サンクトペテルブルグ3日目 前編~絶景とグロテスクと学食潜入のジェットコースター
3日目にして空は晴れ。
気候が良いせいか、昨日までより連れが元気です。
気温はマイナス1℃、どうりで暖かいと思ったよーなんて言い合う私たちは、すでに感覚がおかしくなり始めています。
地平線近くの雲にかすかに残る朝焼けが綺麗。
『白い雲の縁にはまだ朝の薔薇色がほのかに残つているやうだつた』
すっかり使い慣れた地下鉄を乗り換えて、5号線のАдмиралтейская(アドミラルチェイスカヤ)で降ります。
まずは歩いてすぐの場所にあるイサーク大聖堂へ向かいました。
イサーク大聖堂の情報が掲載されているサイトです。ロシア語ですが、ご参考までに。
大聖堂と展望台(Colonnade)は別料金になっていますから、窓口や自動券売機でチケットを買う時はお気をつけください。
入り口も別々で、向かって左側は大聖堂へ、右側は展望台へのものです。チケットのバーコードを読み込ませるとバーが動いて中に入れます。
多くの教会が天を突く尖塔を有し、高い天井をステンドグラスや絵画で装飾しているのは、天国を視覚的に体感するための装置なのだそう。
イサーク大聖堂もその例にもれず、内部に足を踏み入れると外界とは隔絶されたバーチャルな極楽空間に包まれます。
上へ上へと吸い込まれそう・・・
360度、どこを見ても荘厳です。
信仰心の無い私でも拝みたくなります。
ポカンと口を開けて天井を見上げ、クルクル回る私を、係員の人が珍しそうに見ていました。
まさに別世界・・・思わず些少ながら寄付をするほどに神聖な雰囲気でした。
ひと回りしてから、聖堂内にあるお土産物屋さんで「観光地によくある名所写真ポストカード」が好きな母のためにサンクトペテルブルグポストカードを購入。
70ルーブルのところ、間違えて1000ルーブルを渡してしまい、売店のお姉さんに舌打ちされてから気づいて慌てて100ルーブルを差し出して、お互いテヘヘと照れ笑いするという一幕はあったものの、問題なく買い物を済ませました。
いったん外へ出て、展望台へ。
扉の奥にある急勾配の螺旋階段は薄暗く、なんか出そう・・・幽閉とか監禁という言葉が頭に浮かびました。長い歴史の間に、1人や2人は亡くなっていそうです。
途中でこんなところもあるし・・・格子の奥には何があるの?隠し部屋?それとも拷問部屋?本で読んだ暗黒の中世の歴史が脳内を駆け巡る。
けっこうな数の階段を息切れしながら上っていくと、
やっと出口です。
これまで上ってきた螺旋階段があるのが中央の建物で、左下隅に写った外階段を上ると展望台に行くことができます。
絶景だー!
イサーク広場に積もった雪で落書きしてるぞ、と角度を変えてみたら星でした。おしゃれなことをしよる・・・
左側に尖塔がちょこんと覗いているのは旧海軍省です。
冷たい風がビュービュー吹いて顔が痛いくらいだったけど、円形の展望台をグルグル周りながら写真を撮りまくりました。
でもなぜか狭い展望台で一度も連れとすれ違わなかったのが不思議。
そして恒例の働くおじさんです。屋根の上に小さくいるの分かりますか?
掃除や修理などを担当する方たちみたいです。
私も屋根の上を歩いてみたかった!
イサーク大聖堂の後は、私が行きたくてたまらなかったクンストカメラ(ドイツ語が語源で珍品コレクション・珍品好きの変人)という別名を持つ、ピョートル大帝記念人類学・民族博物館です。
日露交流を始めとする多種多様な国との交易で得た貴重な資料が収蔵されているのですが、目玉はなんといっても、医学や解剖学に強い関心を持っていたとされるピョートル大帝のコレクション。奇形動物の剥製や、大帝自身が抜いた歯といったグロテスクな収蔵品をこの目で見たかったのです。
連れはグロ耐性に自信がないと申告してきたので、辛くなったらリタイヤしてねと告げて、足取り軽く向かいます。
道すがら、旧海軍省の前を通りました。
内部は見学できないらしいので、外観を眺めただけです。
建物の前は遊歩道を備えた公園になっていました。
お散歩気分で歩いていたら、公園の中をランニングしている男性(またしてもプーチン似)と出くわしました。
こんな雪が残るすべりやすい道だというのに、足取りは乱れることなく、なかなかのスピードで周回しているようでした。
すごいなーと見送ってから、わりとすぐに折り返してきたので、速いわ!と驚く私に、彼はバチコーン☆とウィンクを投げかけ、また風のように去って行きました。
やっぱりロシア人には勝てない・・・肉体と精神の強靭さをまざまざと見せつけられましたわ。
ネヴァ川にかかる宮殿橋でワシーリエフスキー島へ渡れば、クンストカメラはもうすぐです。
ネヴァ川、広い。
川べりにいたカモとカラス。北の国のカラスはグレー混じりのツートンカラー。フィンランドのカラスもそうでした。
ところがここで、持参した地図がざっくりしていたせいで、間違えて手前にある動物学博物館に入ってしまいました。
記念日か何かだったのか入場が無料だったのはラッキーでしたが、通常なら空いているチケット売り場の窓口が閉まっており、入り口も分からずウロウロしていたら、露店でプーチンのTシャツを売ってたお姉さんに「あっちだよ」と教えてもらいました。
それにしてもお土産物屋さんでのプーチン大統領のフューチャーぶりはすごい。顔をドアップにしたプリントに始まり、軍服を着てキメるプーチン、クマに乗るプーチン、などなどハンパないグッズ展開。もちろん小物も各種取り揃えております。プーチンマグカップちょっと欲しかったかも。
