サンクトペテルブルグ2日目 前編~エルミタージュ美術館の内装とおじさんに興奮する
よく寝た。
前日の夜、スイッチを切ったように眠りに落ちた私は、スイッチを入れたように目を覚ましました。
サンクトペテルブルグ2日目の朝、窓の外はまだ暗いです。
時間は6時を回ったばかりで、まだ連れは静かに寝ているようでした。
しばらくツイッターを見た後、お手洗いへ行って戻ったら、連れは体を起こして携帯を見ています。
「おはよー」
「おはよう」
「私はもう起きるけど、寝ててもいいよ」
「んー、起きようかな」
「体調は?」
「ましになった。喉の薬がすごい効いたみたい」
「おー、そりゃよかった」
ドミトリーよりも落ち着いて寝られたのか、薬のおかげか、見た感じ辛そうではありません。
もそもそと朝ごはんを食べ、ひと休み。
ホテルのオーナーであるDmitryさんは常駐しておらず、他に宿泊客もいないようで、自分たちが立てる物音以外に人の気配はなく、ただ静かです。
ホテルはマンションのワンフロアを改装した造りで、私たちはロビーに近い部屋を使用しています。奥にもまだ部屋がありそうですが、泊まり客が少ない時は閉鎖しているみたい。
せっかくだから、やっぱりエルミタージュ美術館に行ってみたいそうで、体調に気を付けながら一緒に出かけることにしました。
歩いても行けますが、今日は疲れているから地下鉄を使いたいという訴えにより、なるべく省エネ移動です。
とはいえ昨日と同じ路線を使うのは面白くないから、違う路線で乗り換えを試してみようという提案をしてみたら、オッケーをもらえました。
モスクワ鉄道駅とは反対方向へリゴーフスキー通りを南下して、4号線の「Площадь Александра Невского(プローシャチ アレクサーンドラ ネフスカヴァ)」から乗り、「Сласская(スパースカヤ)」で5号線に乗り換え、「Адмиралтейская(アドミラルチェイスカヤ)」まで行きます。
どんよりした曇り空をバックに、看板の人のテンションは高い。こんなアッパーなロシア人は旅行中一回も会わなかったぞ。
時々ぽこっと取り壊し中のビルがあって街並みが凸凹してます。テトリス・・・
かとおもえば金ぴか&ピンクの建物がふいに現れます。
メリハリが効いてるというか、落差があるというか、この抜け具合が好きだわー。
それにしても、少々冷え込みます。路傍には雪の塊がちらほらと。川べりの道にはしっかりと雪が残っています。
この情景を思い起こさせる詩の一節が頭に浮かびました。
わたくしはでこぼこ凍ったみちをふみ
このでこぼこの雪をふみ
向ふの縮れた亜鉛の雲へ
陰気な郵便脚夫のやうに
(またアラッディン 洋燈とり)
急がなければならないのか
宮沢賢治の「屈折率」です。詩集「春と修羅」に収められています。
春と修羅 (愛蔵版詩集シリーズ) | 宮沢 賢治 |本 | 通販 | Amazon
この詩が描き出すような、鈍色の雲が垂れ込める、くすんだ風景に心惹かれます。色で言うとグレー。
華やかでも鮮やかでもない色彩の街路を、ピリリと頬をさす冷たい空気に包まれて、あてもなくさすらいたい。そこに私を知る人は誰もおらず、私は誰でもない。一種の逃避なのかな・・・
そんな願望を持つ私は、もちろん能町みね子さんの「逃北 つかれたときは北へ逃げます」を愛読しています。
国内および国外の「北」への逃避行をつづったエッセイで、読むとすぐさま北へ旅立ちたくなります。危険。
まだロシアに来て2日目だというのに、妙にしっくりきているのは、日照時間が少なく、彩度が低くなる季節のせいなのかもしれません。
右手のビルに地下鉄を示すマーク「M」が見えてきました。
しかしその手前に、もっと馴染みのある「M」マクドナルドの看板があるのがお分かりでしょうか?
ちょっと興味はあったけど、朝ごはんを食べたばっかりだし、ロシアまで来てマクド(連れは関西出身、私も大阪に住んでいたことがあるので我々は「マクド」と言う)に入るのもなーと通り過ぎました。
相変わらず、深く長く速いエスカレーター。
乗り換えもスムーズに行えました。ロシアでも地下鉄は路線ごとに案内板もホームも色分けされているため、とても分かりやすいです。
初日に乗った1号線は赤、今日最初に乗った4号線はオレンジ、乗り換えた5号線は紫です。
Адмиралтейскаяに到着して外へ出ると、めっちゃ雪降ってる!!!
横殴りに降る雪が顔面にバシバシ当たって痛い。傘?そんなもん役に立たん!
うっすら白く煙っているのは雪です。背中を丸めて歩く連れの後ろ姿がわびしい。
そんな悪天候の中でも、ものすごい話しかけてくる謎の勧誘おばさんとか、観光客向けの一緒に写真を撮って小金をせしめる貴族のコスプレした人たちは精力的に活動しています。
根性と基礎体力の違いを思い知らされるなあ・・・
美術館前の宮殿広場には、大きなクリスマスツリーが立っていました。
アレクサンドル円柱の上の天使も寒そう。
除雪車がグルグル回って活躍してました。
雪にも映えるエルミタージュ。
建物を入ると中庭があって、その奥が美術館の入り口です。
チケットは館内でも購入できますが、かなり並びます。実はこの中庭に入ってすぐ右手に自動販売機があり、そこでも購入が可能です。でも皆さんわりとスルーしてました、あることに気づいてなかったのかも。私たちが使っていると、後ろに人がポツポツ並び始めてました。
入館したら、まずクロークに上着と荷物を預け、貴重品とカメラ(フラッシュをたかなければ撮影可能なエリアが多いです)、チケットを持ってゲートをくぐります。
日本語の音声ガイドを有料で借りることができますので、しっかり解説を聞きたい方はご利用下さい。
ここからは長丁場です。駆け足で見ても2~3時間はかかると聞きますから、軽く腹ごしらえをしておこうとカフェに向かいました。
入口ゲートの正面にある、有名な「大使の階段」の手前で右折して、そのまま奥へ進んでいくと、右手にオシャレ感のあるカフェ、左手にはこじんまりとしたインターネットカフェがあります。
私たちが行った時間が早かったのか、まだオシャレカフェは営業していなかったため、インターネットカフェに入りました。
そこで頼んだベリータルトが超当たりだったのです!
簡素な紙皿でサーブされているのから察せられるように、お値段は安いです。横の紅茶とセットで300円くらい。
でもタルトには中までフレッシュで濃厚なベリーがぎっしり詰まっていて、タルト生地もサクサク軽い口当たり。果物そのものの風味を存分に活かした絶品でございました。
北欧もそうだけど、北の方の国はベリーが採れるから、概してベリー系スイーツが美味しいんですよね。
「うまっ、うまっ」とうわ言のようにつぶやく私を、連れが羨ましそうに見ています。
連れの頼んだチョコレートケーキは普通だったそうです・・・つくづく外す男。
まあ、こっちは素材の味をそのままぶっこみました!ていう感じだからね。
エルミタージュを訪れる機会があったら、ぜひお試し下さい。私もまた食べに行きたいです。
お腹を満たして腰を上げましたが、ここで連れが提案をしてきました。
それぞれ興味があるものは違うし、ペースも異なるだろうから、別々に周って後で集合しないかというのです。
それはいいアイディアだと同意して、集合時間と場所を決めて解散しました。
自分がゆっくり見てるのに相手が退屈してると気を使うから、1人の方が気楽なんですよね。
さて、素直に打ち明けますと、絵画の良しあしがよく分からないです。というより美術に関して知識が浅いため、背景まで理解した鑑賞ができないんですよ・・・勉強不足が悪いのですが、これまであまり関心を持ってこなかったもので。
じゃあなんでエルミタージュに来たんだよ!と責められてもいたしかたない。なんとなく記念だし、NHK「テレビでロシア語」でも2週にわたって紹介していたから、行ってみたかったんです。「大使の階段」の実物も見たくて。
しかしご安心ください。そんな芸術オンチの私にも、レンブラントの絵がすごいのは伝わりました。
ほへー、絵がいっぱいあるなーとアホっぽく見て回っていた時に、そうだと知らず1枚の絵の前で足が止まりました。
なんだか、この絵は他と違う引力がある気がする、としばし眺めてから作者名を確かめると、レンブラントでした。なにぶん知識がないので、見ただけで作者は分からなかったんですな。それでもすごさの一片は分かるんだから、とてつもない作品なんだなと思います。
ラファエロ作品もありましたが、それらもぱっと見ると「なんかすごいのがある」と感じましたし、歴史に残る名作ってそれだけの力があるんですね。
写真はあえて撮っていません。素晴らしさを写真に収められるとは思えなかったし、記憶の中だけにとどめておきたくもあったのです。
その代わりというか、実際絵画よりも印象に残ったのは内装の豪華さです。もともと王族の宮殿だったんだから当たり前なんですけど、贅の凝らし方とお金のかけ方が桁外れで、ぽかんとするしかなかったです。
率直な感想は「これ、なんぼかかっとんのや・・・」という下世話な驚きなんですけどねー。
そちらは写真を撮りまくったので、ご紹介します。
色のトーンが、全体的に淡くて優しい感じです。
特にここの天井がお気に入り。こういう柄のスカートが欲しい。
人が写っているとスケール感が伝わりますね。天井が嘘みたいに高い。掃除はどうしていたんでしょう・・・
有名な音楽時計「孔雀」がある間です。そっちは人だかりがすごくて写真は撮れず。
だんだん麻痺してきて、これくらいだと「地味だな」と思うようになってきます。
ここは「うわっ、可愛い!」と声が出ました。ペールブルーとホワイトの組み合わせがさわやか&スイート。
ここ「〇〇の間」とかではなく、廊下なんです。どこもかしこも豪華で笑えてきます。
ここも廊下。
天井装飾のタイル?が好き。一つくらいくれないかなー。
金ぴかすぎて爆笑する私を、係員の方がけげんそうに見ていました。
ここはガイドブックで紹介されることが多いですね。エカテリーナ2世のコレクションが元となった黄金の間です。
あまりの輝きっぷりに言葉を失った礼拝堂。厳か、とはまた違った極楽感があります。
ニコライ1世が壁を白い大理石貼りに造り替えたという玉座の間。人がいない状態で写真に収めるの大変でした・・・
順番待ちの人が山ほどいて、遠慮してたらいつまでもシャッターチャンスは訪れません。
ちょっと引くとこんな感じですもの。
見ていて一番面白かったのはここです。窓側の廊下なんですが、端から端までかけて、聖書の創世記から出エジプト記やキリストの誕生を順を追って描いてあり、少しずつ後ずさりしながら見ました。
ちょうど社会見学の子供たちが来ていて、説明を一緒に聞けたのがラッキーでした。
ここをじっくり見て廊下の突き当りまで来た時、いきなりそこにいたご婦人に話しかけられました。もちろんロシア語、こっちが理解してるかどうかに一切頓着しない勢いでした。
突き当りにあるドアをさして、なにかを訴えている・・・身振り手振り&わずかに聞き取れた単語から「この向こうには行けないのか?」的なことを聞いている、ような?
私はドアの取っ手を引いてガチャガチャさせてから「Закрыт(ザクルイート)」(閉まってるよ)と簡潔に答えました。ご婦人は、ふんふんとうなずいて納得してくれたみたい。やれやれ。
ていうか、そういうのは係の人に聞いてくれよ。通りすがりの東洋人に質問しても正確なところは分からないよー。
しかしこの「Закрыт」この後何回か使ったんですよね。地下鉄の出入り口が今日だけ閉鎖されてるとか、お店が潰れてて開いてないとか。覚えておくと便利な言葉かもしれません。
ちなみに反対の「開いている」は「Oткрыт(アトクルイート)」です。
そうそう忘れちゃならないのが大使の階段です。
わりといい感じに写っていると思うのですが、実物は思ったよりこじんまりしてました。もっとこうバーン!と、映画「市民ケーン」のザナドゥ宮殿みたいなのを想像してた・・・
そしてこのカップル。いなくなってから撮ろうと思っていたら、自撮りしててなかなかどかない。
「とっても素敵ね!」
「君の方が綺麗さ・・・」
みたいにペチャクチャイチャイチャしてる。
しまいにはチュッチュしだしたので、あきらめました。
ここからは、気になった展示物です。
これ何?同じく引っかかっていた連れから「悪魔か何からしい」という情報を得ました。でもまだ謎。
獅子婦人、口に出してみると真珠婦人に響きが似ている。声に出して読みたい日本語です。
この方、あの超有名な「サモトラケのニケ」のお顔だそうです。肩から下と頭部がない、羽根の生えた女性像ですね。どんなのだったっけ?という方は下記サイトをご参照下さい。
けっこう普通の人っぽい、と思ってしまった。
こんなでっかい器で運んでるのがパイナップル1個なの?
