか?)とたたみかけます。
お姉さんは「うーん、そうね」的に首をかしげてから、説明を始めました。ちょっと待って!分かんないから!
慌てて「Посмотреть(パスマトリェーチ)」と言いましたが、これでは「見る、見ます」と言ったことになってしまうため、本当は「Покажите, пожалуйста(パカジーチェ パジャールスタ)」(見せて下さい)と言いたかったんです・・・落ち着いて考えれば出て来たはずなんですけど、焦ってたんですね。
お姉さんは意図をくんでくれて、いくつかの薬をケースから出しながら説明してくれました。
パッケージに絵が描かれているから、どんな薬か想像がつきます。これは助かりました。予想がつくことで、お姉さんの言葉から理解できる単語を拾いやすかった。それに、喉の薬を「タブレット」と言っているように聞こえて、いわゆる錠剤のタブレットをロシア語でもそう表現するんだなーと納得してました。
※正しくは「Taблeтка(タブリェートカ)」だそうです。
解熱効果のある風邪薬と、喉用の錠剤をやっとのことで購入し、「Спасибо!」と告げて店を出ます。お姉さんもホッとした顔で手を振ってくれました。
やりとげた感で私は元気いっぱいですが、具合が悪くなってきた連れはぐったりしています。
しかしながら薬を手に入れたことで少し前向きになり、明日の朝ごはんを買うため、ホテルのすぐ近くにある、23時まで開いている小さなスーパーに寄っていくことにしました。
パンと果物とヨーグルトとチーズ、1リットル入り紙パックのベリージュースを手にレジに並びます。愛想が良いとはけっして言えないお姉さんが、バーコードを通した後に何かをベラベラと訴えてきます。
私が「?」のニュアンスをたたえた表情をしていると、レジ袋を取り出して指差しました。
どうやら「袋はいるのか?」と聞いていたもよう。しかもこの感じだと、袋は有料っぽい。
フフフ、これこそ備えあれば憂いなし。ちゃんとエコバッグを持ってきたんだぜ。
私は「Het」と断りを入れ、エコバッグを取り出しました。お姉さんも納得のごようすで、うなずいています。
違うレジに並んでいる連れも同じことを聞かれるだろうと思い、「袋がいるか聞かれるよ」と教えておきました。
無事に買い物を終えてホテルに帰った時は、さすがに気が抜けてベッドに寝転びました。
連れは早々に薬を飲んでいます。
とにかくゆっくり休んで、明日になって体調が悪化しているようなら、君はホテルで寝ていればいい、私は1人でエルミタージュ美術館に行くから、というふうに話がまとまりました。
連れはそんなに積極的に美術館に行きたがっていたわけではないし、昼ぐらいまで様子を見て、行けそうなら2人で、無理なら1人で出かけることにしました。
なんだかもう、こっちが元気なのが申し訳ないような弱りっぷりです。
「無理はしないでね。それでひどくなったら、余計に手間がかかるからね。積極的に弱音を吐いてね」と伝えて、さっさと寝ました。私も緊張していたのでしょう、目を閉じて数秒で意識が途切れたような感覚です。
「スイッチ切ったみたいに寝た」と後で言われました。
さて次回はエルミタージュ美術館です。
連れは回復できるのか?まだまだお見舞いされるのか?
