ヘルシンキ2日目 後編~動物園はどこかせつない

(前回のおさらい)

ヘルシンキには、古本の妖精(※おじさん)がいる。

 

そろそろお昼近くになることだし、動物園に行って中で何か食べようかなんて話しながら駅へ向かいます。

駅前には、毎年恒例のスケートリンクが作成されていました。

f:id:mikawayaemi:20160414214300j:plain

冬になるとヘルシンキ中央駅の広場に作られます。貸しスケート靴があれば、やってみたいなー。

 

ヘルシンキ動物園(Korkeasaari)への主なルートは2つ、フェリーまたはバスです。

フェリーは5月から9月まで運航しており、港のマーケット広場と、ハカニエミから乗ることができます。

しかし私たちが滞在していたのは12月。もう一つの方法、バスを利用しました。

ヘルシンキ中央駅の3番乗り場から出る16番バスに乗ると、20分くらいで到着します。

以下は16番バスの時刻表です。

HSL - Timetables - Helsinki 16

フィンランド語ですが、左側が駅からの時刻表で、右側が動物園からの時刻表です。上段が平日、下段が土日です。

動物園は終点にありますので、降り間違える心配はないと思います。

チケットは乗車時に運転手さんから買えます。行き先を「I would like to go to Helsinki zoo」と告げると料金を教えてくれます。だいたい5ユーロくらいだったような・・・。帰りは「I would like to go to Helsinki central station」と伝えれば大丈夫。

 

動物園は1年中開園していますが、クリスマスイブだけはお休みなので、ご注意を。

オープン時間は

1月~3月が10時から16時

4月が10時から18時

5月~8月が10時から20時

※ただし6月の夏至祭イブには、10時から17時に短縮されます。

9月が10時から18時

※今年は「Cats Night(猫たちの夕べ)」というイベントがあり、16時から24時までオープンしているようです。

10月~12月が10時から16時

※今年は10月4日に、10時から18時まで無料で入園できるイベントがあるようです。創立記念日的なもの?と推測しています。

最新情報は、公式サイトでご確認下さい。

Korkeasaari

チケット代は、年齢によって分かれています。成人は12ユーロ、4歳以下は無料、4歳から17歳は6ユーロ、学割&シニア割が適用される方は8ユーロです。

ヘルシンキカードを提示すると、成人は2ユーロ・子供は1ユーロを割り引きしてくれます。

ヘルシンキカードとは、ヘルシンキ市内の公共交通機関が乗り放題に、市内の美術館や博物館の入場料も無料になる、ツーリストには便利なカードです。その他にも一部のレストランで割引特典が利用できます。

24時間、48時間、72時間の3種類から選べます。それだけ特典があるからには値段もそれなりですが、長期間のカードほどお得になっています。特に、美術館・博物館を訪れるのが目的であればマストだと思います。

24時間は44ユーロ、48時間は54ユーロ、72時間は64ユーロです(すべて大人料金)。子供料金(7歳~16歳)は、この半額になります。

ツーリストインフォメーションで買うことができます。

インフォメーションの場所は、こちらからどうぞ。

Tourist Information | Visit Helsinki : ヘルシンキ市の公式観光情報サイト

こちらのサイトからは、事前にオンライン購入が可能です。(英語サイトです)

Home - Helsinki Card

 

ポクポクとバスに揺られ、街を抜けて海辺に着きます。 潮の香りは、それほど強くありません。

チケット売り場のさわやかイケメンが、「そこにあるマップを持って行ってね」と勧めてくれました。

フィンランド語とスウェーデン語しかないけどね!

海に架かる長い橋を渡れば、木彫りの熊(本格派)が出迎えてくれます。

f:id:mikawayaemi:20160414234548j:plain

がおー、でかいぞー。

でも角度を変えると「シェー」みたいに見えるよ。

f:id:mikawayaemi:20160414235110j:plain

すぐ近くに存在感ありすぎのトカゲ?がいて、「どういうことかしら・・・」と戸惑わされます。

f:id:mikawayaemi:20160414235411j:plain

なぜ君はここに?