甲冑を装着した馬がかっこよすぎた。
単純にあまりの巨大さにテンションが上がったポセイドン。立ち上がったらエルミタージュの天井に頭がつっかえるんじゃないかしら。
厚切りジェイソンの「ホワーイジャパニーズピーポー」にしか見えない。
ロシアまで行ったのにショボイ感想だなーと我ながら思わなくはないですが、自分なりに楽しみました!
付け加えて、展示以外をいくつか。
2階にある空中庭園です。ここにもクリスマスツリーがありました。
エルミタージュで働くおじさんたち。真ん中の人、袖まくってますけど・・・零下で雪降ってるよ?
一服を終え、仕事に戻っていくらしいおじさんたち。愛らしい。
待ち合わせを16時半に設定したため、5時間ほど見学したはずですが、時間は足りなかったです。最後の方は駆け足になるわ、待ち合わせ場所にたどり着けずに迷うわで、汗だくになりました。
行き止まりとか、こっちの階段は2階にしか降りれないよとか、罠が多すぎ。もしかして防犯上、迷路チックにしているのかな・・・涙目で同じ場所をグルグル回る私を、監視員の方たちが静かに見守っていました。一声かけて助けてくれるのは、期待しちゃいけないよね、うん。
ようやく待ち合わせ場所に着いた時には連れはすでに来ていて、時間をつぶしていたそうです。少し休憩してから、ミュージアムショップでエジプト神話に登場する猫の女神様バステトの缶バッチを2つ購入(2個で100ルーブルでした。お値打ち!)、外へ出ました。
すっかり夜になっています。
歩き回ったことだし、お腹もすきました。
ふらっと入ったレストランで、私は運命の出会いをするのでした・・・詳しくは次回!とジャンプ的引きをしてみる。
サンクトペテルブルグ1日目 後編~連れがロシアの攻撃に膝を折る
(前回のおさらい)
ロシアによる、アイスバケツチャレンジもびっくりの頭から氷水をぶっかけられるような手荒い洗礼を受けて、ほうほうのていでホテルにたどり着いた我々。
Liston(誤字ではない)の紅茶で一服し、午後からの散策に向けて英気を養うのであった・・・
連れの持ってきた「るるぶロシア」をめくりながら、お昼ご飯をどうするか、あーでもないこーでもないと相談するのも旅の楽しみです。
伝統的ロシア料理も食べたいけど、まだそれほど2人ともお腹が空いていません。
何か軽いものがあるかなと探していて、ピザとパスタの店「ママ・ローマ」を見つけました。
Restaurants - MAMA ROMA (МАМА РОМА) - настоящий итальянский ресторан!
上記はお店のサイトです。ページの最下部で、イタリア語と英語とロシア語が選択できます。
ロシアでイタリアン?とあなどるなかれ、他ではあまり見かけないサーモンのピザとかめっちゃ食べたい。魚の中で、サーモンが一番好きなんです!
Pizza - MAMA ROMA (МАМА РОМА) - настоящий итальянский ресторан!
メニュー写真、右側の下から3番目です。
英語メニューがあると「るるぶ」に書いてあるし、ここに決めました。
ママ・ローマは、サンクトペテルブルグのメインストリートである、ネフスキー大通りから横道へ入ったところにあるらしく、行きしなに散歩がてら街の様子を見られます。
食後に時間の余裕があれば、私のたっての希望で北極南極博物館に行こうという流れになりました。
北極南極博物館とは、ロシアの極地開拓の歴史について展示してある施設です。いつか極地に行ってみたい私としては、見学せずにおれない場所なのです。
Российский государственный музей Арктики и Антарктики
サイトがロシア語のみであることからお分かりのように、館内の解説もほぼロシア語のみです。大半は意味が分かりませんが、ジオラマの見せ方が面白いですし、実際に極地に滞在した設備を見ると、その心もとなさに「やっぱりロシア人は頑丈だなー」と感心しきりです。
動物の剥製は切ない気持ちになるんですけど、ガラスケースなしのむき出しで間近で見られるのは、ちょっと興奮する・・・ああ我ながら罪深い。
行く先は決まった!さあ出かけよう。
道さえ分かっていれば、あっという間に着くモスクワ鉄道駅。
3日目の夜に、ここの壁を使ってプロジェクション・マッピングやってるのを見ました。
道のちょっと奥まったところに「エロティック・ミュージアム」を発見。
ロシア語が少し分かるがゆえに、いらんことに気がつきました。18歳以上でないと入場できないみたいです。
写真に後ろ姿が写っている金髪美女が中に入っていき、私と連れ&通行人のおじさんが色めきたって、ざわ・・・ざわ・・・しました。
ネフスキー大通りの交差点で信号を渡ります。20メートルは幅がありそうな広い道路です。
ビラを配るクマに出会いました。手元からかいま見える、そこはかとないヒト感。
カメラを構えて「Moжнa(モージナ)?」(いいですか?)と聞くと、快く応じてくれました。
「Спасибо(スパシーバ)!」(ありがとう!)と手を振ったら、振りかえしてくれた。気さくなクマさんです。お嬢さん、お待ちなさいと追いかけては来なかった。
サンクトペテルブルグにも、フィンランド発お洒落デパート「ストックマン」がありました。
お隣の国だから、進出してきたんでしょうか。これも自由化のなせる業ですねー。
フォンタンカ運河に架かるアニチコフ橋です。欄干には人馬の像が置かれています。
近くで見るとこんな感じ。
道路の向こう側の欄干にも、同じ像があります。夕日の逆光でかっこよく撮れました。
フォンタンカ運河。ネヴァ川から水を引いています。
運河沿いにあるストロガノフ宮殿。NHK「テレビでロシア語」で映っていたような気がします。マカロンとかのお菓子みたいな色合いです。ホテルの内装も似たトーンのピンクだったので、ロシア人はこのピンクが好きなのかもしれない。
お察しの通り、ビーフ・ストロガノフを考案した一族の邸宅です。
橋を渡ってから2本目の道を右折し、ワンブロック進むと目指すレストランがあるはずです。
ところが旅の魔力と申しましょうか、実際に歩いた体感と、地図上の縮尺の差異と申しましょうか、そこそこ歩いても目的地が見つからず、間違えて別の店に入ってしまいました。
お姉さんが「Двое(ドゥバヨー)?」と聞いてきて、これは確か「2人」という意味だったぞと覚えていたため「Дa, двое(ダー ドゥバヨー)」(はい、2人です)と答えます。
席に通され、当たり前のようにロシア語のメニューを渡されました。
ですよねー。普通に受け答えたし、ロシアにはアジア系民族もいるから、その辺り出身の人だと思われたんだね。でも申し訳ないがメニューを読み取れるボキャブラリーはないんだ・・・
「Do you have an english menu?」と頼んだら、ちょっと驚いてました。
おやおや?メニューにピザもパスタもない。ここで、店が違うのに気づきました。とはいえ出て行くのもねーとコソコソ相談し、せっかくだからロシア料理を食べようということになりました。
ボルシチと、Уха(ウハー)という白身魚と野菜ベースのあっさりスープ、クリームチーズのパンケーキとチャイを注文しました。
2種類のスープは分け合いました。どっちも素朴な感じで美味しい。パンケーキは、チーズ好きの私にはアリだったけど、連れには受けがいまいち。チャイは日本で飲むのと変わらないかなー。
あ、食べるのに夢中で写真は忘れてます。
店内には私たちの他に客はおらず、店員さんたちはおしゃべりに興じています。厨房からも人が出て来たよ。暇なんだね・・・
この放っておいてくれるラフな感じが心地いい。人によるだろうけど、無言でじっと待機されてるのって見張られてるみたいで落ち着かないんです。適当に力抜いててくれる方が気楽なんですよね。
連れはややお気に召さないようす。呼べばちゃんと来てくれるし、問題ないと思うんだけど「気持ちよく食事する時間を提供するのが仕事だから、接客態度が良いとは言えない」のだそう。
筋違いな意見ではないと思う。ただ、ここは庶民的な食堂という雰囲気&価格帯の店で、高級レストランではないから、人として感じが良ければ充分なんじゃなかろうか。
そう考えてみると、日本の庶民的飲食店で提供されている接客サービスって、異常にハイレベルなんですね。
しかし感じ方はそれこそ人によって全然違うからな、とその時はなんとなく流しましたが、今にして思い返せば、ロシア語でかろうじてコミュニケートできる私と、意思疎通のほとんどできない連れでは、すでに相手側の対応が異なっていたのでしょう。
それに、店員のお姉さんが料理を持ってきてくれたり、取り皿を追加してくれた時に、私はお礼を言っていたけど、連れは特に反応してなかったから、お姉さんのちょっと照れたような可愛らしい微笑みを見てないんですよ。もったいないことしてるわー。
うん、言葉は大事。だけどもっと大事なことはある。
わりとのんびり食事をしていたら、いつのまにか15時半近くになっていました。
腰を上げて、北極南極博物館に向かいます。
外は早くも暗くなり始めていました。
連れがオフラインでも使えるGoogleマップ公式アプリで、サンクトぺテルブルグを含むエリアをダウンロードしておいてくれたので、スムーズにたどり着くことができました。これ、かなり便利です。旅行中にものすごく助けられました。
エリアをダウンロードしてオフラインでナビゲートする - モバイル Google マップ ヘルプ
ネフスキー大通りをモスクワ鉄道駅に向かって戻る途中で、右折してMaрaта通りに入り、400メートルほど進むと、Kузнeчный通りとぶつかる曲がり角に博物館があります。
入館料は大人が280ルーブル、日本円で450円くらいです。窓口で支払う時に、ささやかな揉め事が起きました。
連れの出した5000ルーブル札を受け付けてもらえなかったのです。額が大きすぎると断られるケースは、まれにあります。閉館時間が近かったから、お釣りがなかったのかもしれません。
もっと細かいのないの?と聞くと、さっきの店で使ってしまったとのこと。なんとクレジットカードも使えないと言われました。
窓口のご婦人は、もちろん申し訳なさそうな態度も、この状況を何とかしようという姿勢も見せません。
連れは困りきって、強張った表情を浮かべています。
幸い私が500ルーブル札を持っており、立て替えて入館できました。
さらに、見学する前に上着をクロークにあずけるように指示されました。これはヨーロッパではスタンダードだと思うのですが、海外旅行初心者の連れは初耳だったようです。
厳しい口調で(ロシア語は、そういうふうに聞こえがち)階段を指差して下りるように言われ、よう分からんかったがなんだべな?と思いながら階下に行くと、クロークがありました。コートと荷物をあずけて番号札を受け取り、身軽になって見学です。
まず飛行機がドーン!
何に使われたものか?それは分からない・・・
極地に暮らす動物たちのジオラマは、とても精巧に出来ています。
陸地のペンギンと、水中のペンギンを、真ん中を仕切って見せています。一体一体は小さいんですよー。
立体のセイウチと、背景の絵が、すごくうまく混ざり合っています。
極地調査のジオラマなんて、超寒そう・・・私なら2秒で死ぬわ。
テント?マイナス40℃とかになる土地でテントなの?
ホッキョクグマに襲われたらイチコロだぞ!