私はずっと元気でした、とだけはお伝えしておきます。
(追記)
書き忘れていましたが、ロシアの滞在登録についてです。
ビザに記載されている目的地に到着後3営業日以内に滞在登録をしなければならない、という規則がロシアにはあるそうです。
しかし、滞在する都市によって規則が違ったり、3日以上同じ都市に滞在する場合に必要になるから、3日以内ならしなくてもいいとか、いや7日以上滞在する場合に必要なんだとか、情報が錯綜しています。規則が変更されても、周知はされない傾向があるようです。
ただ何らかの手続きは必要みたいですね。今回のサンクトペテルブルグ滞在3日間に関しては、パスポートの写真を撮られただけでした。「パスポートを持っていかなくていいの?」と聞きましたが「これで大丈夫だよ」という返事でした。登録料を要求される場合もあると聞いていましたが、それもなく。ホテルEl Rooms ApartmentsのDmitryさんは良心的な人でよかったけど、謎は残る・・・
また、旅行者にはパスポート携帯義務があり、所持していないのを警察官に見つかったら罰金を払わされる。パスポートを取り上げておいて「ビザの書類に不備があるから、返してほしければ罰金を払え」と言い出す悪徳警官もいるから気をつけるように、という噂も目にします。警察官を見たら逃げたほうがいい、なんてアドバイスまでありました。
これも、呼びとめられることさえ一度もなかったです。運がよかったのでしょうか。警察官はしばしば見かけましたけど、こちらに注意を払ってすらいなかったです。
滞在登録をしなかった時の罰金規定が撤廃されてからは、警察官による不正が激減したという情報も目にしたので、タイミングと運、なんでしょうね。
万が一の不測の事態に備えて、念のため在ロシア日本国大使館領事部が携行案内をしている、悪徳警官に捕まった時に提示して難を逃れるためのメモがダウンロードできる、大使館サイトのURLを付記しておきます。
皆様の旅が、安全で快適なものでありますように。
サンクトペテルブルグ1日目 前編~ロシアの洗礼は手厳しい
ヘルシンキ発サンクトペテルブルグ行き列車「Allegro」に乗るべく、ヘルシンキ中央駅に着いたのは朝の5時45分。
出発が6時12分ですから、少し早かったかも。とはいえホームに行ってみたら、もう列車は来ていました。始発だからかな?
Allegroのチケットは、フィンランド国鉄VRのサイトから直接買いました。
下記のページから、フィンランドとロシアの各都市を結ぶ列車のチケットを購入できます。
VR: Buy train tickets online. See timetables and buy your tickets. - VR
都市名を入力して、日付を選択し、「GET THE PRICE AND BUY A TICKET」のボタンを押すと、購入できるチケットが表示されます。
最初のページで出発/到着時間を選択することもできますが、しなくても大丈夫です。
私はヘルシンキとサンクトペテルブルグを往復するチケットを買いたかったので、「Helsinki」「St. Petersburg (Finljandski)」と入力しました。
「St. Petersburg (Finljandski)」とは、「サンクトペテルブルグのフィンランド鉄道駅」という意味です。ロシアの駅名は行き先が名前になっていますから、サンクトペテルブルグからフィンランドへ行く駅ということになります。
シートはファーストクラスとセカンドクラスから選べます。セカンドクラスでも日本の新幹線みたいな雰囲気で充分くつろげますし、寝台車ならともかく3時間半くらいならセカンドクラスで大丈夫だと思います。
フィンランドからサンクトペテルブルグへ向かう列車は、席の場所も選択できます。サンクトペテルブルグから戻ってくる列車では選択できません。強制的に割り当てられるのが、なんかロシアっぽい気がします。
料金は往復で1万円くらい。国をまたぐと考えたら、かなりリーズナブルです。
日本の代理店を通して購入することもできますが、手数料がかかる分だけ割高になります。区間によってはチケットと手数料がほぼ同じくらいになってしまうこともあり、可能なら自力で購入するのがお勧めです。
購入時には、パスポートに記載された情報が必要です。あらかじめご用意下さい。
支払い方法はカードです。購入手続きが完了すると、メールで領収書兼予約確認書がPDFで送られてきます。プリントアウトするか、データをすぐ見られるようにして持っていくと便利です。
