サンクトペテルブルグ1日目 前編~ロシアの洗礼は手厳しい

ヘルシンキサンクトペテルブルグ行き列車「Allegro」に乗るべく、ヘルシンキ中央駅に着いたのは朝の5時45分。

出発が6時12分ですから、少し早かったかも。とはいえホームに行ってみたら、もう列車は来ていました。始発だからかな?

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Allegroのチケットは、フィンランド国鉄VRのサイトから直接買いました。

下記のページから、フィンランドとロシアの各都市を結ぶ列車のチケットを購入できます。

VR: Buy train tickets online. See timetables and buy your tickets. - VR

都市名を入力して、日付を選択し、「GET THE PRICE AND BUY A TICKET」のボタンを押すと、購入できるチケットが表示されます。

最初のページで出発/到着時間を選択することもできますが、しなくても大丈夫です。

私はヘルシンキサンクトペテルブルグを往復するチケットを買いたかったので、「Helsinki」「St. Petersburg (Finljandski)」と入力しました。

「St. Petersburg (Finljandski)」とは、「サンクトペテルブルグフィンランド鉄道駅」という意味です。ロシアの駅名は行き先が名前になっていますから、サンクトペテルブルグからフィンランドへ行く駅ということになります。

シートはファーストクラスとセカンドクラスから選べます。セカンドクラスでも日本の新幹線みたいな雰囲気で充分くつろげますし、寝台車ならともかく3時間半くらいならセカンドクラスで大丈夫だと思います。

フィンランドからサンクトペテルブルグへ向かう列車は、席の場所も選択できます。サンクトペテルブルグから戻ってくる列車では選択できません。強制的に割り当てられるのが、なんかロシアっぽい気がします。

料金は往復で1万円くらい。国をまたぐと考えたら、かなりリーズナブルです。

日本の代理店を通して購入することもできますが、手数料がかかる分だけ割高になります。区間によってはチケットと手数料がほぼ同じくらいになってしまうこともあり、可能なら自力で購入するのがお勧めです。

購入時には、パスポートに記載された情報が必要です。あらかじめご用意下さい。

支払い方法はカードです。購入手続きが完了すると、メールで領収書兼予約確認書がPDFで送られてきます。プリントアウトするか、データをすぐ見られるようにして持っていくと便利です。

 ヨーロッパの多くの国と同様に、VRにも改札はありません。

上記の予約確認書がチケット代わりになりますので、車内の検札ではそれを見せます。

 

乗り込んでしばらくは車窓が夜のままだから、連れはうとうとし始めました。

私はワクワクとドキドキがあいまって、目が冴えてしまっています。

少し明るくなり始めた頃、フィンランドの出国審査の人がやって来ました。

 マッチョでタトゥーの入った兄貴たちに、連れはそうとうビビってました。なかなか動揺が治まらない様子で、「あんな感じの人、けっこういるよ」と言っても「でも国境の審査をする人がタトゥーとか、日本ではありえないし」と納得いってない返事です。

たしかに日本ではその辺厳しいけど、ここは日本じゃないしね・・・公共機関で働いてる人でタトゥー入りって、海外では珍しくないし。警察官でもけっこういるもんね。文化的バックグラウンドが違うんだから、そんなもんかと流せばいいと思うんだが。

どうやら、その辺が不器用な人だというのが、後に分かってきます。

出国審査の後は、ロシアの入国審査です。

軍人感まる出しで、厳しい表情の女性2人がやって来ました。

あらかじめ渡されていた入出国カードとパスポートを手渡します。カードは左右で同じ内容を記入し、片方を入国時、もう片方を出国時に提出します。審査官が真ん中で切り離して、出国用の片割れを返却してくれますので、必ず保管しておいて下さい。