時代がもう少し下った、ドーム状居住施設の実物も展示されていましたが、それだって布製なんです。心細いくらい頼りない。
あくまで開拓の歴史の展示ですから、最新のものは置かれていないのでしょう。そもそもそれって軍事機密だろうし。
2階には歴代の極地探検用防護服が並べてあって、展示室中央にはペンギンの剥製が飾られています。
いやすげー可愛いんだよ?近くで見ても羽毛のホワホワ感とか、テラ萌えスと思わないでもない。でもごめん、「一家大虐殺」ていうのが真っ先に思い浮かんだ・・・
どんよりした気持ちで残りの展示を見て回り、だいたい1時間くらいで見終えました。説明をしっかり読めたら、もっと時間がかかりそうです。
出る前に、お手洗いに行くことにしました。せっぱつまってから探しても、日本みたいに手軽に利用できるトイレを見つけるのは難しいですからね。
1階から2階に上がる途中にあるお手洗いに入りました。
そしたら便座がない。これはまあ、予想の範囲内です。でも便座のフタが取り外されて、壁に立てかけられているのはなぜ?理由が分からなくて不気味です。
付け加えて、設置されたゴミ箱にいっぱいトイレットペーパーが入っているのは・・・あれだね、使用後の紙を流しちゃいけないという例のやつだね。空調がしっかりしてるから、アンモニア臭はしないけど。
中腰で用を済ませ、事なきを得た私が報告すると、連れは震えあがっていました。そうか、男性は気がつきにくいかもね。
表に出ると、やっと17時になったくらいだというのに、もう完全に夜でした。
ホテルまで徒歩10分もかからないような距離だったので、のんびり帰ります。
すると、やたらデカい黒い犬が単独で歩いていました。首輪をしているものの、鎖はなく、飼い主らしき人も見当たりません。野良犬にしては栄養状態がよさそうだし、周囲も警戒していません。
触れられそうなほど近くを通り過ぎていきましたが、すごく大人しく、人に馴れている感じがします。
どうやら30メートルばかり前を歩いていた男性が飼い主だったようです。黒犬さんが寄り添って尻尾を振っています。その人の手にも鎖はなく、振り返って黒犬さんが付いてくるのを確かめるようすもなかったから、気がつきませんでした。
その後何回も、こういう場面を見かけたのですが、ロシアでは放し飼い散歩は「あるある」なんでしょうか?情報を求む。
薬局の前を通りがかった時、連れが「薬を買いたい」と言い出しました。風邪を引いたみたいで具合が悪く、喉が痛いそうです。
寄るのは別に構わないけど、昼間の感じで英語が通じない場合は、症状に合わせた薬を買うのは至難の業だぞ・・・
かといって、自力で治せというのも無理な話です。とりあえず入ってみるかと薬局に足を踏み入れましたが、まったく駄目でした。英語はもちろん通じず、面倒くさそうに手を振って追い払われてしまいました。
がっくり肩を落とす私たち。しかしここで諦めては連れが可哀そうです。
「あきらめたらそこで試合終了だよ」って安西先生も言ってたもん。
方策を考えながらホテルに向かっていて、ふと昼間に道を聞いた薬局が目に入りました。
あの店にいた人たちは、一生懸命話を聞いてくれて親切だった。それに一度ホテルに戻って、ネットで単語を調べてメモして伝えれば、どうにかできるかもしれない。
ひらめいたのと同時に、ロシア語で「熱がある」「頭が痛い」と伝える言い方を勉強していたのも思い出しました。そしてそれは持ってきた手帳に書いてある!
さっそくホテルに帰って単語を調べ、発音が悪くても伝わるように、ロシア語で手帳に書きました。
「Я хочу купить лекарство от простуды.(ヤー ハチュー クーピチ リカールストヴァ アト プラストゥーヂ)」
Я хочу=~したい、купить=買う、лекарство от простуды=風邪薬、で「私は風邪薬が買いたいです」になります。
「У меня температура.(ウ ミニャー チンピラトゥーラ)」(熱があります)
「У меня болит голова.(ウ ミニャー バリート ガラヴァー)」(頭が痛いです)
У меня~=私は持っている、という意味で、「熱」を意味する単語「температура」を続ければ「私は熱があります」になります。
У меня болит ~=私は~が痛いです、という意味で、~に体の部位をあらわす単語を入れれば、どこが痛いのか伝えることができます。
痛いのは私ではなく連れなので、「彼」を意味する「У нго」にすればよかった・・・やっぱりちょっとテンパってたんですな。
準備を整え、薬局に出陣です。
昼間のお姉さん、まだいました。「あら?あなたはさっきの」みたいな表情をしています。
薬が欲しい旨を伝え、症状を説明して・・・、喉が痛いって調べるの忘れてた!
そこで「У меня болит~」まで言って、喉をかきむしるような仕草&苦しそうな顔をしてみました。
「Что вы рекомендуете(シトー ヴィー リコメンドゥーイチェ)?」(お勧めは何ですか?)とたたみかけます。
お姉さんは「うーん、そうね」的に首をかしげてから、説明を始めました。ちょっと待って!分かんないから!
慌てて「Посмотреть(パスマトリェーチ)」と言いましたが、これでは「見る、見ます」と言ったことになってしまうため、本当は「Покажите, пожалуйста(パカジーチェ パジャールスタ)」(見せて下さい)と言いたかったんです・・・落ち着いて考えれば出て来たはずなんですけど、焦ってたんですね。
お姉さんは意図をくんでくれて、いくつかの薬をケースから出しながら説明してくれました。
パッケージに絵が描かれているから、どんな薬か想像がつきます。これは助かりました。予想がつくことで、お姉さんの言葉から理解できる単語を拾いやすかった。それに、喉の薬を「タブレット」と言っているように聞こえて、いわゆる錠剤のタブレットをロシア語でもそう表現するんだなーと納得してました。
※正しくは「Taблeтка(タブリェートカ)」だそうです。
解熱効果のある風邪薬と、喉用の錠剤をやっとのことで購入し、「Спасибо!」と告げて店を出ます。お姉さんもホッとした顔で手を振ってくれました。
やりとげた感で私は元気いっぱいですが、具合が悪くなってきた連れはぐったりしています。
しかしながら薬を手に入れたことで少し前向きになり、明日の朝ごはんを買うため、ホテルのすぐ近くにある、23時まで開いている小さなスーパーに寄っていくことにしました。
パンと果物とヨーグルトとチーズ、1リットル入り紙パックのベリージュースを手にレジに並びます。愛想が良いとはけっして言えないお姉さんが、バーコードを通した後に何かをベラベラと訴えてきます。
私が「?」のニュアンスをたたえた表情をしていると、レジ袋を取り出して指差しました。
どうやら「袋はいるのか?」と聞いていたもよう。しかもこの感じだと、袋は有料っぽい。
フフフ、これこそ備えあれば憂いなし。ちゃんとエコバッグを持ってきたんだぜ。
私は「Het」と断りを入れ、エコバッグを取り出しました。お姉さんも納得のごようすで、うなずいています。
違うレジに並んでいる連れも同じことを聞かれるだろうと思い、「袋がいるか聞かれるよ」と教えておきました。
無事に買い物を終えてホテルに帰った時は、さすがに気が抜けてベッドに寝転びました。
連れは早々に薬を飲んでいます。
とにかくゆっくり休んで、明日になって体調が悪化しているようなら、君はホテルで寝ていればいい、私は1人でエルミタージュ美術館に行くから、というふうに話がまとまりました。
連れはそんなに積極的に美術館に行きたがっていたわけではないし、昼ぐらいまで様子を見て、行けそうなら2人で、無理なら1人で出かけることにしました。
なんだかもう、こっちが元気なのが申し訳ないような弱りっぷりです。
「無理はしないでね。それでひどくなったら、余計に手間がかかるからね。積極的に弱音を吐いてね」と伝えて、さっさと寝ました。私も緊張していたのでしょう、目を閉じて数秒で意識が途切れたような感覚です。
「スイッチ切ったみたいに寝た」と後で言われました。
さて次回はエルミタージュ美術館です。
連れは回復できるのか?まだまだお見舞いされるのか?
私はずっと元気でした、とだけはお伝えしておきます。
(追記)
書き忘れていましたが、ロシアの滞在登録についてです。
ビザに記載されている目的地に到着後3営業日以内に滞在登録をしなければならない、という規則がロシアにはあるそうです。
しかし、滞在する都市によって規則が違ったり、3日以上同じ都市に滞在する場合に必要になるから、3日以内ならしなくてもいいとか、いや7日以上滞在する場合に必要なんだとか、情報が錯綜しています。規則が変更されても、周知はされない傾向があるようです。
ただ何らかの手続きは必要みたいですね。今回のサンクトペテルブルグ滞在3日間に関しては、パスポートの写真を撮られただけでした。「パスポートを持っていかなくていいの?」と聞きましたが「これで大丈夫だよ」という返事でした。登録料を要求される場合もあると聞いていましたが、それもなく。ホテルEl Rooms ApartmentsのDmitryさんは良心的な人でよかったけど、謎は残る・・・
また、旅行者にはパスポート携帯義務があり、所持していないのを警察官に見つかったら罰金を払わされる。パスポートを取り上げておいて「ビザの書類に不備があるから、返してほしければ罰金を払え」と言い出す悪徳警官もいるから気をつけるように、という噂も目にします。警察官を見たら逃げたほうがいい、なんてアドバイスまでありました。
これも、呼びとめられることさえ一度もなかったです。運がよかったのでしょうか。警察官はしばしば見かけましたけど、こちらに注意を払ってすらいなかったです。
滞在登録をしなかった時の罰金規定が撤廃されてからは、警察官による不正が激減したという情報も目にしたので、タイミングと運、なんでしょうね。
万が一の不測の事態に備えて、念のため在ロシア日本国大使館領事部が携行案内をしている、悪徳警官に捕まった時に提示して難を逃れるためのメモがダウンロードできる、大使館サイトのURLを付記しておきます。
皆様の旅が、安全で快適なものでありますように。
サンクトペテルブルグ1日目 前編~ロシアの洗礼は手厳しい
ヘルシンキ発サンクトペテルブルグ行き列車「Allegro」に乗るべく、ヘルシンキ中央駅に着いたのは朝の5時45分。
出発が6時12分ですから、少し早かったかも。とはいえホームに行ってみたら、もう列車は来ていました。始発だからかな?