 島が動物園になっていますから、自然な起伏があって、見て回るだけでけっこういい運動になります。

しばらく丘を進むと鳥ゾーンです。フクロウが冬毛ふわっふわで、とても可愛い。この辺りは興奮しすぎて写真を撮るのを忘れています。

それから、わりと無造作にごちゃっといるウサギゾーン。

少し坂を上るとガラスの大きな温室があり、中は熱帯の生き物ゾーンです。

自動ドアが開くと、もわっと湿気を含んだ暖かい空気と獣くさい匂いに包まれます。

おお、これこれ。動物園はこうじゃないと。

かなり高さのあるガラスの向こうで、猿たちが縦横無尽に飛び回っています。一定間隔を壁で仕切られていますが、上の方に穴があって、すべてつながっているみたい。

鳥たちのゲージは、つかまれるように網になっているので、そのぶん鳴き声がダイレクトに聞こえます。グギャーギョエーケッケッケッケッ・・・なんだかワクワクしてきます。南国の花みたいに鮮やかな羽根の色が、わさわさ生えた植物の間からのぞくのが美しく楽しい。

スロープを下りた半地下は爬虫類ゾーンです。

f:id:mikawayaemi:20160416031625j:plain

ピクリとも動かないワニ。至近距離で見つめあえます。

スロープの先にはまた別の部屋があり、どういう区分かは分かりませんが、もこっとした小さな生き物たちがいました。

f:id:mikawayaemi:20160416040211j:plain

「高原の哲学者」とも称される、思慮深げに空を見つめるナキウサギ。意味ありげなたたずまいは、名優モーガン=フリーマンに匹敵すると思われます。

f:id:mikawayaemi:20160416040440j:plain

この子がなんなのかは分からないけど、おしりが可愛いのでそれだけでオッケー。

f:id:mikawayaemi:20160416040812j:plain

やっとこっち見てくれた!

ハアハア・・・可愛すぎるだろ!

長時間の興奮状態が続いたため、かなりお腹が空いてしまいました。

ここらでお昼ご飯です。温室の近くにあるレストランに入りました。

休憩所を兼ねているようで、入ってすぐは机とイスが並んでいるだけの部屋です。奥に進んでいくとビュッフェ形式のレストランがあり、好きなものをピックアップしてレジに持っていくスタイルみたいです。

ビュッフェが狭いわりに、店自体は広かったので、もしかしたら夏季のオンシーズンには違った営業スタイルを取っているのかも。

f:id:mikawayaemi:20160416041824j:plain

なにかのキッシュ(※レシートを見たらトナカイの肉でした)、甘そうなパイ、オレンジジュースを選びました。連れは同じキッシュと、シナモンロールです。

キッシュを温めたかったので「Can I get it warm?」(温められる?)とレジのお姉さんに聞くと、ビュッフェを出たところに設置されている電子レンジを自由に使っていいとのことでした。専用のフタがあって、温める時は必ずかぶせなければいけないそうです。

キッシュがクリーミーで美味しかった!パイはいささか甘すぎでした。連れはキッシュが口に合わず残すというので、それもいただきました。

 

お腹を満たした後は、猛獣ゾーンへ。離れた場所からでもライオンの咆哮が聞こえます。

 檻のメチャクチャ近くにいました!空気を切り裂くような吠え声が、鼓膜をビリビリ震わせます。人生でこんなにライオンに接近したのは初めてです。やっぱりかっこいいな・・・

ここでも目の前で見るのに夢中で、写真は忘れてます。

ぐでっと寝そべるトラの毛皮模様の優美さ・・・チーターの背中から脚へと続くアールの効いた曲線の洗練・・・ユキヒョウの氷河みたいに透明度の高い青い瞳とモフモフした太めのしっぽ・・・

触りたい!でも近寄ったら瞬殺だね!

ウロウロ歩き回るユキヒョウに、ムツゴロウ感満載の「かわいいねー、いい子だねー」と呼びかける私を、親子連れが生温かく見守っています。

ちょーかわいいよね!という想いを込めたギラッギラの目で見返すと、ママさんもお子さんも優しく微笑みと頷きを返してくれます。

ヤバい人と思われてないかしら、大丈夫かしら。

しかしそこで、連れがやらかしました。

写真を撮るために、歩き回るユキヒョウを呼び寄せようとガラスを叩いたのです。

・・・許すまじ。

それが彼らにとって幸福なのか不幸なのか確かめようがないけれど、ただでさえ人間の都合で狭い場所に閉じ込められて、不自由な暮らしを強いられているのです。その姿を見せてもらえるだけでありがたく、なるべく彼らの邪魔にならないよう、ひっそりのぞかせていただくのが筋だろう!