パスポートの写真と実際の顔を照らし合わせるため、顔を上げて見せるように命じられます。何回か見比べた後、審査官が口を開きました。

「How old are you?」

えっと、これはあれですか。東洋人は若く見えるから年齢を疑われるのハードバージョンですか。

自慢ではないですが、私は日本人からも実年齢より若く見られるのです。ましてや西洋人においてをや。・・・うたがわれている。

光りの無いグリーンの瞳、例えて言えば浅田飴のような無機質な瞳で見つめてきます。

株式会社浅田飴

「Forty」

重々しく答える私に、「ほほう・・・よくぞ言ったな」という声が聞こえてきそうな、これまた重々しいうなずきを返します。

たんねんにパスポートをチェックしていますが、問題はないはず。ビザだってちゃんと取ったもん。

ついに入国スタンプを押し、入出国カードを切り離そうとした、その時です。

びりっ。

私が、国境審査官が、もう一人の審査官が、連れが、そろって息をのみました。

今、けっこういったよね?半分に切るはずが、4分の3くらいになってるよね?

どうする気だろう、もう一回書けってんなら書くけどさ。そんな気持ちで推移を見守っていたら、破っちまった審査官が目に見えてアワアワしだしました。

まじかー。

同僚の方はあきらかに笑いをこらえています。

あー、やっちゃったね。

どうしよう、これ?

知らんし。

うわー。

的な、目と目のカンバセーションが繰り広げられている。

私も面白くなってきてしまいました。

最終的に「てへぺろ☆」みたいな笑顔とともに、きれいに形が残っている方を返してくれました。

ドジっ娘め!可愛いけど!

さて次は連れのパスポートチェックです。連れは5年用パスポートを取得していて、私の10年用とは色が違います。そこが彼女たちもひっかかったらしく、

「こっち黒いわよ」

「なんで?」

「日本のパスポートは5年用が黒で、10年用は赤なのよ」

「ああー」

みたいな会話を、かろうじて聞き取った単語から推察できました。

連れの入国審査はあっさり終わって、彼女たちはニヤニヤしながら去っていきます。さっきまでの緊張感がほぼゼロになったのはありがたいけどさ。

ひと息ついていると、今度は通関?に当たるのか荷物検査の人が現れました。

でかい&ごつい男性、そしてやっぱり軍人。

「君の荷物はどれだ?」

「これ(棚の上のバックパック)と、これ(手元のバッグ)です」

しばしの思案の後、「そのバッグの中を見せなさい」と命じられました。

脳内ではハートマン軍曹に「Sir, Yes Sir!」と答える気構えで、「Yes」とだけ答えてバッグを開けます。

(ハートマン軍曹って誰?という方は、ぜひ映画「フルメタル・ジャケット」をご覧下さい。戦争と人間の狂気を描いた傑作です)

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なんかこう、ごちゃーっと、ニット帽とスヌードとガイドブックとハンカチとティッシュとお菓子が突っ込まれてる、ダメな感じの中身です。

規律正しく整理整頓を旨とする(であろう)軍人さんは、憐れみと蔑みのこもった眼差しを注いでいます。

OK」閉じろ、と手振りで示しました。

く、くつじょく・・・

連れも同様にバッグの中身を見せ、荷物検査も無事に終了。

ようやく落ち着いて、過ぎていく景色をゆっくり眺められます。

しかしあまり変化がない。荒寥、という表現がぴったりくる原野が、延々と続きます。時折ぽつんと家屋が建っており、(あの家に住む人たちは、日常的な買い物とかどうしているんだろう?まさか自給自足?)という疑問が浮かばざるをえない。

列車で3時間半という、広大なロシアの国土を考えれば短い距離の間でも、驚異的な人口密度の低さと、浩々たる原野を見せつけられました。

こんな厳しい場所で生き抜いてる人たちに、温暖な風土で育った日本人が戦争で勝てるわけないよなー。これだけ土地があったら、収容所なんて作り放題だよなー。などの不穏な感想が去来します。