Allegroのチケットは、フィンランド国鉄VRのサイトから直接買いました。
下記のページから、フィンランドとロシアの各都市を結ぶ列車のチケットを購入できます。
VR: Buy train tickets online. See timetables and buy your tickets. - VR
都市名を入力して、日付を選択し、「GET THE PRICE AND BUY A TICKET」のボタンを押すと、購入できるチケットが表示されます。
最初のページで出発/到着時間を選択することもできますが、しなくても大丈夫です。
私はヘルシンキとサンクトペテルブルグを往復するチケットを買いたかったので、「Helsinki」「St. Petersburg (Finljandski)」と入力しました。
「St. Petersburg (Finljandski)」とは、「サンクトペテルブルグのフィンランド鉄道駅」という意味です。ロシアの駅名は行き先が名前になっていますから、サンクトペテルブルグからフィンランドへ行く駅ということになります。
シートはファーストクラスとセカンドクラスから選べます。セカンドクラスでも日本の新幹線みたいな雰囲気で充分くつろげますし、寝台車ならともかく3時間半くらいならセカンドクラスで大丈夫だと思います。
フィンランドからサンクトペテルブルグへ向かう列車は、席の場所も選択できます。サンクトペテルブルグから戻ってくる列車では選択できません。強制的に割り当てられるのが、なんかロシアっぽい気がします。
料金は往復で1万円くらい。国をまたぐと考えたら、かなりリーズナブルです。
日本の代理店を通して購入することもできますが、手数料がかかる分だけ割高になります。区間によってはチケットと手数料がほぼ同じくらいになってしまうこともあり、可能なら自力で購入するのがお勧めです。
購入時には、パスポートに記載された情報が必要です。あらかじめご用意下さい。
支払い方法はカードです。購入手続きが完了すると、メールで領収書兼予約確認書がPDFで送られてきます。プリントアウトするか、データをすぐ見られるようにして持っていくと便利です。
ヨーロッパの多くの国と同様に、VRにも改札はありません。
上記の予約確認書がチケット代わりになりますので、車内の検札ではそれを見せます。
乗り込んでしばらくは車窓が夜のままだから、連れはうとうとし始めました。
私はワクワクとドキドキがあいまって、目が冴えてしまっています。
少し明るくなり始めた頃、フィンランドの出国審査の人がやって来ました。
マッチョでタトゥーの入った兄貴たちに、連れはそうとうビビってました。なかなか動揺が治まらない様子で、「あんな感じの人、けっこういるよ」と言っても「でも国境の審査をする人がタトゥーとか、日本ではありえないし」と納得いってない返事です。
たしかに日本ではその辺厳しいけど、ここは日本じゃないしね・・・公共機関で働いてる人でタトゥー入りって、海外では珍しくないし。警察官でもけっこういるもんね。文化的バックグラウンドが違うんだから、そんなもんかと流せばいいと思うんだが。
どうやら、その辺が不器用な人だというのが、後に分かってきます。
出国審査の後は、ロシアの入国審査です。
軍人感まる出しで、厳しい表情の女性2人がやって来ました。
あらかじめ渡されていた入出国カードとパスポートを手渡します。カードは左右で同じ内容を記入し、片方を入国時、もう片方を出国時に提出します。審査官が真ん中で切り離して、出国用の片割れを返却してくれますので、必ず保管しておいて下さい。
パスポートの写真と実際の顔を照らし合わせるため、顔を上げて見せるように命じられます。何回か見比べた後、審査官が口を開きました。
「How old are you?」
えっと、これはあれですか。東洋人は若く見えるから年齢を疑われるのハードバージョンですか。
自慢ではないですが、私は日本人からも実年齢より若く見られるのです。ましてや西洋人においてをや。・・・うたがわれている。
光りの無いグリーンの瞳、例えて言えば浅田飴のような無機質な瞳で見つめてきます。
「Forty」
重々しく答える私に、「ほほう・・・よくぞ言ったな」という声が聞こえてきそうな、これまた重々しいうなずきを返します。
たんねんにパスポートをチェックしていますが、問題はないはず。ビザだってちゃんと取ったもん。
ついに入国スタンプを押し、入出国カードを切り離そうとした、その時です。
びりっ。
私が、国境審査官が、もう一人の審査官が、連れが、そろって息をのみました。
今、けっこういったよね?半分に切るはずが、4分の3くらいになってるよね?
どうする気だろう、もう一回書けってんなら書くけどさ。そんな気持ちで推移を見守っていたら、破っちまった審査官が目に見えてアワアワしだしました。
まじかー。
同僚の方はあきらかに笑いをこらえています。
あー、やっちゃったね。
どうしよう、これ?
知らんし。
うわー。
的な、目と目のカンバセーションが繰り広げられている。
私も面白くなってきてしまいました。
最終的に「てへぺろ☆」みたいな笑顔とともに、きれいに形が残っている方を返してくれました。
ドジっ娘め!可愛いけど!
さて次は連れのパスポートチェックです。連れは5年用パスポートを取得していて、私の10年用とは色が違います。そこが彼女たちもひっかかったらしく、
「こっち黒いわよ」
「なんで?」
「日本のパスポートは5年用が黒で、10年用は赤なのよ」
「ああー」
みたいな会話を、かろうじて聞き取った単語から推察できました。
連れの入国審査はあっさり終わって、彼女たちはニヤニヤしながら去っていきます。さっきまでの緊張感がほぼゼロになったのはありがたいけどさ。
ひと息ついていると、今度は通関?に当たるのか荷物検査の人が現れました。
でかい&ごつい男性、そしてやっぱり軍人。
「君の荷物はどれだ?」
「これ(棚の上のバックパック)と、これ(手元のバッグ)です」
しばしの思案の後、「そのバッグの中を見せなさい」と命じられました。
脳内ではハートマン軍曹に「Sir, Yes Sir!」と答える気構えで、「Yes」とだけ答えてバッグを開けます。
(ハートマン軍曹って誰?という方は、ぜひ映画「フルメタル・ジャケット」をご覧下さい。戦争と人間の狂気を描いた傑作です)
なんかこう、ごちゃーっと、ニット帽とスヌードとガイドブックとハンカチとティッシュとお菓子が突っ込まれてる、ダメな感じの中身です。
規律正しく整理整頓を旨とする(であろう)軍人さんは、憐れみと蔑みのこもった眼差しを注いでいます。
「OK」閉じろ、と手振りで示しました。
く、くつじょく・・・
連れも同様にバッグの中身を見せ、荷物検査も無事に終了。
ようやく落ち着いて、過ぎていく景色をゆっくり眺められます。
しかしあまり変化がない。荒寥、という表現がぴったりくる原野が、延々と続きます。時折ぽつんと家屋が建っており、(あの家に住む人たちは、日常的な買い物とかどうしているんだろう?まさか自給自足?)という疑問が浮かばざるをえない。
列車で3時間半という、広大なロシアの国土を考えれば短い距離の間でも、驚異的な人口密度の低さと、浩々たる原野を見せつけられました。
こんな厳しい場所で生き抜いてる人たちに、温暖な風土で育った日本人が戦争で勝てるわけないよなー。これだけ土地があったら、収容所なんて作り放題だよなー。などの不穏な感想が去来します。
ああ、緊張がまたこみ上げてきた。
しだいに建物が増え始め、街が姿を現してきます。
デザインそのものは優美なんだけど、メンテナンスが行き届いていないというか、壁が剥がれ落ちてたり、落書きがひどかったり、どこか荒れた印象です。
フィンランドから来たから、よりそう感じるのかもしれません。
やがて、フィンランド鉄道駅に到着しました。
ロシアでは駅は軍事施設に当たるため、写真撮影は基本禁止という噂を聞いていたのですが、特に注意されませんでした。見つからなかっただけかも。
駅の外に出ると、いきなりタクシーの客引きに囲まれます。
わらわら寄ってくる「Taкси(タクシー)?」おじさんたちに、「Het(ニェット)」(ロシア語でNo)と返し、両替所を探します。
さいわい、駅を出てすぐ左手の建物に「Cash Exchange」と書いた看板があり、そこに入りました。
後で分かったのですが、この建物はAllegroに乗るための専用の改札口があるビルで、待合室や売店とともに、両替所も設置されていたのです。
ホテル代も含めて、3万円くらいを両替しました。結果、だいぶ余りましたね。ルーブル安、ありがとう。
ホテルは鉄道駅から離れているため、地下鉄を利用しました。
フィンランド鉄道駅の最寄駅「Площадь Ленина(プローシャチ・レーニナ)」から、ホテルの最寄駅「Площадь Восстания(プローシャチ・ヴァスターニヤ)」までは、1号線で2駅です。
地下鉄の入り口には「Метро(メトロ)」を意味する「M」の文字が大きく掲示されていて分かりやすいです。
地下鉄の入り口近くにたむろするハト。寒さのせいか、それとも栄養が良いのか、ふくふく丸々としています。
窓口で、ロシアの地下鉄用コイン「ジトン」を買います。
ジトンは乗車1回につき1枚必要で、これを改札ゲート右側の穴に入れ、緑のランプが点いたらゲートのバーを向こう側に倒して進みます。何回乗り換えようと、どこまで行こうと、改札から出ない限りは1枚でどこまでも行けます。
ただ時間制限はあった気がしますので、1日中乗り続けるのは無理だったような・・・これはちょっと定かじゃないです。普通に乗る分には、まったく問題ないです。ジトンは戻ってこず、改札を出る時はそのままゲートのバーを倒せば出られるようになっています。
窓口のご婦人が、こちらを見ています。けっして優しい眼差しではありません。
NHKの「テレビでロシア語」で学習した成果を試す時が来た!
ちなみに窓口は全面ガラス張りで、台と接する一部分に、ごくわずかなすき間が開いています。腕も通らないような狭さの穴の下には、えぐるような形でくぼみがあり、そこからお金やジトンのやり取りをします。
防犯対策の本気度がガチです。おそらくこのガラスは防弾なのでしょう・・・
窓口に立ち、通じるかな?と不安に思いつつ「Один жетон, пожалуйста(アジン ジトン パジャールスタ)」(ジトンを1枚下さい)と告げました。
ご婦人は眉一つ動かさず、コンコン、と窓口に貼られた紙を指先で示します。
そこには、いくつかの数字が書かれていました。
大半が読めない。しかしながら、一番下に書かれていた「Жетон 31p」だけは理解できました。これは、ジトンが31ルーブルであるという意味だろう!(ロシア語のアルファベットであるキリル文字では「P」を「アール」と読むので、ルーブルの頭文字は「P」になります)
51ルーブルを渡すと、ジトンとお釣りの20ルーブル硬貨が返ってきました。
買えた!買えたよー!
「Спасибо(スパシーバ)!」(ありがとう!)と言うと、ご婦人は少しだけ眉を動かして答えました。
ちゃんと通じたのが嬉しくて、ご婦人が投げつけるようにジトンを渡したことなど気になりませんでした。というか、窓口の構造上、勢いを付けて滑らせないと届かないから、いささか乱暴な感じになってしまうのも致し方ないのだと思います。
でも連れはものすごく嫌がっていて、最後まで慣れることができなかったです。最終的に、なるべく窓口で買う回数を減らすために、ジトンをまとめ買いするという策を取っていました。
連れに値段を教えて、自力で買うのにチャレンジしてもらいました。ロシア語は話せないにしても、なんとか英語で購入できていました。
今にして思えば、早い段階から少しでもロシア語での挨拶くらいは覚えてもらっておけばよかったですね・・・
当然ながら、カタコトでも自分の国の言葉を話す旅行者と、まったく話さない旅行者とでは、現地の人の対応が全然違ってきますもの。
連れがロシアに対して拒否反応を示す前に、Спасибоだけでも教えておけば、もうちょっと楽しめたんじゃないかなと反省しています。
改札を通り、ホームへと向かいます。
ロシアの地下鉄は深い、そしてエスカレーターは速い。体感で日本の2倍くらいですね。
ロシアの地下鉄のホームは、装飾が美しいことで有名です。各駅ごとにテーマがあり、モスクワでは地下鉄めぐりツアーがあるほどで「無料の美術館」とも言われています。
サンクトペテルブルグはそれに比べれば地味めですが、充分きれいでした。
車両の中は日本と変わらないです。ただし止まる時はけっこうな急停車で、「事故ったのか?」というくらいガコッ!ドコッ!と音がします。要は運転が荒い。
周囲は慣れたもので、ヨロヨロする我らを尻目に、どっしり構えています。
長いエスカレーターを昇り、改札を出て地上へ着きました。
目の前に広場があって、左手はモスクワ鉄道駅、正面にはお洒落デパートがあります。
このデパートには、プラダとか、グッチとかの高級ブランドがテナントに入っていました。日本でいうと高島屋みたいな感じ?
こちらを左手に見ながら、わりと大通りっぽいリゴーフスキー通りを南下します。
微妙にくすんだ色合いの建物と、キリル文字が溢れるロシア感満載の街並み。この時点では、英語表記の案内看板がまったくないことに気づいてはいませんでした。
事前に調べたホテルまでの地図はざっくりしたものでしたが、駅から徒歩5分だというし、地図も住所も書き取ってきたし、すぐに分かるだろうという考えが甘かった・・・
まず大前提として、地図が間違っていました。
もちろん、それらしき建物など見つかりません。
行き過ぎてしまったのに気づいて戻る時に、突然携帯で地図を見せながら男性が話しかけてきました。怒涛のようなロシア語で、何かを必死に質問しているようです。
私たちはバックパックを背負った東洋人の二人連れ、どう考えても旅行客だろう!?
なぜ周りにいくらでもいる地元民に聞かない?見る目がないにもほどがあるだろう!