とは思っているものの、他人に考えを押しつけるのも良しとはしない。

厳しめの声で「そういうの、やめなよ」とだけ言いました。

連れは「あ、うん」とやめてくれました。

響いたんだか響いてないんだか分からない返事ですが、聞き入れてくれるだけでありがたいです。

同じように振る舞えなんて思わないし、思いたくないもの。

気持ちを切り替えるため、1人で歩き出しました。坂を下ってワシの獣舎へ向かいます。

また海が見えてきました。これで島を横断したことになります。

f:id:mikawayaemi:20160416230958j:plain

対岸にヘルシンキ大聖堂が小さく見えます。

ワシのいる檻はかなり広くて高く、小指くらいの大きさでしか姿を確認できないけど、君にとっては狭いだろうねと、やっぱり少し切なくなってしまう。

ここが島で、自然の雰囲気が感じられるから、檻で隔てられた彼らが余計に閉じ込められているように見えるのかもしれません。

ワシの隣はアイベックスです。浜崎あゆみやAAAのいるレーベルではありません。それはエイベックス・・・すみません、しんみりした気持ちを払しょくしようとしたくて無茶を言いました。

好きなんです、アイベックス。ヤギ属の小柄な体躯ながら、急峻な山腹をトントントーンと駆け上がっていくのがかっこよくて!

あまり日本の動物園では見ないので、本物を見れて嬉しいです。

崖上のはるかてっぺんにいらっしゃるのを、「おお・・・」と見上げていたら、気付かれたようです。

f:id:mikawayaemi:20160416233931j:plain

近くまで下りてきて、ガッツリ目が合いました。

f:id:mikawayaemi:20160416234016j:plain

この後でもそうなんですが、彼らは好奇心旺盛なのか、近くまで寄ってこちらを見に来ます。

東洋人が珍しいのかな?ちょっと違う臭いがするんだろうし、興味があるのかもしれません。

f:id:mikawayaemi:20160416235010j:plain

トナカイもまた物見高い。

f:id:mikawayaemi:20160416235249j:plain

檻をはむはむしながら、ガンを飛ばしてきます。

さっき君たちの仲間を食べたんだよ、美味しかった。ありがとう、ごめんね、ありがとう、というまだら模様の気持ちで見つめても、特に伝わらないし、どうでもいいんだろうな。

そしてクマにも気づかれるが、

f:id:mikawayaemi:20160417001801j:plain

f:id:mikawayaemi:20160417001814j:plain

既読スルー。

f:id:mikawayaemi:20160417002123j:plain

ムースも振り返る。

f:id:mikawayaemi:20160417002412j:plain

バイソンもガン見。

f:id:mikawayaemi:20160417002559j:plain

近づいてもしっかり目線をくれます。意外と瞳がつぶらでキュート。

この時は「バイソン先輩かっこいいっす!バイソン先輩素敵っす!」と歓声を上げながら写真を撮っていました。なんで先輩・・・? 今となってはさっぱりわかりません。

f:id:mikawayaemi:20160417012158j:plain

フタコブラクダもチラ見。

そうこうしているうちに日が暮れてきました。まだ15時半くらいなんですけどね。

f:id:mikawayaemi:20160417012853j:plain

「きれいだね」

「うん、今度は彼女と見たいなー」

「ちっ、リア充め!」

そうです、連れは今回の旅の直前に彼女ができていたのです。

彼女とは私も知り合いで、旅行について了承は得ています。昼ドラ的ドロドロ展開は起きませんのでご安心下さい。本当は彼女も一緒に来たかったらしいのですが、都合がつかず断念しました。3人も楽しそうでよかったかも。

ぐるりと周って、またレストランに戻ってきました。

f:id:mikawayaemi:20160417020038j:plain

日が落ちてくると、じゃっかん禍々しい。私たちがヘンゼルとグレーテルだったら、絶対ここには入らない。

閉園時間がせまっていたので、サカサカ入口を目指します。もうすっかり人気がなく、中にいることを気づかれずに出られなくなったら間違いなく凍死だね、そうしたら温室に避難しようね、と策を練りつつ速足です。

f:id:mikawayaemi:20160417021004j:plain

再びの熊。

橋の上がものすごく風が強くて、手を広げて力を抜くと勝手に前進していくのが面白かったです。

急いで外に出て、バスの時間までショップでお買い物。エコバックと、ライオンとラクダのピンバッジを購入しました。レジのお姉さんが可愛くて感じよかった。

バス停にはちびっ子&ママさんがいて、ちびっ子はこちらに興味津々のようす。「ハーイ」とか手を振っていたら、連れが彼らの写真を撮りました。

「えっ」と驚いた私と、ママさんの目が合います。

・・・うーん、無断で撮るのはやめようか。カメラ見せながら「OK?」くらい言えるだろうに。許可を取るべきだっていう発想がないんだろうなー。人によってはガチ切れされるよ?