ああ、緊張がまたこみ上げてきた。

しだいに建物が増え始め、街が姿を現してきます。

デザインそのものは優美なんだけど、メンテナンスが行き届いていないというか、壁が剥がれ落ちてたり、落書きがひどかったり、どこか荒れた印象です。

フィンランドから来たから、よりそう感じるのかもしれません。

やがて、フィンランド鉄道駅に到着しました。

ロシアでは駅は軍事施設に当たるため、写真撮影は基本禁止という噂を聞いていたのですが、特に注意されませんでした。見つからなかっただけかも。

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駅の外に出ると、いきなりタクシーの客引きに囲まれます。

わらわら寄ってくる「Taкси(タクシー)?」おじさんたちに、「Het(ニェット)」(ロシア語でNo)と返し、両替所を探します。

さいわい、駅を出てすぐ左手の建物に「Cash Exchange」と書いた看板があり、そこに入りました。

後で分かったのですが、この建物はAllegroに乗るための専用の改札口があるビルで、待合室や売店とともに、両替所も設置されていたのです。

ホテル代も含めて、3万円くらいを両替しました。結果、だいぶ余りましたね。ルーブル安、ありがとう。

ホテルは鉄道駅から離れているため、地下鉄を利用しました。

フィンランド鉄道駅の最寄駅「Площадь Ленина(プローシャチ・レーニナ)」から、ホテルの最寄駅「Площадь Восстания(プローシャチ・ヴァスターニヤ)」までは、1号線で2駅です。

地下鉄の入り口には「Метро(メトロ)」を意味する「M」の文字が大きく掲示されていて分かりやすいです。

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地下鉄の入り口近くにたむろするハト。寒さのせいか、それとも栄養が良いのか、ふくふく丸々としています。

窓口で、ロシアの地下鉄用コイン「ジトン」を買います。

ジトンは乗車1回につき1枚必要で、これを改札ゲート右側の穴に入れ、緑のランプが点いたらゲートのバーを向こう側に倒して進みます。何回乗り換えようと、どこまで行こうと、改札から出ない限りは1枚でどこまでも行けます。

ただ時間制限はあった気がしますので、1日中乗り続けるのは無理だったような・・・これはちょっと定かじゃないです。普通に乗る分には、まったく問題ないです。ジトンは戻ってこず、改札を出る時はそのままゲートのバーを倒せば出られるようになっています。

窓口のご婦人が、こちらを見ています。けっして優しい眼差しではありません。

NHKの「テレビでロシア語」で学習した成果を試す時が来た!

ちなみに窓口は全面ガラス張りで、台と接する一部分に、ごくわずかなすき間が開いています。腕も通らないような狭さの穴の下には、えぐるような形でくぼみがあり、そこからお金やジトンのやり取りをします。

防犯対策の本気度がガチです。おそらくこのガラスは防弾なのでしょう・・・

窓口に立ち、通じるかな?と不安に思いつつ「Один жетон, пожалуйста(アジン ジトン パジャールスタ)」(ジトンを1枚下さい)と告げました。

ご婦人は眉一つ動かさず、コンコン、と窓口に貼られた紙を指先で示します。

そこには、いくつかの数字が書かれていました。

大半が読めない。しかしながら、一番下に書かれていた「Жетон 31p」だけは理解できました。これは、ジトンが31ルーブルであるという意味だろう!(ロシア語のアルファベットであるキリル文字では「P」を「アール」と読むので、ルーブルの頭文字は「P」になります)

51ルーブルを渡すと、ジトンとお釣りの20ルーブル硬貨が返ってきました。

買えた!買えたよー!