静かに「Het」と答えた私に、彼は落胆したようすで去っていきます。
がんばれ!青年よ。私もがんばる。
リゴーフスキー通りを何往復もして、自力で見つけるのは無理だと悟ったため、道を尋ねることにしました。
最初に聞いたのは、デパートの警備員さんです。
「Excuse me?」と声をかけましたが、困惑した表情で首を振っています。
もしかして・・・英語が通じないのでは・・・
そこで、おそるおそるロシア語で「Извинйте(イズビニーチェ)」(すみません)と言いました。
すると「Да(ダー)?」(はい?)と聞く態勢になってくれました。
「Скажите, пожалуйста, Где это・・・(スカジーチェ パジャールスタ グジェ エータ)」(教えていただけますか、ここはどこ)と言って、地図上のホテルを指差しました。
「これがリゴーフスキー通り」と、かろうじて分かっている情報を伝えます。
警備員さんは、あっちだよ的に方向を示した後で、いろいろ説明してくれましたが、それが分からない・・・
とりあえず方向は正しかったらしい。それだけでたどり着けるはずもなく、次は薬局に入って道を聞きます。接客業だし、英語が通じるかもという希望を託しました。
しかしここでも、「Excuse me?」には渋い顔&首振り。
またロシア語で同じことを聞きましたが、住所は分からないのよね的な返事。
そこでホテルであると伝えるため、「Гостиница(ガスチーニッツァ)」と言ったら、パッと明るい表情になり、手招きして隣のビルへ連れて行ってくれました。
2階がホテルだというのです。
地図とはまったく場所が違うけど・・・と思いながらも、階段を上がってフロントへ行きました。
ここはEl Rooms Apartmentsですか?と予約したはずのホテル名で尋ねましたが、「Het」が返ってきました。一応、地図を指しながら場所を聞いたけど、「知らない」とのこと。さすがに英語は通じました・・・
重い足取りで階段を下りていると、背の高いお兄さんがホールにいました。めげずに再び道を聞きます。
実はさっきの薬局でのやり取りで、「住所」」が「Адрес(アドリェス)」だろうと掴んでいました。
今度は「Скажите, пожалуйста, Где это адрес?」(教えていただきたいのですが、この住所はどこですか?)と聞きます。
お兄さんは私たちを連れて外へ出て、連れてってくれるのかなーと思いきや、指で地図の形を作りながら一生懸命説明してくれます。
さすがにこの辺りで、地図に書かれている場所が、ホテルが実際にある場所とは違うらしいと理解しました。
なんとなく分かった気がする、とお兄さんにお礼を言って別れましたが、まだ見つけられません。
そこには「ホテルの看板などの分かりやすい目印が出ていない」という第2の罠が潜んでいたのでした。
ゆえに、どれだけそれらしい場所を探してみても、見つかるはずがないのです。
疲れ果てた私の脳裏を、ネットで見たロシアの都市伝説「宿泊料が安いホテルをネットで予約して現地に行ったら、そのホテルは存在せず、ただの民家があった」がグルグルと回り始めます。
最悪、見つからなかったらさっきのホテルに泊まろう・・・そう覚悟を決めつつ、ちょっとレトロな感じの映画館に入り、英語が通じるかもという期待をやっぱり裏切られながらも、マダムに道を尋ねました。
非常につっけんどんな態度でしたが、マダムは住所をご存知のようでした。
ここを出て奥だ、と言葉では分からねど、彼女の身振りで理解しました。
大通りから一歩入った奥の路地は、足を踏み入れるのを躊躇するような雰囲気です。
右手に見えるゲートは左右両方にあって、これが閉じられたら出入りができなくなります。
アスファルトは所々に穴が開いており、建物の壁も壊れて剥がれ落ちている箇所がいくつもあります。言葉を飾らずに表現すればスラムっぽい。
怖い、でも、行くしかない。
どこにもホテルの案内看板はなく、ホテルがありそうな雰囲気でもありません。
これで駄目だったら、さっきのところに行こうと、最後のつもりで車に荷物を積んでいるご夫婦に声をかけました。
さすがにご近所さんだったのか、「この住所ならこの建物よ」と奥さんが前まで連れて行ってくれます。
ひとん家感がハンパないんだが・・・
奥さんはメモ帳に書いた住所を指差して「ここ、ここ」と断言し、行ってしまいました。
とりあえず、ドアに近づきます。
どうやって開けるんだこれは。
手がかりがない。
多分この数字ボタンを押して、どうこうするんだよね?
ここまできたら、もうどうにでもなれ!という気分です。とにかくやたらに押しまくりました。
するとビーッという電子音がして、カギが開いた気配がします。この機を逃してなるものかと、ドアに手をかけると開くではありませんか。
中に入ると、可愛らしい女性が部屋のドアから半身を出して、こちらを訝しげに見ています。
すかさず「Извинйте, Скажите, пожалуйста, это адрес?」(すみません、お尋ねしたいのですが、ここの住所ですか?)とメモ帳を見せて聞きました。
女性は少し表情をやわらげて「Да」と答えました。よかった・・・ここで「Het」と言われたら、泣くとこだったよ。さらに気を緩めずに「Гостиница?」とたたみかけます。
女性はまた「Да」とうなずき、上を指差しました。
そこでやっと、ホテルの住所の中にあった「209」の意味が分かりました。この建物の209号室、つまり2階にあるってことだ。
心の底から「Спасибо!」とお礼を言って、階段を上がりました。
そして現れたのがこのドア。
ホテル・・・なのか?
ようやくたどり着けたと思って安心したのに、またもハンパないひとん家感。
ああ都市伝説が脳内をエンドレスローリング。
もうどうにでもなれ!(2回目)。間違ってたら謝りゃいいんだ!
右上のブザーを押しました。
反応なし。
中で音がした気配もありません。
もう一度押します。
やっぱり反応なし。
心がポキっといく音が聞こえそうです。
やったるわい!とばかりに渾身の力を込めて押し込んでやりました。
とうとうブーッという長い音が鳴り響きました。
ドアが開き、にこやかな男性が現れました。そのまま私たちを招き入れてくれます。
中は広くないものの、ホテルのロビー、みたい?
ひょっとしてビンゴ?
男性が口を開きます。「Are you Emiko?」
キタ―!!!!!!
「イエーーース!」
「Welcome!」
男性はホテルのオーナー、Dmitryさんでした。
「Finally I found it!」(ついに見つけたぜ!)
拳を突き上げて叫びソファに倒れ込む私を、Dmitryさんは微笑んで見ています。
ていうかホテルの看板くらい出しとけや!あとブザー接触悪すぎ!
冷静になって振り返ってみるとそう思うけれど、その時は無事に着いた喜びでいっぱいでした。
お部屋やバスルームの説明を受け、フリーで飲めるコーヒーを勧められ、サンクトペテルブルグの地図をいただき、Dmitryさんに直通でつながる携帯電話も貸してもらいました。
うん、ホスピタリティにあふれた人なんだよ。英語めっちゃ通じるから楽だし。ホテルは清潔で、内装も可愛い。
ピンクを基調にしたカラーリング&花柄の壁紙がガーリー。
ぬいぐるみやオブジェが置かれていたり、
カーテンもシーツもピンクですぜ。
だからもうちょっと地図を正確に、そしてホテルだと外からも分かるようにしてほしい・・・中は快適で素晴らしいんだから。しかもリーズナブルなんだから。
でもだんだん、このピントのはずれ方がロシアなのかもなーと愛おしくなってくるんですよね。
室内には、電子レンジ・冷蔵庫・電気ケトル・テレビを完備。浄水済みのウォーターボトルも置いてくれています。
紅茶のティーバックと小袋入りクリープも置いてありますが、どっちも箱に半分くらいしか入ってなくて使いまわし感が漂います。それはまあ、微笑ましいかな。
紅茶のメーカーが「Lipton」じゃなくて「Liston」なのも、脱力して笑えました。大胆なパクリなのか、それとも地元ブランドなのか。
駅からスムーズに着けば5分の道を、かれこれ1時間弱さまよった私たちは、ひとまずListonを飲んでひと息つくことにしました。
迷っている間、連れは役にこそ立ちませんでしたが、文句をいっさい言わないでくれたので、それだけでずいぶん気が楽でした。何か言われてたら、確実に戦いが勃発していたでしょう。
列車の時間が早かったから、ゆっくり休憩してもまだ13時前です。
そろそろお昼ご飯も食べたいし、軽くぶらつこうかと街へ出ました。
午前中程ではないものの、ロシアは手を緩めることなくジャブを繰り出してくるのでした。
考えてみれば、まだロシアに来て2時間くらいしか経ってない・・・
ヘルシンキ2日目 後編~動物園はどこかせつない
(前回のおさらい)
ヘルシンキには、古本の妖精(※おじさん)がいる。
そろそろお昼近くになることだし、動物園に行って中で何か食べようかなんて話しながら駅へ向かいます。
駅前には、毎年恒例のスケートリンクが作成されていました。
冬になるとヘルシンキ中央駅の広場に作られます。貸しスケート靴があれば、やってみたいなー。
ヘルシンキ動物園(Korkeasaari)への主なルートは2つ、フェリーまたはバスです。
フェリーは5月から9月まで運航しており、港のマーケット広場と、ハカニエミから乗ることができます。
しかし私たちが滞在していたのは12月。もう一つの方法、バスを利用しました。
ヘルシンキ中央駅の3番乗り場から出る16番バスに乗ると、20分くらいで到着します。
以下は16番バスの時刻表です。
HSL - Timetables - Helsinki 16
フィンランド語ですが、左側が駅からの時刻表で、右側が動物園からの時刻表です。上段が平日、下段が土日です。
動物園は終点にありますので、降り間違える心配はないと思います。
チケットは乗車時に運転手さんから買えます。行き先を「I would like to go to Helsinki zoo」と告げると料金を教えてくれます。だいたい5ユーロくらいだったような・・・。帰りは「I would like to go to Helsinki central station」と伝えれば大丈夫。
動物園は1年中開園していますが、クリスマスイブだけはお休みなので、ご注意を。
オープン時間は
1月~3月が10時から16時
4月が10時から18時
5月~8月が10時から20時
※ただし6月の夏至祭イブには、10時から17時に短縮されます。
9月が10時から18時
※今年は「Cats Night(猫たちの夕べ)」というイベントがあり、16時から24時までオープンしているようです。
10月~12月が10時から16時
※今年は10月4日に、10時から18時まで無料で入園できるイベントがあるようです。創立記念日的なもの?と推測しています。
最新情報は、公式サイトでご確認下さい。
チケット代は、年齢によって分かれています。成人は12ユーロ、4歳以下は無料、4歳から17歳は6ユーロ、学割&シニア割が適用される方は8ユーロです。
ヘルシンキカードを提示すると、成人は2ユーロ・子供は1ユーロを割り引きしてくれます。
ヘルシンキカードとは、ヘルシンキ市内の公共交通機関が乗り放題に、市内の美術館や博物館の入場料も無料になる、ツーリストには便利なカードです。その他にも一部のレストランで割引特典が利用できます。
24時間、48時間、72時間の3種類から選べます。それだけ特典があるからには値段もそれなりですが、長期間のカードほどお得になっています。特に、美術館・博物館を訪れるのが目的であればマストだと思います。
24時間は44ユーロ、48時間は54ユーロ、72時間は64ユーロです(すべて大人料金)。子供料金(7歳~16歳)は、この半額になります。
ツーリストインフォメーションで買うことができます。
インフォメーションの場所は、こちらからどうぞ。
Tourist Information | Visit Helsinki : ヘルシンキ市の公式観光情報サイト
こちらのサイトからは、事前にオンライン購入が可能です。(英語サイトです)
ポクポクとバスに揺られ、街を抜けて海辺に着きます。 潮の香りは、それほど強くありません。
チケット売り場のさわやかイケメンが、「そこにあるマップを持って行ってね」と勧めてくれました。
海に架かる長い橋を渡れば、木彫りの熊(本格派)が出迎えてくれます。
がおー、でかいぞー。
でも角度を変えると「シェー」みたいに見えるよ。
すぐ近くに存在感ありすぎのトカゲ?がいて、「どういうことかしら・・・」と戸惑わされます。
なぜ君はここに?