ヨーロッパの多くの国と同様に、VRにも改札はありません。
上記の予約確認書がチケット代わりになりますので、車内の検札ではそれを見せます。
乗り込んでしばらくは車窓が夜のままだから、連れはうとうとし始めました。
私はワクワクとドキドキがあいまって、目が冴えてしまっています。
少し明るくなり始めた頃、フィンランドの出国審査の人がやって来ました。
マッチョでタトゥーの入った兄貴たちに、連れはそうとうビビってました。なかなか動揺が治まらない様子で、「あんな感じの人、けっこういるよ」と言っても「でも国境の審査をする人がタトゥーとか、日本ではありえないし」と納得いってない返事です。
たしかに日本ではその辺厳しいけど、ここは日本じゃないしね・・・公共機関で働いてる人でタトゥー入りって、海外では珍しくないし。警察官でもけっこういるもんね。文化的バックグラウンドが違うんだから、そんなもんかと流せばいいと思うんだが。
どうやら、その辺が不器用な人だというのが、後に分かってきます。
出国審査の後は、ロシアの入国審査です。
軍人感まる出しで、厳しい表情の女性2人がやって来ました。
あらかじめ渡されていた入出国カードとパスポートを手渡します。カードは左右で同じ内容を記入し、片方を入国時、もう片方を出国時に提出します。審査官が真ん中で切り離して、出国用の片割れを返却してくれますので、必ず保管しておいて下さい。
パスポートの写真と実際の顔を照らし合わせるため、顔を上げて見せるように命じられます。何回か見比べた後、審査官が口を開きました。
「How old are you?」
えっと、これはあれですか。東洋人は若く見えるから年齢を疑われるのハードバージョンですか。
自慢ではないですが、私は日本人からも実年齢より若く見られるのです。ましてや西洋人においてをや。・・・うたがわれている。
光りの無いグリーンの瞳、例えて言えば浅田飴のような無機質な瞳で見つめてきます。
「Forty」
重々しく答える私に、「ほほう・・・よくぞ言ったな」という声が聞こえてきそうな、これまた重々しいうなずきを返します。
たんねんにパスポートをチェックしていますが、問題はないはず。ビザだってちゃんと取ったもん。
ついに入国スタンプを押し、入出国カードを切り離そうとした、その時です。
びりっ。
私が、国境審査官が、もう一人の審査官が、連れが、そろって息をのみました。
今、けっこういったよね?半分に切るはずが、4分の3くらいになってるよね?
どうする気だろう、もう一回書けってんなら書くけどさ。そんな気持ちで推移を見守っていたら、破っちまった審査官が目に見えてアワアワしだしました。
まじかー。
同僚の方はあきらかに笑いをこらえています。
あー、やっちゃったね。
どうしよう、これ?
知らんし。
うわー。
的な、目と目のカンバセーションが繰り広げられている。
私も面白くなってきてしまいました。
最終的に「てへぺろ☆」みたいな笑顔とともに、きれいに形が残っている方を返してくれました。
ドジっ娘め!可愛いけど!
さて次は連れのパスポートチェックです。連れは5年用パスポートを取得していて、私の10年用とは色が違います。そこが彼女たちもひっかかったらしく、
「こっち黒いわよ」
「なんで?」
「日本のパスポートは5年用が黒で、10年用は赤なのよ」
「ああー」
みたいな会話を、かろうじて聞き取った単語から推察できました。
連れの入国審査はあっさり終わって、彼女たちはニヤニヤしながら去っていきます。さっきまでの緊張感がほぼゼロになったのはありがたいけどさ。
ひと息ついていると、今度は通関?に当たるのか荷物検査の人が現れました。
でかい&ごつい男性、そしてやっぱり軍人。
「君の荷物はどれだ?」
「これ(棚の上のバックパック)と、これ(手元のバッグ)です」
しばしの思案の後、「そのバッグの中を見せなさい」と命じられました。
脳内ではハートマン軍曹に「Sir, Yes Sir!」と答える気構えで、「Yes」とだけ答えてバッグを開けます。
(ハートマン軍曹って誰?という方は、ぜひ映画「フルメタル・ジャケット」をご覧下さい。戦争と人間の狂気を描いた傑作です)
なんかこう、ごちゃーっと、ニット帽とスヌードとガイドブックとハンカチとティッシュとお菓子が突っ込まれてる、ダメな感じの中身です。