「Спасибо(スパシーバ)!」(ありがとう!)と言うと、ご婦人は少しだけ眉を動かして答えました。

ちゃんと通じたのが嬉しくて、ご婦人が投げつけるようにジトンを渡したことなど気になりませんでした。というか、窓口の構造上、勢いを付けて滑らせないと届かないから、いささか乱暴な感じになってしまうのも致し方ないのだと思います。

でも連れはものすごく嫌がっていて、最後まで慣れることができなかったです。最終的に、なるべく窓口で買う回数を減らすために、ジトンをまとめ買いするという策を取っていました。

連れに値段を教えて、自力で買うのにチャレンジしてもらいました。ロシア語は話せないにしても、なんとか英語で購入できていました。

今にして思えば、早い段階から少しでもロシア語での挨拶くらいは覚えてもらっておけばよかったですね・・・

当然ながら、カタコトでも自分の国の言葉を話す旅行者と、まったく話さない旅行者とでは、現地の人の対応が全然違ってきますもの。

連れがロシアに対して拒否反応を示す前に、Спасибоだけでも教えておけば、もうちょっと楽しめたんじゃないかなと反省しています。

 

改札を通り、ホームへと向かいます。

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ロシアの地下鉄は深い、そしてエスカレーターは速い。体感で日本の2倍くらいですね。

ロシアの地下鉄のホームは、装飾が美しいことで有名です。各駅ごとにテーマがあり、モスクワでは地下鉄めぐりツアーがあるほどで「無料の美術館」とも言われています。

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サンクトペテルブルグはそれに比べれば地味めですが、充分きれいでした。

車両の中は日本と変わらないです。ただし止まる時はけっこうな急停車で、「事故ったのか?」というくらいガコッ!ドコッ!と音がします。要は運転が荒い。

周囲は慣れたもので、ヨロヨロする我らを尻目に、どっしり構えています。

長いエスカレーターを昇り、改札を出て地上へ着きました。

目の前に広場があって、左手はモスクワ鉄道駅、正面にはお洒落デパートがあります。

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このデパートには、プラダとか、グッチとかの高級ブランドがテナントに入っていました。日本でいうと高島屋みたいな感じ?

こちらを左手に見ながら、わりと大通りっぽいリゴーフスキー通りを南下します。

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微妙にくすんだ色合いの建物と、キリル文字が溢れるロシア感満載の街並み。この時点では、英語表記の案内看板がまったくないことに気づいてはいませんでした。

事前に調べたホテルまでの地図はざっくりしたものでしたが、駅から徒歩5分だというし、地図も住所も書き取ってきたし、すぐに分かるだろうという考えが甘かった・・・

まず大前提として、地図が間違っていました。

もちろん、それらしき建物など見つかりません。

行き過ぎてしまったのに気づいて戻る時に、突然携帯で地図を見せながら男性が話しかけてきました。怒涛のようなロシア語で、何かを必死に質問しているようです。

私たちはバックパックを背負った東洋人の二人連れ、どう考えても旅行客だろう!?

なぜ周りにいくらでもいる地元民に聞かない?見る目がないにもほどがあるだろう!

静かに「Het」と答えた私に、彼は落胆したようすで去っていきます。

がんばれ!青年よ。私もがんばる。

リゴーフスキー通りを何往復もして、自力で見つけるのは無理だと悟ったため、道を尋ねることにしました。

最初に聞いたのは、デパートの警備員さんです。

「Excuse me?」と声をかけましたが、困惑した表情で首を振っています。

もしかして・・・英語が通じないのでは・・・

そこで、おそるおそるロシア語で「Извинйте(イズビニーチェ)」(すみません)と言いました。

すると「Да(ダー)?」(はい?)と聞く態勢になってくれました。

「Скажите, пожалуйста, Где это・・・(スカジーチェ パジャールスタ グジェ エータ)」(教えていただけますか、ここはどこ)と言って、地図上のホテルを指差しました。