島が動物園になっていますから、自然な起伏があって、見て回るだけでけっこういい運動になります。
しばらく丘を進むと鳥ゾーンです。フクロウが冬毛ふわっふわで、とても可愛い。この辺りは興奮しすぎて写真を撮るのを忘れています。
それから、わりと無造作にごちゃっといるウサギゾーン。
少し坂を上るとガラスの大きな温室があり、中は熱帯の生き物ゾーンです。
自動ドアが開くと、もわっと湿気を含んだ暖かい空気と獣くさい匂いに包まれます。
おお、これこれ。動物園はこうじゃないと。
かなり高さのあるガラスの向こうで、猿たちが縦横無尽に飛び回っています。一定間隔を壁で仕切られていますが、上の方に穴があって、すべてつながっているみたい。
鳥たちのゲージは、つかまれるように網になっているので、そのぶん鳴き声がダイレクトに聞こえます。グギャーギョエーケッケッケッケッ・・・なんだかワクワクしてきます。南国の花みたいに鮮やかな羽根の色が、わさわさ生えた植物の間からのぞくのが美しく楽しい。
スロープを下りた半地下は爬虫類ゾーンです。
ピクリとも動かないワニ。至近距離で見つめあえます。
スロープの先にはまた別の部屋があり、どういう区分かは分かりませんが、もこっとした小さな生き物たちがいました。
「高原の哲学者」とも称される、思慮深げに空を見つめるナキウサギ。意味ありげなたたずまいは、名優モーガン=フリーマンに匹敵すると思われます。
この子がなんなのかは分からないけど、おしりが可愛いのでそれだけでオッケー。
やっとこっち見てくれた!
ハアハア・・・可愛すぎるだろ!
長時間の興奮状態が続いたため、かなりお腹が空いてしまいました。
ここらでお昼ご飯です。温室の近くにあるレストランに入りました。
休憩所を兼ねているようで、入ってすぐは机とイスが並んでいるだけの部屋です。奥に進んでいくとビュッフェ形式のレストランがあり、好きなものをピックアップしてレジに持っていくスタイルみたいです。
ビュッフェが狭いわりに、店自体は広かったので、もしかしたら夏季のオンシーズンには違った営業スタイルを取っているのかも。
なにかのキッシュ(※レシートを見たらトナカイの肉でした)、甘そうなパイ、オレンジジュースを選びました。連れは同じキッシュと、シナモンロールです。
キッシュを温めたかったので「Can I get it warm?」(温められる?)とレジのお姉さんに聞くと、ビュッフェを出たところに設置されている電子レンジを自由に使っていいとのことでした。専用のフタがあって、温める時は必ずかぶせなければいけないそうです。
キッシュがクリーミーで美味しかった!パイはいささか甘すぎでした。連れはキッシュが口に合わず残すというので、それもいただきました。
お腹を満たした後は、猛獣ゾーンへ。離れた場所からでもライオンの咆哮が聞こえます。
檻のメチャクチャ近くにいました!空気を切り裂くような吠え声が、鼓膜をビリビリ震わせます。人生でこんなにライオンに接近したのは初めてです。やっぱりかっこいいな・・・
ここでも目の前で見るのに夢中で、写真は忘れてます。
ぐでっと寝そべるトラの毛皮模様の優美さ・・・チーターの背中から脚へと続くアールの効いた曲線の洗練・・・ユキヒョウの氷河みたいに透明度の高い青い瞳とモフモフした太めのしっぽ・・・
触りたい!でも近寄ったら瞬殺だね!
ウロウロ歩き回るユキヒョウに、ムツゴロウ感満載の「かわいいねー、いい子だねー」と呼びかける私を、親子連れが生温かく見守っています。
ちょーかわいいよね!という想いを込めたギラッギラの目で見返すと、ママさんもお子さんも優しく微笑みと頷きを返してくれます。
ヤバい人と思われてないかしら、大丈夫かしら。
しかしそこで、連れがやらかしました。
写真を撮るために、歩き回るユキヒョウを呼び寄せようとガラスを叩いたのです。
・・・許すまじ。
それが彼らにとって幸福なのか不幸なのか確かめようがないけれど、ただでさえ人間の都合で狭い場所に閉じ込められて、不自由な暮らしを強いられているのです。その姿を見せてもらえるだけでありがたく、なるべく彼らの邪魔にならないよう、ひっそりのぞかせていただくのが筋だろう!
とは思っているものの、他人に考えを押しつけるのも良しとはしない。
厳しめの声で「そういうの、やめなよ」とだけ言いました。
連れは「あ、うん」とやめてくれました。
響いたんだか響いてないんだか分からない返事ですが、聞き入れてくれるだけでありがたいです。
同じように振る舞えなんて思わないし、思いたくないもの。
気持ちを切り替えるため、1人で歩き出しました。坂を下ってワシの獣舎へ向かいます。
また海が見えてきました。これで島を横断したことになります。
対岸にヘルシンキ大聖堂が小さく見えます。
ワシのいる檻はかなり広くて高く、小指くらいの大きさでしか姿を確認できないけど、君にとっては狭いだろうねと、やっぱり少し切なくなってしまう。
ここが島で、自然の雰囲気が感じられるから、檻で隔てられた彼らが余計に閉じ込められているように見えるのかもしれません。
ワシの隣はアイベックスです。浜崎あゆみやAAAのいるレーベルではありません。それはエイベックス・・・すみません、しんみりした気持ちを払しょくしようとしたくて無茶を言いました。
好きなんです、アイベックス。ヤギ属の小柄な体躯ながら、急峻な山腹をトントントーンと駆け上がっていくのがかっこよくて!
あまり日本の動物園では見ないので、本物を見れて嬉しいです。
崖上のはるかてっぺんにいらっしゃるのを、「おお・・・」と見上げていたら、気付かれたようです。
近くまで下りてきて、ガッツリ目が合いました。
この後でもそうなんですが、彼らは好奇心旺盛なのか、近くまで寄ってこちらを見に来ます。
東洋人が珍しいのかな?ちょっと違う臭いがするんだろうし、興味があるのかもしれません。
トナカイもまた物見高い。
檻をはむはむしながら、ガンを飛ばしてきます。
さっき君たちの仲間を食べたんだよ、美味しかった。ありがとう、ごめんね、ありがとう、というまだら模様の気持ちで見つめても、特に伝わらないし、どうでもいいんだろうな。
そしてクマにも気づかれるが、
既読スルー。
ムースも振り返る。
バイソンもガン見。
近づいてもしっかり目線をくれます。意外と瞳がつぶらでキュート。
この時は「バイソン先輩かっこいいっす!バイソン先輩素敵っす!」と歓声を上げながら写真を撮っていました。なんで先輩・・・? 今となってはさっぱりわかりません。
フタコブラクダもチラ見。
そうこうしているうちに日が暮れてきました。まだ15時半くらいなんですけどね。
「きれいだね」
「うん、今度は彼女と見たいなー」
「ちっ、リア充め!」
そうです、連れは今回の旅の直前に彼女ができていたのです。
彼女とは私も知り合いで、旅行について了承は得ています。昼ドラ的ドロドロ展開は起きませんのでご安心下さい。本当は彼女も一緒に来たかったらしいのですが、都合がつかず断念しました。3人も楽しそうでよかったかも。
ぐるりと周って、またレストランに戻ってきました。
日が落ちてくると、じゃっかん禍々しい。私たちがヘンゼルとグレーテルだったら、絶対ここには入らない。
閉園時間がせまっていたので、サカサカ入口を目指します。もうすっかり人気がなく、中にいることを気づかれずに出られなくなったら間違いなく凍死だね、そうしたら温室に避難しようね、と策を練りつつ速足です。
再びの熊。
橋の上がものすごく風が強くて、手を広げて力を抜くと勝手に前進していくのが面白かったです。
急いで外に出て、バスの時間までショップでお買い物。エコバックと、ライオンとラクダのピンバッジを購入しました。レジのお姉さんが可愛くて感じよかった。
バス停にはちびっ子&ママさんがいて、ちびっ子はこちらに興味津々のようす。「ハーイ」とか手を振っていたら、連れが彼らの写真を撮りました。
「えっ」と驚いた私と、ママさんの目が合います。
・・・うーん、無断で撮るのはやめようか。カメラ見せながら「OK?」くらい言えるだろうに。許可を取るべきだっていう発想がないんだろうなー。人によってはガチ切れされるよ?
その場で指摘するのはやめました。君はもう、いつか痛い目を見てくれ。
写真を撮るのが好きな人って、撮りたい気持ちが先行して被写体の都合や気持ちを置き去りにしてしまうことがあるからな・・・自戒も込めて気をつけましょう。
街へ戻って来てもまだ17時くらいです。ホステルに帰るには早いし、軽くぶらぶらします。
連れはお土産を見たいとのこと。引きこもり在宅ワーカーの私と違い、各方面に頼まれているらしい。リア充もたいへんですな。
フィンランドのリビングウェアブランド「イッタラ」で、フクロウを買ってくれと頼まれたというので、エスプラナーディ通りのイッタラショップへ。
どんな商品なのかを把握していない我々は、ショップ内をさまよいます。
するとシャレオツなスキンヘッドのガイに「Can I help you?」と声をかけられました。
フクロウを探してるの、と答えると、Owlならこっちだよとガラス製のフクロウを見せてくれました。
一つひとつ職人の手作りで同じものはないのよ、ほら見て、と説明してくれます。
話し方といい、しぐさといい、脳内オネエメーターの針が振り切れそうです。
どうもありがとう、でも私たちが探しているのはこれではないんだ、と伝えると残念そう。今日は下見だけだったため、サンキューと言って店を出ました。
定番のマリメッコをのぞいてから、一度ゆっくり見たかったアカデミア書店に入りました。
世界のどこでも、本屋さんの空気感は似たものがあるなー。1階は雑誌と新刊、2階には専門書売り場とカフェ・アアルトがあります。
フィンランドが生んだ20世紀を代表する建築家、アルヴァ・アアルトがデザインしたアカデミア書店は、入り口ドアの波型ハンドルデザインからも、アアルトの思想が伝わってきてうっとり。回廊式の3層吹き抜け構造は、すこんと抜けた開放感が心地よいです。
記念に、ペンギンブックスのエコバッグと、オスカー・ワイルド「ドリアン・グレイの肖像」を買いました。装丁がポップで可愛くてひと目惚れしたのです!
(※この本、現在入手できるものは装丁が変わってしまっているみたいです・・・私が持っているのはグレー地にピンクでペンギンの絵が描かれているもので、ペンギンブックスという出版社のフェア用に作られていたものだったようです)
雑誌をチェックしているうちに、小腹がすいてきました。2階のカフェ・アアルトでお茶をしばきます。
ここは映画「かもめ食堂」で、サチエさんとミドリさんが出会って、ガッチャマンを歌うシーンで有名ですね。何度も見てるけど、こんなふうだったかしら。
映画ではもっと広い印象がありましたが、わりとこじんまり。地元っぽいお客さんばかりです。
ストロベリータルトとカプチーノを頼みました。普段はコーヒーを飲まないから、ラテアートの実物を初めて見ました。ささやかなディテールって、心をはずませるものですね。
どっちも美味しくて、しばしまったりくつろぎました。
明日からのロシア旅行への意気込みなどを語り合います。サンクトペテルブルグ行きの列車が6時12分発しか取れず、5時半にはチェックアウトしておきたい。なかなかに辛いスケジュール。到着は10時48分。時差が1時間あるので、乗車時間は3時間半くらいです。
今夜は早めに閉店ガラガラしないと、明日にひびきます。
書店を出て、朝食を買うべくスーパーへ。帰り道にある24時間オープンのSIWAに寄りました。
エスプラナーディ通りの端っこにあります。港とは反対側の、マンネルヘイム通りと交差する辺りです。Sマートよりちょっとオシャレな、ナチュラルフード系が多い品ぞろえでした。
ホステルに戻ってからは、一日中歩き回った疲労もあって、のび太ばりの3秒で就寝。翌日は4時にスッキリ起床です。ライ麦パンのサンドイッチを食べながら、本棚にたまたま置かれていた「旅の指さし会話帳 ロシア」をめくります。
ロシア語に不安があるし・・・またここに戻ってくるし・・・という理屈を付けて、無理を通してお借りしました。ちゃんと後日返却しました!でもすみません!バチが当たったのか、現地ではまったく使いませんでした。悪銭身につかずとはこのことか。
次回からは馴染みのあるヘルシンキを離れ、未体験の地ロシアです。
勉強してきたロシア語はどこまで通用するのか?