規律正しく整理整頓を旨とする(であろう)軍人さんは、憐れみと蔑みのこもった眼差しを注いでいます。
「OK」閉じろ、と手振りで示しました。
く、くつじょく・・・
連れも同様にバッグの中身を見せ、荷物検査も無事に終了。
ようやく落ち着いて、過ぎていく景色をゆっくり眺められます。
しかしあまり変化がない。荒寥、という表現がぴったりくる原野が、延々と続きます。時折ぽつんと家屋が建っており、(あの家に住む人たちは、日常的な買い物とかどうしているんだろう?まさか自給自足?)という疑問が浮かばざるをえない。
列車で3時間半という、広大なロシアの国土を考えれば短い距離の間でも、驚異的な人口密度の低さと、浩々たる原野を見せつけられました。
こんな厳しい場所で生き抜いてる人たちに、温暖な風土で育った日本人が戦争で勝てるわけないよなー。これだけ土地があったら、収容所なんて作り放題だよなー。などの不穏な感想が去来します。
ああ、緊張がまたこみ上げてきた。
しだいに建物が増え始め、街が姿を現してきます。
デザインそのものは優美なんだけど、メンテナンスが行き届いていないというか、壁が剥がれ落ちてたり、落書きがひどかったり、どこか荒れた印象です。
フィンランドから来たから、よりそう感じるのかもしれません。
やがて、フィンランド鉄道駅に到着しました。
ロシアでは駅は軍事施設に当たるため、写真撮影は基本禁止という噂を聞いていたのですが、特に注意されませんでした。見つからなかっただけかも。
駅の外に出ると、いきなりタクシーの客引きに囲まれます。
わらわら寄ってくる「Taкси(タクシー)?」おじさんたちに、「Het(ニェット)」(ロシア語でNo)と返し、両替所を探します。
さいわい、駅を出てすぐ左手の建物に「Cash Exchange」と書いた看板があり、そこに入りました。
後で分かったのですが、この建物はAllegroに乗るための専用の改札口があるビルで、待合室や売店とともに、両替所も設置されていたのです。
ホテル代も含めて、3万円くらいを両替しました。結果、だいぶ余りましたね。ルーブル安、ありがとう。
ホテルは鉄道駅から離れているため、地下鉄を利用しました。
フィンランド鉄道駅の最寄駅「Площадь Ленина(プローシャチ・レーニナ)」から、ホテルの最寄駅「Площадь Восстания(プローシャチ・ヴァスターニヤ)」までは、1号線で2駅です。
地下鉄の入り口には「Метро(メトロ)」を意味する「M」の文字が大きく掲示されていて分かりやすいです。
地下鉄の入り口近くにたむろするハト。寒さのせいか、それとも栄養が良いのか、ふくふく丸々としています。
窓口で、ロシアの地下鉄用コイン「ジトン」を買います。
ジトンは乗車1回につき1枚必要で、これを改札ゲート右側の穴に入れ、緑のランプが点いたらゲートのバーを向こう側に倒して進みます。何回乗り換えようと、どこまで行こうと、改札から出ない限りは1枚でどこまでも行けます。
ただ時間制限はあった気がしますので、1日中乗り続けるのは無理だったような・・・これはちょっと定かじゃないです。普通に乗る分には、まったく問題ないです。ジトンは戻ってこず、改札を出る時はそのままゲートのバーを倒せば出られるようになっています。
窓口のご婦人が、こちらを見ています。けっして優しい眼差しではありません。
NHKの「テレビでロシア語」で学習した成果を試す時が来た!
ちなみに窓口は全面ガラス張りで、台と接する一部分に、ごくわずかなすき間が開いています。腕も通らないような狭さの穴の下には、えぐるような形でくぼみがあり、そこからお金やジトンのやり取りをします。
防犯対策の本気度がガチです。おそらくこのガラスは防弾なのでしょう・・・
窓口に立ち、通じるかな?と不安に思いつつ「Один жетон, пожалуйста(アジン ジトン パジャールスタ)」(ジトンを1枚下さい)と告げました。
ご婦人は眉一つ動かさず、コンコン、と窓口に貼られた紙を指先で示します。
そこには、いくつかの数字が書かれていました。
大半が読めない。しかしながら、一番下に書かれていた「Жетон 31p」だけは理解できました。これは、ジトンが31ルーブルであるという意味だろう!(ロシア語のアルファベットであるキリル文字では「P」を「アール」と読むので、ルーブルの頭文字は「P」になります)
51ルーブルを渡すと、ジトンとお釣りの20ルーブル硬貨が返ってきました。
買えた!買えたよー!