「これがリゴーフスキー通り」と、かろうじて分かっている情報を伝えます。

警備員さんは、あっちだよ的に方向を示した後で、いろいろ説明してくれましたが、それが分からない・・・

とりあえず方向は正しかったらしい。それだけでたどり着けるはずもなく、次は薬局に入って道を聞きます。接客業だし、英語が通じるかもという希望を託しました。

しかしここでも、「Excuse me?」には渋い顔&首振り。

またロシア語で同じことを聞きましたが、住所は分からないのよね的な返事。

そこでホテルであると伝えるため、「Гостиница(ガスチーニッツァ)」と言ったら、パッと明るい表情になり、手招きして隣のビルへ連れて行ってくれました。

2階がホテルだというのです。

地図とはまったく場所が違うけど・・・と思いながらも、階段を上がってフロントへ行きました。

ここはEl Rooms Apartmentsですか?と予約したはずのホテル名で尋ねましたが、「Het」が返ってきました。一応、地図を指しながら場所を聞いたけど、「知らない」とのこと。さすがに英語は通じました・・・

重い足取りで階段を下りていると、背の高いお兄さんがホールにいました。めげずに再び道を聞きます。

実はさっきの薬局でのやり取りで、「住所」」が「Адрес(アドリェス)」だろうと掴んでいました。

今度は「Скажите, пожалуйста, Где это адрес?」(教えていただきたいのですが、この住所はどこですか?)と聞きます。

お兄さんは私たちを連れて外へ出て、連れてってくれるのかなーと思いきや、指で地図の形を作りながら一生懸命説明してくれます。

さすがにこの辺りで、地図に書かれている場所が、ホテルが実際にある場所とは違うらしいと理解しました。

なんとなく分かった気がする、とお兄さんにお礼を言って別れましたが、まだ見つけられません。

そこには「ホテルの看板などの分かりやすい目印が出ていない」という第2の罠が潜んでいたのでした。

ゆえに、どれだけそれらしい場所を探してみても、見つかるはずがないのです。

疲れ果てた私の脳裏を、ネットで見たロシアの都市伝説「宿泊料が安いホテルをネットで予約して現地に行ったら、そのホテルは存在せず、ただの民家があった」がグルグルと回り始めます。

最悪、見つからなかったらさっきのホテルに泊まろう・・・そう覚悟を決めつつ、ちょっとレトロな感じの映画館に入り、英語が通じるかもという期待をやっぱり裏切られながらも、マダムに道を尋ねました。

非常につっけんどんな態度でしたが、マダムは住所をご存知のようでした。

ここを出て奥だ、と言葉では分からねど、彼女の身振りで理解しました。

大通りから一歩入った奥の路地は、足を踏み入れるのを躊躇するような雰囲気です。

 

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右手に見えるゲートは左右両方にあって、これが閉じられたら出入りができなくなります。

アスファルトは所々に穴が開いており、建物の壁も壊れて剥がれ落ちている箇所がいくつもあります。言葉を飾らずに表現すればスラムっぽい。

怖い、でも、行くしかない。

どこにもホテルの案内看板はなく、ホテルがありそうな雰囲気でもありません。

これで駄目だったら、さっきのところに行こうと、最後のつもりで車に荷物を積んでいるご夫婦に声をかけました。

さすがにご近所さんだったのか、「この住所ならこの建物よ」と奥さんが前まで連れて行ってくれます。

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ひとん家感がハンパないんだが・・・

奥さんはメモ帳に書いた住所を指差して「ここ、ここ」と断言し、行ってしまいました。

とりあえず、ドアに近づきます。

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どうやって開けるんだこれは。

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手がかりがない。

多分この数字ボタンを押して、どうこうするんだよね?