治安はどうなのか?
まずはホテルまでたどり着けるかしら?
不確定要素だらけの新たな局面へ、おそるおそる足を踏み入れます。
ヘルシンキ2日目 前編~今日もおじさんに声をかけられたのは運命か何かかもしれない
北欧の冬の夜明けは遅い。しかし我々の朝は早い。
前日、22時くらいには寝てしまったので、6時には目が覚めていました。
キッチン兼共有スペースに行くと、暗い顔をした長髪のヒッピーぽい旅人が、ソファで膝を抱えています。
なんとなく目で挨拶しましたが、スルーされました。
こういう人はどこにでもいる。外人だからって、みんながみんな陽気なわけではないのだ・・・そっとしておきましょう。
ぼんやり朝ごはんを食べていたら、連れが現れました。よく寝れなかったんだろうな、という顔をしています。
もともと不眠症気味で、眠りが浅いのは聞いていたので、それが原因で体調を崩すのではと心配していました。
眠れた?と聞けば、そこそこという返事。うーむ。
のんびりご飯を食べて、お茶を飲んでいるうちに小一時間経っていました。
急ぐ旅でもないが、予定を決めたことだし動き出そうかと、準備を整えて街へ出ます。
まずは朝から開いているというマーケット広場へ。
一応、観光名所であるエスプラナーディ公園を通っていきます。
夕方のようですが朝8時くらいです。
12月なので、こんなディスプレイも。
マーケット広場は港沿いに広がっていて、夏はもっとにぎわっているんだろうなーという感じです。
毛糸の帽子を売っている女性と少し話をしました。すべて手編みとのこと。すごく熱心に説明してくれましたが、残念ながら買いたい気持ちにはならず、お礼だけ言って立ち去りました。
ほぼ観光客、まれに地元の方という雰囲気。そして日本人女性が多いです。女同士二人組か、一人旅が大半なのが特徴です。私たちのような男女2人組(カップルではない)は珍しいのかも。
日本以外のアジアからは団体さんが多数派で、欧米は家族連れ又はカップルが多いです。
オフシーズンだからか、それほど混みあってもおらず、太陽も昇っていないので薄曇りの空の下、フィンランドの首都のはずなのにどこかひなびた港の風景は、どことなく日本海。おしゃれだが日本海。
頭の中で鳥羽一郎の「兄弟船」が鳴り続けています。
なみの~たに~まに~いのちの~はな~が~
JASRACが怖いのでこのくらいにしておきますが、とにかくエンドレスで音楽がループする現象、イヤーワーム(earworm=耳の虫)に、遠い異国でもさいなまれています。
人間、海外に行ったくらいでは性質は変わらないのです。
「兄弟船」を口ずさむ私に、連れは奇異な目を向けてきます。
それには構わず、すぐ傍にあるオールドマーケットホールへ。
なにげに入口が自動ドアで驚きます。
しかしまだ時間が早いため、どこも準備中で閑散としています・・・ですよねー。
ぐるりと一周しただけで、また開いてる時に来ようねと観光に戻ります。
なみの~たに~まに~・・・
港から見ると、ちょこんと頭がのぞいているヘルシンキ大聖堂へ向かいます。
ばばーん。
白い!きれい!月並みな感想!
来るのは二度目ですが、前回は礼拝中で入れなかったので、今回見学できたのはラッキーでした。
とはいえ社会見学かなにかでしょうか、学生さんたちが礼拝堂の前方に集まって話を聞いています。
お邪魔にならないように少しばかり覗かせてもらってから、サクッと外へ出ます。
大聖堂の前にある元老院広場では、クリスマスマーケットのブースが並んでいます。ここもまた、開いてる時なら楽しいんでしょうなー。
大聖堂を背にして写真を撮っていると、あるものに気がつきました。
建物の向こうにチラ見えするシリアラインです。
ツーリスト| タリンクシリヤラインでの バルト海クルーズへようこそ | - Tallink & Silja Line
いつか乗ってみたいと思っていましたが、その姿を間近で見られるなんて!すぐさま港へ戻ります。
おお!
青と白のカラーリングがさわやかだわー、マスコットのアザラシさんの笑顔もまぶしいぜ。
丘に登って上からも撮るのさ!
いやはやテンションMAXでしたわ。いつか・・・いつかきっと!
興奮冷めやらぬまま丘を下っていくと、ものすごく気になる店がありました。というか気になる存在が。
ステーキハウスの看板牛・・・?
親近感の持てるお腹のライン。
けっして目は笑っていない。恨み~ま~す~(by 中島みゆき)
『うらみ・ます』収録『生きていてもいいですか』(アルバムタイトルもすごい)、中島みゆきさんの初期を代表する名盤だと個人的には思います。
看板牛を激写していたら、通行人に笑われました。
そんなウキウキウォッチングのさなか、小さな本屋を見つけました。
ガラス張りのウィンドウからは、色鮮やかな書籍がディスプレイされた店内をうかがうことができます。店の前にはワゴンが置かれていて、「1€」と書かれたポップがぶらさげられています。
素敵やん、などと手に取ってパラパラめくっていたら、目の前を通り過ぎた自転車がキキッと止まりました。
「ここはいい本屋だぞ!」
おじさん登場です。
「ワンユーロ!ワンユーロ!」
ワゴンをグルグル指さしながら、必死に訴えてきます。
このワゴンの中の本は全部1ユーロだよって教えてくれてるんだね?知ってるよ!
でもなぜ私にピンポイントで・・・
「ワンユーロ!オール!」
すげーいってくんじゃん。目力もパねえ。ともあれ、彼の心意気は受け取らねば。
おもむろに、人差し指を立てる私。
「ykusi euro(ユクシ エウロ)?」(フィンランド語で「1ユーロ?」と聞いています)
はっとするおじさん。重々しく「yksi euro」と頷きます。
私もまた、ワゴンの上に手を広げて「yksi euro」と頷きを返します。
最小限の言葉で最大限のコミュニケーションだ・・・
満足げな表情を浮かべたおじさんは、もう一度「ここはいい本屋だ!」と言い残し、自転車をキコキコいわせながら去っていきました。
古本の妖精さん?
なんだろう、この1日1おじさんのペースは。
連れはやっぱり空気になり、私&おじさんの2ショットを撮りまくっていたのでした。
まだまだ先が長いので、いったんここで分けますね。
次回はヘルシンキ動物園編です。
ヘルシンキ1日目~ご機嫌なおじさんと盛り上がる
(前回のあらすじ)
セントレアと成田から出発し、それぞれフィンランドを目指した我々は、無事にヘルシンキ・ヴァンダー空港での現地集合を果たしたのであった・・・
空港からホテルへ向かうべく、ヘルシンキ中央駅行きのフィンエアーシティバスに乗り込みます。
バス乗り場は、入国ゲートを出てすぐ右手にある自動ドアを出ると、左方向にあります。車体にフィンエアーのマークが描かれているので、見つけやすいです。
時刻は17時を過ぎていますから、空は真っ暗です。道路の端には除雪された塊が積み重なっています。
「暗くなるの早いね」
「緯度が高いからねー、ヘルシンキだと12月の日照時間は6時間くらいだよ」
車窓を過ぎていく風景が、しだいに見覚えのあるものになっていきます。
ヘルシンキ中央駅は、駅舎の上部に丸い照明を持った4人のマッチョガイをあしらった、コンセプトが謎のデザイン。彼らはフィンランドの国鉄VRのイメージキャラクターになっています。
バスを降りると、刺すような冷たさに包まれます。
「さっむ!」
慌ててダウンコートの下にフリースを着込む私の横で、連れが夢中で写真を撮っています。
とりあえずチェックインして荷物を置いてから町をうろつこうと、うっすらした記憶を頼りに、ホステル・エロッタヤンプイストへ向かいます。
マンネルヘイム通りを南下して、undenmankatuという路地を右折してしばらく進むと右手にホステルがあります。
途中で、おじさんに声をかけられました。
「Hei!」
ほろ酔いかげんで、ニコニコご陽気なようす。連れはスルーしようとしましたが、話しかけてみたいだけの人かなと思い、「Hei」と返事をしました。
「Hei」はフィンランド語の「やあ」って感じで、英語では「Hello」的な挨拶です。
それで終わりかと思いきや、英語で「どこから来たの?」と続けます。
「日本からだよ」と答えたら、「Welcome to Finland!」と歓迎ムード。うん、ただの楽しい酔っぱらいだね。
「日本のどこから?」「フィンランドではどこへ行くの?」「何日くらいいるの?」と次々と質問されたり、「ラップランドには行くべきだ」と勧められたり、けっこうおしゃべりしました。
おじさんは、ラップランドについて少し説明した後、フィンランドの文化を見たかったら、ヘルシンキだけ観光しても分からないよという意味で「Helsinki is not Finland」と言いました。
私がふむふむと頷いていると、さらに「Tokyo is not Japan」とたたみかけます。
これはリアクションがいるなと思ったので「What you mean, NewYork is not America. Right?」(つまり、ニューヨークもアメリカそのものじゃないってことね?)と言ってみます。
「Yeah, that's right!」意図が伝わって、おじさん嬉しそう。テンションアゲアゲです。
「それじゃあ、旅を楽しんでね!」と、ご機嫌で去って行きます。
この間、連れはずっと空気と化していました。
道々、さっきは何を話していたのか解説していたら、あっという間にホステルに着きました。
ドアの横にボタンがあり、押すとフロントに繋がってドアロックを解除してくれます。解除している間はブザーが鳴っていますので、さっさと中に入ります。
ホステルは建物の3階にあって、エレベーターは設置されていないため、えっちらおっちら上ります。
ヨーロッパのこじんまりしたホテルにはエレベーターがないことが多く、スーツケースを抱えて上るには、かなり苦労します。前回たいへんな思いをしたので、今回は反省をいかしてバックパックを選びました。
それに、石畳が敷かれていることの多いヨーロッパの道では、スーツケースだとガコガコうるさいし、段差に引っかかってへこんだり傷が付いたりしがちです。平地で重たい荷物を運ぶにはスーツケースの方が楽なんですけどね。
チェックインをして、私は女性専用ガールズルーム、連れは男女混合ミックスルームへ向かいます。
一緒の部屋に泊まらないのを連れは寂しがっていましたが、私としては着替えもするし空きがあるなら女子部屋に泊まりたい。
連れも男性専用ボーイズルームに放り込んでやろうかと思ったけど、少々治安の悪い時もあるという情報を耳にしたため、慣れない連れには辛かろうと仏心でミックスルームにしたのです。むしろ感謝してほしい。
そしてこの、寝る時は別の部屋というのが後に功を奏しました。
友達同士でもカップルでもそうですが、それまで仲が良かったのに旅行中にケンカして楽しいはずの旅が台無し、その後音信不通に・・・というのはよく聞く話です。
スケジュール半ばのロシア3泊で、同じツインの部屋に泊まったものの、だれてくる後半にまた別々の部屋にしたからこそ、ケンカを避けられたのだと思います。
人間ですから、1週間24時間べったり一緒に居たら、ぶつかる時もありますよ。
部屋には荷物を置いただけで、すぐロビーに集合して街へ出かけました。
これはホテル近くのundenmankatuに入っていく曲がり角あたりです。実際より明るめに写ってますね。
Forum(フォーラム)というショッピングセンターをのぞいて、いろんなお店が立ち並ぶマンネルヘイム通りをぶらつきます。
どこかで食事をしようかという案も出ましたが、とりあえず明日の朝食を買うためにもスーパーに行ってみようという流れに。遅くまで開いているのを知っていた、駅前のデパートソコスにあるSマートへ行きました。
初めて入る外国のスーパーに、興奮を隠せないようすの連れ。価格は全体的に東京と変わらない感じです。
お水はガス入りの方が豊富で、ガス抜きのミネラルウォーターは気をつけて探さないといけません。
メインのパンは、陳列されたガラスケースから取り出して自分で袋に入れて秤に乗せ、パンの種類ごとに書かれている番号を押すと、バーコードが出てきます。それをレジで通してもらえばOKです。
いろんなお惣菜を選んでボックスに入れて、重さで値段が決まるセットでサラダやオリーブを買いました。
あと袋は有料なので、エコバッグ持参がおススメです。もちろん旅の記念に現地でエコバッグを買うのもよし。
買い物を済ませてホステルに戻る頃には、20時になっていました。
長時間移動して疲れたし、なにより時差でとても眠い。明日の予定を打ち合わせて、さっさと寝ることにしました。
午前中は港のマーケット広場と近場にある観光スポットを散策して、午後からは私のたっての希望によりヘルシンキ動物園に行きます!ここはコルケアサーリ島という島全体を動物園にしており、どうしても行ってみたかったんです。
下記、公式サイトです。言語はフィンランド語・スウェーデン語・英語・ロシア語を選択できます。
この日の夜に、変圧器が使えない事件が起きたりしていたのですが、それを置いておけば平穏に過ごし、翌日に向けて英気を養うべく早々と床に就くのでした。
次回はベタなヘルシンキ観光&動物園を紹介します。
待ち合わせは現地集合~ヘルシンキ空港で僕と握手!