日本に置き換えると安倍総理プリントのTシャツか・・・ないわー。
橋を渡ってすぐの所にあるのは動物博物館で、クンストカメラは橋を渡りきったら左折して、さらにワンブロック先を右折した所にあります。ご参考までに。
ここはマンモスのミイラの展示が目玉ではあるのですが、動物たちの生態を剥製を使ってリアルに再現した展示も見ごたえがあります。
見ごたえは、あるのですが・・・あまりに膨大な数の剥製が、何万体というレベルで収蔵されているため、だんだん妄執的というか、収集への執念が恐ろしくなってきます。
こんな海の生き物の展示もあったりして凝ってます。この辺はわりと平和な気持ちで見られる。
亀もいたり。
ハブVSマングースの戦いとか。
メルヘン感のあるコウノトリ親子など、穏当なものもありますが、かなりグロなものもあります。社会見学に来てた子供たちがどよめいてた。
銃弾が撃ち込まれる以外に、どうやったらこんな跡が残るのか分からないガラスの破損を雑にテープで補修してたりして(しかも複数個所あった)、しだいに恐怖感がつのってきます。
これらはごく一部です。とてつもない量で、とてつもない密度の剥製たちに圧倒されてしまい、「みんな全部生きてたのを殺して飾ってるんだよね・・・」と当たり前のことに思いをはせてぐったりしてしまいました。
これだけの数の「死」に囲まれる経験は、そうはないです。
ただすごいもんだというのは確かですから、一見の価値はあると思います。
ここと似た戦慄を味わったのは、地元愛知県は蒲郡市にある竹島ファンタジー館です。
【竹島ファンタジー館】 鉱物・化石・貝のテーマパーク(愛知県蒲郡市竹島)
5500万個の貝で作り上げた展示は、綺麗とかの次元を通り越して異世界感がすごくて、その名も「時空のトンネル」という全面に貝をびっしり敷き詰めたトンネルは、初見の時はマジ悲鳴を上げましたよ・・・気持ち悪くて。巨大な生き物の内臓に飲みこまれる気分を体験できます!
とはいえ、こちらも人生で一度は見ておいた方がいいところだと思います。併設の海鮮お食事処は間違いなく美味しいですし。
何度も各メディアで紹介されている、愛知が誇る珍スポットでございます。
ふらふらと動物学博物館を出た後は、クンストカメラを発見したものの、ここもグロ展示だと知っていたため、ちょっとお昼がてら休憩したいねという話に。食欲を失ってないのは、我ながらさすがです。
ちょうどすぐ近くにサンクトペテルブルグ総合大学があるはずです。「可能なら学食にもぐり込んでご飯を食べてみたい」という連れの希望を叶えるべく、先にそっちへ行くことにしました。
クンストカメラより、もうワンブロック先に大学らしき建物がありました。
しかし大学だけに敷地は広く、ためしに入ってみた建物は入り口にセキュリティがあって警備員さんもおり、学校関係者以外は入れないようになっていました。
やや諦めモードの連れを励まし、学生さんっぽい人の流れに沿っていくと、「Студеит Столовая(ストゥジェント スタローバヤ)」(学生食堂)の文字が!
入り口の辺りでは、工事のおじさんらしき人たちが、たむろして煙草を吸っています。なんだか、部外者でも入れそうです。
注意されたら引き返せばいいべさーとドアを開けると、中は少し広くなっていて隅っこに椅子に座ったおじさんがいました。奥に見える食堂にサクサク歩いて行く私たちに特に視線を向けるわけでもなく、簡単に突破できました。
お昼時を少しずれていたせいか、6割くらいの席が埋まっている感じで、私たちをチラリと見る人がいたけど、そんなに注目はされていませんでした。連れの調べによると、サンクトペテルブルグ総合大学にはアジア系の留学生が多くいるそうなので、見慣れているのかもしれません。
欲しいものをトレイに乗せ、最後に会計するビュッフェスタイル?というのでしょうか、学食だなって雰囲気が懐かしいです。
おかずやスープ、ピラフを選ぶことができて、ケースの向こう側で待機しているお姉さんに頼む必要があります。
これは食いしん坊の面目躍如といいましょうか、食べ物の名前のロシア語はそこそこ頭に入っております。
Салат(サラート)/サラダとМясо(ミャーサ)/お肉、Плов(プローブ)/ピラフとСуп(スープ)/スープを選んで滞りなく注文できました。
連れの分も代わりに注文し、無造作に置かれていた謎のСок(ソーク)/ジュース(レモネードみたいだった)もトレイに乗せて、お会計をしました。
お金を出す時にまごついてしまったのですが、レジのお姉さんが「貸してみ」と手を出してくれて、必要なだけ取ってお釣りを返してくれました。その間ニコリともしないけど、あれはロシアン・ツンデレだと思う。なにげに親切なんだよなー。
大学内では、さすがに写真を撮るのははばかられたので画像はありませんが、いかにも学食っぽい、大量に作ったんだろうなという大雑把で素朴な味わいでした。学生時代を思い出して、ほっこりしたのもあったからか、そこそこ美味しく食べられました。
予想通り、先ほどの工事のおじさんも食事をしていて、一般に開放されているようでした。連れが言うには、けっこうチラ見されてたらしいけど、ご飯に夢中で全然気づかなかったわー(にぶい)。
食堂ではフリーWifiが使えて、潜入成功のツイートをしたり、のんびり休憩ができました。
やたらと密度の濃い3日目は、これでようやく半日。
次回は待望のクンストカメラと、寿司バーの報告です。