「Спасибо(スパシーバ)!」(ありがとう!)と言うと、ご婦人は少しだけ眉を動かして答えました。
ちゃんと通じたのが嬉しくて、ご婦人が投げつけるようにジトンを渡したことなど気になりませんでした。というか、窓口の構造上、勢いを付けて滑らせないと届かないから、いささか乱暴な感じになってしまうのも致し方ないのだと思います。
でも連れはものすごく嫌がっていて、最後まで慣れることができなかったです。最終的に、なるべく窓口で買う回数を減らすために、ジトンをまとめ買いするという策を取っていました。
連れに値段を教えて、自力で買うのにチャレンジしてもらいました。ロシア語は話せないにしても、なんとか英語で購入できていました。
今にして思えば、早い段階から少しでもロシア語での挨拶くらいは覚えてもらっておけばよかったですね・・・
当然ながら、カタコトでも自分の国の言葉を話す旅行者と、まったく話さない旅行者とでは、現地の人の対応が全然違ってきますもの。
連れがロシアに対して拒否反応を示す前に、Спасибоだけでも教えておけば、もうちょっと楽しめたんじゃないかなと反省しています。
改札を通り、ホームへと向かいます。
ロシアの地下鉄は深い、そしてエスカレーターは速い。体感で日本の2倍くらいですね。
ロシアの地下鉄のホームは、装飾が美しいことで有名です。各駅ごとにテーマがあり、モスクワでは地下鉄めぐりツアーがあるほどで「無料の美術館」とも言われています。
サンクトペテルブルグはそれに比べれば地味めですが、充分きれいでした。
車両の中は日本と変わらないです。ただし止まる時はけっこうな急停車で、「事故ったのか?」というくらいガコッ!ドコッ!と音がします。要は運転が荒い。
周囲は慣れたもので、ヨロヨロする我らを尻目に、どっしり構えています。
長いエスカレーターを昇り、改札を出て地上へ着きました。
目の前に広場があって、左手はモスクワ鉄道駅、正面にはお洒落デパートがあります。
このデパートには、プラダとか、グッチとかの高級ブランドがテナントに入っていました。日本でいうと高島屋みたいな感じ?
こちらを左手に見ながら、わりと大通りっぽいリゴーフスキー通りを南下します。
微妙にくすんだ色合いの建物と、キリル文字が溢れるロシア感満載の街並み。この時点では、英語表記の案内看板がまったくないことに気づいてはいませんでした。
事前に調べたホテルまでの地図はざっくりしたものでしたが、駅から徒歩5分だというし、地図も住所も書き取ってきたし、すぐに分かるだろうという考えが甘かった・・・
まず大前提として、地図が間違っていました。
もちろん、それらしき建物など見つかりません。
行き過ぎてしまったのに気づいて戻る時に、突然携帯で地図を見せながら男性が話しかけてきました。怒涛のようなロシア語で、何かを必死に質問しているようです。
私たちはバックパックを背負った東洋人の二人連れ、どう考えても旅行客だろう!?
なぜ周りにいくらでもいる地元民に聞かない?見る目がないにもほどがあるだろう!