その場で指摘するのはやめました。君はもう、いつか痛い目を見てくれ。

写真を撮るのが好きな人って、撮りたい気持ちが先行して被写体の都合や気持ちを置き去りにしてしまうことがあるからな・・・自戒も込めて気をつけましょう。

 

街へ戻って来てもまだ17時くらいです。ホステルに帰るには早いし、軽くぶらぶらします。

連れはお土産を見たいとのこと。引きこもり在宅ワーカーの私と違い、各方面に頼まれているらしい。リア充もたいへんですな。

フィンランドのリビングウェアブランド「イッタラ」で、フクロウを買ってくれと頼まれたというので、エスプラナーディ通りのイッタラショップへ。

どんな商品なのかを把握していない我々は、ショップ内をさまよいます。

するとシャレオツなスキンヘッドのガイに「Can I help you?」と声をかけられました。

フクロウを探してるの、と答えると、Owlならこっちだよとガラス製のフクロウを見せてくれました。

一つひとつ職人の手作りで同じものはないのよ、ほら見て、と説明してくれます。

話し方といい、しぐさといい、脳内オネエメーターの針が振り切れそうです。

どうもありがとう、でも私たちが探しているのはこれではないんだ、と伝えると残念そう。今日は下見だけだったため、サンキューと言って店を出ました。

定番のマリメッコをのぞいてから、一度ゆっくり見たかったアカデミア書店に入りました。

世界のどこでも、本屋さんの空気感は似たものがあるなー。1階は雑誌と新刊、2階には専門書売り場とカフェ・アアルトがあります。

フィンランドが生んだ20世紀を代表する建築家、アルヴァ・アアルトがデザインしたアカデミア書店は、入り口ドアの波型ハンドルデザインからも、アアルトの思想が伝わってきてうっとり。回廊式の3層吹き抜け構造は、すこんと抜けた開放感が心地よいです。

記念に、ペンギンブックスのエコバッグと、オスカー・ワイルド「ドリアン・グレイの肖像」を買いました。装丁がポップで可愛くてひと目惚れしたのです!

http://amzn.to/2nq9XaT

(※この本、現在入手できるものは装丁が変わってしまっているみたいです・・・私が持っているのはグレー地にピンクでペンギンの絵が描かれているもので、ペンギンブックスという出版社のフェア用に作られていたものだったようです)

雑誌をチェックしているうちに、小腹がすいてきました。2階のカフェ・アアルトでお茶をしばきます。

ここは映画「かもめ食堂」で、サチエさんとミドリさんが出会って、ガッチャマンを歌うシーンで有名ですね。何度も見てるけど、こんなふうだったかしら。

http://amzn.to/2nq9rcS

映画ではもっと広い印象がありましたが、わりとこじんまり。地元っぽいお客さんばかりです。

ストロベリータルトとカプチーノを頼みました。普段はコーヒーを飲まないから、ラテアートの実物を初めて見ました。ささやかなディテールって、心をはずませるものですね。

f:id:mikawayaemi:20160417031940j:plain

どっちも美味しくて、しばしまったりくつろぎました。

明日からのロシア旅行への意気込みなどを語り合います。サンクトペテルブルグ行きの列車が6時12分発しか取れず、5時半にはチェックアウトしておきたい。なかなかに辛いスケジュール。到着は10時48分。時差が1時間あるので、乗車時間は3時間半くらいです。

今夜は早めに閉店ガラガラしないと、明日にひびきます。

書店を出て、朝食を買うべくスーパーへ。帰り道にある24時間オープンのSIWAに寄りました。

f:id:mikawayaemi:20160417034526j:plain

エスプラナーディ通りの端っこにあります。港とは反対側の、マンネルヘイム通りと交差する辺りです。Sマートよりちょっとオシャレな、ナチュラルフード系が多い品ぞろえでした。

ホステルに戻ってからは、一日中歩き回った疲労もあって、のび太ばりの3秒で就寝。翌日は4時にスッキリ起床です。ライ麦パンのサンドイッチを食べながら、本棚にたまたま置かれていた「旅の指さし会話帳 ロシア」をめくります。

http://amzn.to/2nqnlfk

ロシア語に不安があるし・・・またここに戻ってくるし・・・という理屈を付けて、無理を通してお借りしました。ちゃんと後日返却しました!でもすみません!バチが当たったのか、現地ではまったく使いませんでした。悪銭身につかずとはこのことか。

 

次回からは馴染みのあるヘルシンキを離れ、未体験の地ロシアです。

勉強してきたロシア語はどこまで通用するのか?

治安はどうなのか?

まずはホテルまでたどり着けるかしら?

不確定要素だらけの新たな局面へ、おそるおそる足を踏み入れます。