旅行中に撮った写真をいっぱい載せるぞーと意気込んでいたら、はてなブログの運営から「はてなフォトライフの今月の利用容量が上限に達したよ」というお知らせが届きました。
オーマイ・・・とりあえずAmazonの埋め込みリンクを止めてみましたが、どうなることか。
よい方法をご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示下さい。
さて、2015年12月13日。
11時55分セントレア発ヘルシンキ行きの飛行機に乗るために、早起きして久しぶりに電車に揺られていたところ、フィンエアーから「飛行機が2時間遅れてるよ」というメールが届きました。
さっそく連れに連絡です。
ここで思い出していただきたい。
私は愛知県在住、連れは東京都在住です。それぞれ最寄りの空港はセントレアと、成田または羽田。
そして今、私が向かっているのはセントレア。
そこで連れが待っているのか?わざわざ名古屋まで来てくれたのか?
いいえ、違います。
連れは成田からヘルシンキへ向かい、私はセントレアからヘルシンキへ向かう。合流するのはヘルシンキ・ヴァンダー空港。
そう、エクストリーム現地集合です!
ここに落ち着くまで、少々揉めました。
Q.成田発セントレア着またはセントレア発成田着の飛行機にして、各々の交通費負担のバランスを取りつつ、同じ飛行機に乗れるようにするのはどうか?
A.旅費が乏しいので、発着地を同じにして、リーズナブルなリターンチケットを利用したい。申し訳ないが、協力してほしい。
Q.ヘルシンキ空港で待ち合わせなんて、初めて行く場所だし、もし会えなかったら?
A.私は前に行ったことがあるから構造を知ってるよ。それほど大きくない空港だし、分かりやすい待ち合わせ場所を指定するから。すれ違ってしまっても、空港内はフリーWifiが使えるので大丈夫。
Q.飛行機に乗るのも初めてだから、なんだか不安。
A.行く時は日本発だから、分からないことがあったら空港スタッフに聞けば教えてくれるよ。ラッキーなことに帰りの便は途中まで一緒(セントレアまでは同じ便で、連れはそこで乗り換えて成田へ)だし、外国でのチェックイン手続き等は任せたまえ。
Q.入国審査で質問されたら、どう答えればいいの?そもそも英語が分からないし。
A.旅行の目的と、滞在日数くらいしか聞かれないよ。「サイトシーング」と「セブンデイズ」を覚えておけばいいと思う。日本人はあまり厳しく調べられないし、どうにもコミュニケーションが取れないと呆れて通してくれるよ。
Q.長時間、飛行機に一人で乗るの寂しいよ・・・
A.それぐらい自分でなんとかしろ。
まとめると以上のようなやり取りの末、しぶしぶ納得してもらったのです。
ただでさえ心細い思いをしている連れに、取り急ぎ飛行機の遅延を伝えなければいけません。
本来であれば、私の便は11時55分発の15時10分着、連れの便は11時30分発の15時着の予定でした。
あまり時間のずれもなく待ち合わせできるはずが、2時間遅れとなると、かなり待たせてしまうことになります。
どうやら、連れの方は定刻通りに出発するらしい。
「じゃあ、空港を探検して時間をつぶしてるね」
という意外にあっさりした返事にほっとして、こちらもセントレアで暇をつぶすことにします。
デッキに出て飛行機の発着を見たり、新しく開店したショップをチェックしたり、空港内の両替所を回ってレートを比べてみたり。(何銭かの違いですが、出国ゲートのチェックインカウンター近くにある両替所のレートが一番良かったです。※自分調べ)
でも時間余るわー。
暇を持て余して、ご飯を食べてしまったのは失敗でしたね。搭乗して1時間くらいで一回目の機内食が出ましたから。お腹いっぱいだったけど残さず食べました。意地汚いので。
どうにか2時間を過ごして、ようやく出発です。
席はトイレに近い壁際の通路側。フィンエアーは事前に席を指定できるので、席を倒す時に気を使わないでよく、なおかつトイレに行きやすい場所を選択しました。
隣にはどんな人が来るのかしら・・・ものすごい巨漢とか、セクハラ野郎でなければいいけど、とソワソワしていると、現れたのは外国人のお兄さん。ひょろりと背が高く、かなり若そう、学生さんかしら?
はにかみつつ、「OK?」と聞いてきます。
「Yes, please」微笑みを返します。
腰を下ろしても、感じよく笑顔でお礼を言うものの、こちらに積極的に話しかけてくる様子はありません。
アメリカ人ではないな・・・という偏見に満ちた予想を立てました。
しかしこの青年、めちゃくちゃコーラを飲みます。というかコーラ以外の水分を取ろうとしない。機内食にはお水が付いてくるのですが、手を付けません。
そしてフライトアテンダントさんが通るたびに「Coke, please」
おいおい青年よ、ちょっと飲み過ぎじゃないかい?君のことはミスター・コーラと呼ばせてもらうよ。
「ヘイユー、『わたしの血はコーラでできてるの』なんて言い出すんじゃないだろうね?HAHAHA!」
と小粋なジョークもかましたくなります。
(ああ誰かに言いたい。今この瞬間に産声をあげて、人知れず消えていくジョークが浮かばれない。とはいえミスター・コーラに話したところで受けはしないだろう。まず川島直美の説明からしなければならないからだ。)
モヤっとした気持ちを抱えたまま、「あなたは本当にコーラが好きなのね」という優しい笑みを浮かべる私。えへへ、そうなんだ!的に再びはにかむミスター・コーラ。
うん、やっぱり君はアメリカ人ではないね。※ノルウェー人でした。
こうして伝えられて満足です。成仏しました。
シートベルト着用サインが消えた後、ミスター・コーラがタブレットを取り出します。デカいヘッドホンを付けて、動画を見ながら音楽を聞き始めました。
チラ見からの、二度見をしました。
ミスター・コーラよ、液晶ひび割れすぎじゃない?
「蜘蛛の巣状」とはまさにこのこと。
しかもこれほど繊細な蜘蛛の巣は、根気と熟練の技を持つ職人の仕事であろうという、芸術的ですらある出来ばえです。
ていうか見えてるの?見にくくないの?ミスター・コーラ(気に入ってる)。
やきもきしながら見守っていると、ACケーブルを取り出してキョロキョロし始めました。
充電がしたいのだね?
ミスター・コーラはこちらを見て、「充電したいから、コンセント使ってもいい?」と尋ねてきます。
先だって、フライトアテンダントに告げられた「コンセントは一つしかないから、共有して使って下さいね」というお願いを踏まえているのでしょう。
好青年です。
こころよく「Of course, please use it」と答えます。
彼もニコニコして「Thank you」と言い、席の間にあるコンセントに手を伸ばします。
ごそごそごそ。
おお、このフレンドリーな空間よ。
ごそごそごそ。
ずいぶん下にあるようで、一生懸命手を伸ばしています。
ごそごそごそ。
手を伸ばしています、手を伸ばしています、手を伸ばして・・・
遅くねーか!?
ミスター・コーラも焦っているのでしょう。耳が真っ赤です。
こういう時は、焦れば焦るほど上手くいかないものなのです。
あら、あきらめた。
見かねて声をかけました。「Can I try it?」(ちょっと貸してみな?)
おそらく彼は隣に座るレディに遠慮して、ガツンと奥まで手を突っ込めなかったのであろう。オラオラ感満載のガサツな手つきでプラグをつかみ、コンセントを探り当てる私。
「I did it」(やったわよ)
「Oh!」喜びに目を輝かせるミスター・コーラ。
頷いてサムズアップ。
おお、この一体感よ。
ただACプラグをコンセントに差し込んだだけなのに、偉業を成し遂げたような気分です。
それからは、ぼつぼつと会話するようになりました。
日本に友達がいて、何度も来ていること。
学生ではなく、すでに働いていて、今回は3週間の休暇を取って日本に滞在していたこと。さすが北欧。
18歳という若さには「ベりーやんぐ・・・」と驚かされました。
日本ではどこへ行ったの?ノルウェーのこと教えて?など、けっして口数が多くはないミスター・コーラから様々な話を聞き出し、彼からは、私が復習していたロシア語について聞かれたりして、楽しい時間を過ごしました。
けっきょく、「あんた、どんだけコーラ好きなんだよ!糖尿には気をつけろ!」とは言えずじまい。
機内食を食べたミスター・コーラは眠ってしまい、話し相手がいなくなったので映画を見ました。
「寄生獣 完結編」です。
寝落ちしました。私は山崎貴監督と相性が悪いみたいです・・・
原作コミック「寄生獣」の大ファンだから、物足りなく感じてしまうのかもしれません。前編と後編で4時間分あるとはいえ、だいぶカットせざるを得ないですものね。
ピックアップするセンスが監督と合わないんでしょう。
コミックは名作です。ぜひ読んでみて下さい。
機内食はビーフORフィッシュでした。チキンではなく。
ビーフを選んだらハンバーグでした。お蕎麦と抹茶プリンも付いて、ほんのり和風。
美味しかったです。
もう1回、機内食が出たのですが、その時はお腹が空いていたので写真を撮るのも忘れてむさぼり食いました。食べ終わってから「あっ」と思う失敗を、旅行中何度も繰り返すのでした。
ヘルシンキに到着すると、飛行機が2時間遅れたせいでノルウェーへの乗り継ぎ便がギリギリになってしまったミスター・コーラは、駆け足で去って行きます。
さわやかな笑顔で手を振ってくれました。
それはいいから、急ぎなさいな。
入国審査は前回来た時よりも厳しくなっていました。近年の世界情勢を反映してのことですね。
「どこの国へ行く予定なのか?」「何日間滞在するのか?」「ロシアへの移動手段は?」と、次々と聞かれます。
この前は、質問なしでパスポートにスタンプを押すだけだったのに。これでもまだ緩い方なんでしょうね・・・
入国ゲートを通ってロビーに出ると、新しくきれいになっていました。
空港の拡張工事をしたことは知っていましたが、かなり様変わりしています。
着いたよーとLINEを送り、ゲートを出てすぐの左の場所にあるキオスクの前で待つことしばし。バックパックを背負った連れが現れました。
思えば2月に会ったきりで、顔を合わせるのは10ヶ月ぶりです。無事に現地集合できた安心感もあり、がっつりハグを交わしました。
「やっと会えたね」という言葉を飲みこんだ自分を褒めてあげたい。
空港からヘルシンキ市内へは、フィンエアーシティバスで向かいます。
だいたい20分間隔で運行していて、空港からヘルシンキ中央駅まで30分くらいです。
運行スケジュール、バス停の場所、料金はこちらのページに詳しく書かれています。(英語サイトです)
http://www.finnair.com/go/2016.4-47/documents/PDFs/FINNAIRAIKATAULU_1115_WEB.pdf
他にも列車とか市バスとか、交通手段の選択肢はありますので、旅のスタイルに合わせてご利用下さい。
こちらをご参照下さい。(英語サイトです)
Train, buses and taxis / Finavia
大きなスーツケースを持っている場合には、荷物置き場のあるフィンエアーシティバスが便利かもしれません。
とうとう次回から、本格的な旅が始まります。