ここまできたら、もうどうにでもなれ!という気分です。とにかくやたらに押しまくりました。

するとビーッという電子音がして、カギが開いた気配がします。この機を逃してなるものかと、ドアに手をかけると開くではありませんか。

中に入ると、可愛らしい女性が部屋のドアから半身を出して、こちらを訝しげに見ています。

すかさず「Извинйте, Скажите, пожалуйста, это адрес?」(すみません、お尋ねしたいのですが、ここの住所ですか?)とメモ帳を見せて聞きました。

女性は少し表情をやわらげて「Да」と答えました。よかった・・・ここで「Het」と言われたら、泣くとこだったよ。さらに気を緩めずに「Гостиница?」とたたみかけます。

女性はまた「Да」とうなずき、上を指差しました。

そこでやっと、ホテルの住所の中にあった「209」の意味が分かりました。この建物の209号室、つまり2階にあるってことだ。

心の底から「Спасибо!」とお礼を言って、階段を上がりました。

そして現れたのがこのドア。

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ホテル・・・なのか?

ようやくたどり着けたと思って安心したのに、またもハンパないひとん家感。

ああ都市伝説が脳内をエンドレスローリング。

もうどうにでもなれ!(2回目)。間違ってたら謝りゃいいんだ!

右上のブザーを押しました。

反応なし。

中で音がした気配もありません。

もう一度押します。

やっぱり反応なし。

心がポキっといく音が聞こえそうです。

やったるわい!とばかりに渾身の力を込めて押し込んでやりました。

とうとうブーッという長い音が鳴り響きました。

ドアが開き、にこやかな男性が現れました。そのまま私たちを招き入れてくれます。

中は広くないものの、ホテルのロビー、みたい?

ひょっとしてビンゴ?

男性が口を開きます。「Are you Emiko?」

キタ―!!!!!!

「イエーーース!」

「Welcome!」

男性はホテルのオーナー、Dmitryさんでした。

「Finally I found it!」(ついに見つけたぜ!)

拳を突き上げて叫びソファに倒れ込む私を、Dmitryさんは微笑んで見ています。

ていうかホテルの看板くらい出しとけや!あとブザー接触悪すぎ!

冷静になって振り返ってみるとそう思うけれど、その時は無事に着いた喜びでいっぱいでした。

お部屋やバスルームの説明を受け、フリーで飲めるコーヒーを勧められ、サンクトペテルブルグの地図をいただき、Dmitryさんに直通でつながる携帯電話も貸してもらいました。

うん、ホスピタリティにあふれた人なんだよ。英語めっちゃ通じるから楽だし。ホテルは清潔で、内装も可愛い。

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ピンクを基調にしたカラーリング&花柄の壁紙がガーリー。

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ぬいぐるみやオブジェが置かれていたり、

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カーテンもシーツもピンクですぜ。

だからもうちょっと地図を正確に、そしてホテルだと外からも分かるようにしてほしい・・・中は快適で素晴らしいんだから。しかもリーズナブルなんだから。

でもだんだん、このピントのはずれ方がロシアなのかもなーと愛おしくなってくるんですよね。

室内には、電子レンジ・冷蔵庫・電気ケトル・テレビを完備。浄水済みのウォーターボトルも置いてくれています。

紅茶のティーバックと小袋入りクリープも置いてありますが、どっちも箱に半分くらいしか入ってなくて使いまわし感が漂います。それはまあ、微笑ましいかな。

紅茶のメーカーが「Lipton」じゃなくて「Liston」なのも、脱力して笑えました。大胆なパクリなのか、それとも地元ブランドなのか。

 

駅からスムーズに着けば5分の道を、かれこれ1時間弱さまよった私たちは、ひとまずListonを飲んでひと息つくことにしました。

迷っている間、連れは役にこそ立ちませんでしたが、文句をいっさい言わないでくれたので、それだけでずいぶん気が楽でした。何か言われてたら、確実に戦いが勃発していたでしょう。

列車の時間が早かったから、ゆっくり休憩してもまだ13時前です。

そろそろお昼ご飯も食べたいし、軽くぶらつこうかと街へ出ました。

午前中程ではないものの、ロシアは手を緩めることなくジャブを繰り出してくるのでした。

考えてみれば、まだロシアに来て2時間くらいしか経ってない・・・