静かに「Het」と答えた私に、彼は落胆したようすで去っていきます。
がんばれ!青年よ。私もがんばる。
リゴーフスキー通りを何往復もして、自力で見つけるのは無理だと悟ったため、道を尋ねることにしました。
最初に聞いたのは、デパートの警備員さんです。
「Excuse me?」と声をかけましたが、困惑した表情で首を振っています。
もしかして・・・英語が通じないのでは・・・
そこで、おそるおそるロシア語で「Извинйте(イズビニーチェ)」(すみません)と言いました。
すると「Да(ダー)?」(はい?)と聞く態勢になってくれました。
「Скажите, пожалуйста, Где это・・・(スカジーチェ パジャールスタ グジェ エータ)」(教えていただけますか、ここはどこ)と言って、地図上のホテルを指差しました。
「これがリゴーフスキー通り」と、かろうじて分かっている情報を伝えます。
警備員さんは、あっちだよ的に方向を示した後で、いろいろ説明してくれましたが、それが分からない・・・
とりあえず方向は正しかったらしい。それだけでたどり着けるはずもなく、次は薬局に入って道を聞きます。接客業だし、英語が通じるかもという希望を託しました。
しかしここでも、「Excuse me?」には渋い顔&首振り。
またロシア語で同じことを聞きましたが、住所は分からないのよね的な返事。
そこでホテルであると伝えるため、「Гостиница(ガスチーニッツァ)」と言ったら、パッと明るい表情になり、手招きして隣のビルへ連れて行ってくれました。
2階がホテルだというのです。
地図とはまったく場所が違うけど・・・と思いながらも、階段を上がってフロントへ行きました。
ここはEl Rooms Apartmentsですか?と予約したはずのホテル名で尋ねましたが、「Het」が返ってきました。一応、地図を指しながら場所を聞いたけど、「知らない」とのこと。さすがに英語は通じました・・・
重い足取りで階段を下りていると、背の高いお兄さんがホールにいました。めげずに再び道を聞きます。
実はさっきの薬局でのやり取りで、「住所」」が「Адрес(アドリェス)」だろうと掴んでいました。
今度は「Скажите, пожалуйста, Где это адрес?」(教えていただきたいのですが、この住所はどこですか?)と聞きます。
お兄さんは私たちを連れて外へ出て、連れてってくれるのかなーと思いきや、指で地図の形を作りながら一生懸命説明してくれます。
さすがにこの辺りで、地図に書かれている場所が、ホテルが実際にある場所とは違うらしいと理解しました。
なんとなく分かった気がする、とお兄さんにお礼を言って別れましたが、まだ見つけられません。
そこには「ホテルの看板などの分かりやすい目印が出ていない」という第2の罠が潜んでいたのでした。
ゆえに、どれだけそれらしい場所を探してみても、見つかるはずがないのです。
疲れ果てた私の脳裏を、ネットで見たロシアの都市伝説「宿泊料が安いホテルをネットで予約して現地に行ったら、そのホテルは存在せず、ただの民家があった」がグルグルと回り始めます。
最悪、見つからなかったらさっきのホテルに泊まろう・・・そう覚悟を決めつつ、ちょっとレトロな感じの映画館に入り、英語が通じるかもという期待をやっぱり裏切られながらも、マダムに道を尋ねました。
非常につっけんどんな態度でしたが、マダムは住所をご存知のようでした。
ここを出て奥だ、と言葉では分からねど、彼女の身振りで理解しました。
大通りから一歩入った奥の路地は、足を踏み入れるのを躊躇するような雰囲気です。
右手に見えるゲートは左右両方にあって、これが閉じられたら出入りができなくなります。
アスファルトは所々に穴が開いており、建物の壁も壊れて剥がれ落ちている箇所がいくつもあります。言葉を飾らずに表現すればスラムっぽい。
怖い、でも、行くしかない。
どこにもホテルの案内看板はなく、ホテルがありそうな雰囲気でもありません。
これで駄目だったら、さっきのところに行こうと、最後のつもりで車に荷物を積んでいるご夫婦に声をかけました。
さすがにご近所さんだったのか、「この住所ならこの建物よ」と奥さんが前まで連れて行ってくれます。
ひとん家感がハンパないんだが・・・
奥さんはメモ帳に書いた住所を指差して「ここ、ここ」と断言し、行ってしまいました。
とりあえず、ドアに近づきます。
どうやって開けるんだこれは。
手がかりがない。
多分この数字ボタンを押して、どうこうするんだよね?
ここまできたら、もうどうにでもなれ!という気分です。とにかくやたらに押しまくりました。
するとビーッという電子音がして、カギが開いた気配がします。この機を逃してなるものかと、ドアに手をかけると開くではありませんか。
中に入ると、可愛らしい女性が部屋のドアから半身を出して、こちらを訝しげに見ています。
すかさず「Извинйте, Скажите, пожалуйста, это адрес?」(すみません、お尋ねしたいのですが、ここの住所ですか?)とメモ帳を見せて聞きました。
女性は少し表情をやわらげて「Да」と答えました。よかった・・・ここで「Het」と言われたら、泣くとこだったよ。さらに気を緩めずに「Гостиница?」とたたみかけます。
女性はまた「Да」とうなずき、上を指差しました。
そこでやっと、ホテルの住所の中にあった「209」の意味が分かりました。この建物の209号室、つまり2階にあるってことだ。
心の底から「Спасибо!」とお礼を言って、階段を上がりました。
そして現れたのがこのドア。
ホテル・・・なのか?
ようやくたどり着けたと思って安心したのに、またもハンパないひとん家感。
ああ都市伝説が脳内をエンドレスローリング。
もうどうにでもなれ!(2回目)。間違ってたら謝りゃいいんだ!
右上のブザーを押しました。
反応なし。
中で音がした気配もありません。
もう一度押します。
やっぱり反応なし。
心がポキっといく音が聞こえそうです。
やったるわい!とばかりに渾身の力を込めて押し込んでやりました。
とうとうブーッという長い音が鳴り響きました。
ドアが開き、にこやかな男性が現れました。そのまま私たちを招き入れてくれます。
中は広くないものの、ホテルのロビー、みたい?
ひょっとしてビンゴ?
男性が口を開きます。「Are you Emiko?」
キタ―!!!!!!
「イエーーース!」
「Welcome!」
男性はホテルのオーナー、Dmitryさんでした。
「Finally I found it!」(ついに見つけたぜ!)
拳を突き上げて叫びソファに倒れ込む私を、Dmitryさんは微笑んで見ています。
ていうかホテルの看板くらい出しとけや!あとブザー接触悪すぎ!
冷静になって振り返ってみるとそう思うけれど、その時は無事に着いた喜びでいっぱいでした。
お部屋やバスルームの説明を受け、フリーで飲めるコーヒーを勧められ、サンクトペテルブルグの地図をいただき、Dmitryさんに直通でつながる携帯電話も貸してもらいました。
うん、ホスピタリティにあふれた人なんだよ。英語めっちゃ通じるから楽だし。ホテルは清潔で、内装も可愛い。
ピンクを基調にしたカラーリング&花柄の壁紙がガーリー。
ぬいぐるみやオブジェが置かれていたり、
カーテンもシーツもピンクですぜ。
だからもうちょっと地図を正確に、そしてホテルだと外からも分かるようにしてほしい・・・中は快適で素晴らしいんだから。しかもリーズナブルなんだから。
でもだんだん、このピントのはずれ方がロシアなのかもなーと愛おしくなってくるんですよね。
室内には、電子レンジ・冷蔵庫・電気ケトル・テレビを完備。浄水済みのウォーターボトルも置いてくれています。
紅茶のティーバックと小袋入りクリープも置いてありますが、どっちも箱に半分くらいしか入ってなくて使いまわし感が漂います。それはまあ、微笑ましいかな。
紅茶のメーカーが「Lipton」じゃなくて「Liston」なのも、脱力して笑えました。大胆なパクリなのか、それとも地元ブランドなのか。
駅からスムーズに着けば5分の道を、かれこれ1時間弱さまよった私たちは、ひとまずListonを飲んでひと息つくことにしました。
迷っている間、連れは役にこそ立ちませんでしたが、文句をいっさい言わないでくれたので、それだけでずいぶん気が楽でした。何か言われてたら、確実に戦いが勃発していたでしょう。
列車の時間が早かったから、ゆっくり休憩してもまだ13時前です。
そろそろお昼ご飯も食べたいし、軽くぶらつこうかと街へ出ました。
午前中程ではないものの、ロシアは手を緩めることなくジャブを繰り出してくるのでした。
考えてみれば、まだロシアに来て2時間くらいしか経ってない・・・